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学園の実情 真の支配者

「そもそもおめーら、なんで生徒会と争ってんだ? あの生徒会ってのはいったいなんなんだ?」


 そのシュウの問い掛けに、ポリポリと頬を掻く由利。


「もともとこのオーク学園は、由緒正しき名門校じゃったんや」


 それはシュウも知っている。


「規則と規律に則り、ムダなものを排除する校風じゃった。それを成してたのは生徒会執行部。言ってることはまともじゃが、逆からう者、異質な者は排除する。それに従わぬ者は抹殺さえする。そういう風習じゃった」


「異質って……」

 シュウの視線がゴン太を捉える。


「誰が異質だ。お主だって異質だろう」

 ムカつき加減に言い放つゴン太。


 それをどっちもどっちだという風に見つめる由利。


 このさい言うが、猿飛を含めて全員異質な存在だ。



 暫しの沈黙。


 口元に拳を充てて、ゴホンと咳払いする由利。


「率直に言って佐藤ゴン太、おんしが剣道部を破門になったんは、そのせいや」


「……つまり、拙者が異質だから?」

 愕然と返すゴン太。


「おんしは剣の腕はありそうだが、どこか危険な匂いもしとるからな」

 そして由利の視線がシュウを捉える。


「シュウ、おんしの仲間の斉藤太助、あれも生徒会の犠牲者なんやないか?」

 それでぴくりと反応するシュウ。


「仲間って関係じゃねーがな」

 怪訝そうに耳の穴をかっほじる。


「なんで太助が犠牲者なんだ?」

 それでも少しばかり興味はあった。


「西園寺大輔って知ってるよな」


「確かボクシング部の期待の新人だな」

 西園寺の名はシュウでも知っている。それだけ学園期待の生徒だからだ。


「そう西園寺大輔は生徒会が他県から召集した特待生。是非ともボクシング新人戦で優勝して貰わなきゃあかん存在だ」

 意味深に目配せする由利。



「斉藤太助は現在、その西園寺大輔のオモチャと化しとる」


「オモチャって……」

 それでシュウも愕然となる。


「西園寺は強すぎてスパーリング相手もおらん状態なんや。だからそのスパーリング相手として斉藤太助に白羽の矢が立ったんや」


「スパーリング相手って、あの小僧は初心者だろ?」


「そんなの奴らからすればどうでもええ問題なんや。要は単なる殴られ役。あいつは単に殴る感覚を味わいたいだけ。だからこそ生徒会執行部を介して斉藤太助にその役をあてがった。まさに悪魔の契約だな」


「なんだよそれ」

 流石のシュウもそれには返す言葉もない。


「とにかくそれが生徒会執行部のやり方なんや。学園の未来を担う生徒には手厚い処遇をするが、どうでもいい生徒は奴隷のように扱う。いつだったかの山崎襲撃事件あるやろ? あれも影で暗躍しとったのは生徒会執行部、っちゅう噂まである」



 確かに学園を仕切る生徒会には悪い噂が付き纏っている。

 オーク学園生徒会執行部は、巨大な権力を握っている。それは一般の教師さえも凌ぐもの。


 噂では教室の一角を改造して、牢獄にも似たクラスを作ってるらしいし、スポーツ特待生を応援するために、他の生徒を犠牲にさえしてるらしい。


 己の名声の為に、多くの犠牲はやむなしとの考えをもっているそうだ。


 それ故に遺恨を持つ生徒も大勢いるだろう。


「それに意を唱えたのが淀川エリ。生徒会に真っ向からケンカを売って、それらと全面的に抗争してきた。だからこそこの自由奔放な学園は誕生したんや」


「そんな経緯がなければ、ボクも、キミらだって、このガッコーには入学できなかった筈だよ。普通のガッコーじゃ受け入れてくれないだろうしね」

 それに補足する猿飛。



 シュウたち1年世代は、学園の在り方を変えたのは自分たちだと思っているが、本当の意味でその基盤を作ったのは現3年生。


 彼らの基盤造りがなければ、シュウ、葛城、東雲といった多くのヤンキーは入学さえできなかっただろうから。


 誰もが返す言葉もなく頷くだけ。



「だからって……」

 それでも声を荒げるシュウ。


「だからってあの女、高飛車過ぎんだろ。おかげで俺様は散々だ」


 学園の実情はシュウにも理解できた。


 だがそんな生徒会執行部より、シュウからすればエリザベートファン倶楽部の方が深い遺恨の対象。……いやそれを仕切る淀川エリこそが遺恨そのものだといっても過言ではなかった。



 そんなムカつき気味のシュウを、由利は覚めたように見つめている。


「おんし淀川エリのなにを知ってる?」

 冷ややかな視線だ。見透かすような気配を感じる。


「なにって、派手で高飛車で、傲慢な嫌味女だろ? しかも学園の主と、悪魔の契約をしてる」


「縛るよ」

 淡々と言い放つシユウを猿飛が咎める。


「拙者は綺麗なお方だと思うが」

 今度はゴン太が言った。


「高貴なお方だ。少しぐらい高飛車なのは愛嬌かと……」


 そして会話は途絶える。



 奥の通路はあわただしさを増している。多くの人々が行きかっている。


 頭の上の猿飛をちらりと見据える由利。


「おんしらは勘違いしてるんじゃ、淀川エリ、そして霧隠宅きりがくれ たくのことを」

 そしてしみじみと言った。

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