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そこに大義はあるか



 大瀬良拓未はその後レジェンドの一員となる。


 鳳凰院詩織が現役を引退して、レジェンド自体も最強の一角から落ちていた頃の話だ。


 ちなみにその後も鳳凰院詩織は幾つかの伝説を創っている。有名なのは“神非行鬼かみひこうき”という伝説の一夜限りのチームだ。その神とも崇められる伝説の七人。そのうちのひとりが詩織だから。


 拓未がこの世界に足を踏み入れた理由は、レジェンドを再び最高の地位に押し戻したいという野望からだ。


 しかし悲しいことに、あの頃とは人が違う、時代が違う、人の生き様も違う。



「拓未、今夜の戦争は大丈夫なんだろうな?」

 前方で先輩が振り返りもせず言った。


「当然でしょ、俺の方は準備は万端ですよ」

 それに敢然と答える拓未。

 彼らか着込むのはレジェンドの赤い特攻服。先輩共々バイクに跨がっている。


 週末を迎えた国道線。真夜中のそこは多くの車両でひしめいている。

 続く赤いテールランプの帯。

 妙に幻想的だが、これから起こる出来事を思うと、血の池地獄のようで、どこかおぞましく感じてしまう。



「お前そんなこと言って、この前の戦争に来なかったから、こっちは散々だったんだからな」

 苦笑するように響き渡る先輩の声。


「うっす。あん時は志士の会に専念してて、動きだすのに時間がかかった」

 同じく苦笑する拓未。

 

 校内での戦争、激化しているのは拓未の承知の上だ。


 しかし同時にここ最近、ロードでの抗争も激化の一途を辿っていた。



 市内最強チームは横浜オルフェーヴル。それに次ぐ地位にあるのがレジェンド、摩利支天といった中堅チーム。

 更には様々なチームが入り乱れての戦国模様。


 県内に目を向ければ湘南シングスピール、湘南デュランダル、横須賀アストロボーイと敵だらけ。

 しかも最近ではキティホークという新生チームも現れている。


 そんな状況で、志士の会との二足のわらじは正直キツイものもあった。


 もちろん大義があれば、それを乗り越えるのも男としての生き方だろう。


 ……だが現状。



 ひとつにまとまりを見せる志士の会だが、現状バラバラな状態にあるのは明白だ。


 正義感に溢れる大野朝陽、ちゃらけてるが大義を重んじる玉木仁。この2人は、確かに大義を内に秘めている。


 しかし問題は湯田、古谷、鳳仙の存在だ。この3人、どうにもやる気が感じ取れない。



 湯田は志士の会の発足人。故に喉から手が出るほどオーク学園の覇権は欲しい筈だ。それだけの欲望にまみれて野望を内に秘める人物だから。


 だがどこか別な方向を向いているのもしかり。よこしまというより、人を利用すると言った小狡い局面ばかりが見えてしまう。


 少なくとも、そんな奴らの為に命を張るのだけは勘弁だ。


 そんなバラバラな存在に、果たして明日はあるのだろうか。


 明日とは大勢の仲間が集い、自ら打開してこそ拓けるもの。それでなければ希望に満ちた明日など切り拓けるはずはないから


 力関係ばかりを気にして、子猫をいたぶる連中など、反吐が出るほど嫌いだから。


 正義を重んじて仲間をおもんぱかる赤ずきんこそが、彼の理想のヒーロー像だから。

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