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中坊なりの覚悟

「フシャー」

 不意になにかの鳴き声が聞こえた気がした。ちらりと視線をくれる。


 よく見れば、暴走族たちはうんこ座りしながらなにかをもてあそんでいた。


 玉砂利の敷かれたそこには、一匹の小動物の姿。白地にトラ模様の子猫のようだ。


 そしてその少し離れた場所には、一回り大きな猫の姿も見える。

 がりがりの貧相な猫。暴走族に対して、四肢を踏みしめて威嚇している。


 それで拓未も気付いた。この暴走族たちは、子猫をさらってイジメているのだと。

 首根っこを掴んで投げ合ったり、指先で弾いたりしている。

 下手すれば、しいたげて殺しそうな脅威がそこには見えた。


「ちょっと、かわいそうだろ」

 堪らず言い放つ。


 それで暴走族たちの視線が拓未に注がれた。


「なんだぁ?」「おめーが言ったのか?」「ガキじゃん」

最初ムカつき加減だったそれは、徐々に失笑を含んだものとなる。


「小僧はさっさと帰れ」「痛い目みねーうちにな」

拓未のことを、その子猫と同レベルとしか思っていないようだ。



「その猫、嫌がってんだろうよ。イジメなんてみっともねーと思わねーか」

 それでも気を吐く拓未。


「はぁ?」

 それで真ん中にたむろする男の額がひくついた。


「これは俺らのエモノなんだよ。それともなにか、おめーが代わりに遊んで欲しいか?」

 ゆっくりと立ち上がる。


 そそり立つ黒い影。180センチはあるデカいガタイだ。はだけた特攻服からは、さらし越しに筋骨隆々の身体が覗く。


 それで拓未はしまったと思った。ケンカには自信がある方だ。それでもごく一般にいうそれ。

 なにより小学生の自分とは年齢差がありすぎる。


「マジダッセー野郎だな。格下相手じゃなきゃ、粋がれねーときてる」

 それでも自然と口では悪口をいう。


 拓未の悪い癖だ。古典落語の影響で、ベラんめい口調になってしまう。


「大したガキだな」

 いつのまにか大男は、拓未の前に立ち構えていた。


 後方から灯篭の赤い光が射し込み、その身体は黒山のようにそそり立っている。


 目の前で右拳を左手で覆い、ぽきぽきと関節を鳴らしていた。


「少しは反省しろ!」

 そしていきなりその右拳を拓未目掛けて放った。


 咄嗟に左腕を突きだす拓未。それで大男の拳を外に弾き出す

 そしてそのまま、左の拳を大男の顎に叩き込んだ。


 一瞬の沈黙。


「はがっ!」

 堪りかねたように大男がその場にしゃがみ込んだ。


 拓未としては力を籠めたつもりはなかった。相手が勝手に体重を乗せた結果だ。単なる自爆行為。


「よしっ」

 ぐっとガッツポーズを繰り出す拓未だが、すぐに蒼白になる。


「この野郎」「ヤマダ大丈夫か」「このまま済むと思うなよ」

いつのまにかその場の全員に囲まれていたのだ。数にして4人。


「そいつ捕まえとけよ」

 そして大男もゆっくり立ち上がる。

 顎を押さえているが、確たるダメージはないようだ。


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