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降り出した雨



 ゴロゴロと波打つ空。いつしか冷たい雨が降り出していた。



 その日山崎は買い物に出かけていた。


 大切な妹の誕生日を間近に控えていたから。

 妹とは年も離れて、今年中学に入学したばかりだ。陸上競技に打ち込んでいるから、スポーツシューズを購入していた。


 妹の好みは理解してる。その嬉しそうにする顔を思うと、自分でもにやけるような感覚になってくる。


 妹にも誇れる学生生活をして欲しい。誇れるというのは仲間の存在だ。大切な仲間がいれば、学生生活は誇れる物になる。


 自分の場合は上原に桜田、それと淀川。あいつらがいたから、この高校生活は楽しいものだった。


 さらには多くの後輩にも恵まれた。


 奴らがいたから、この荒野も乗り越えてきた。もちろん今回の戦線だって乗り越えていけるだろう。

 みんなで堂々と、卒業という勲章を手に入れるんだ。それが俺たちの絆だから。




 街の姿はどこか寂し気だ。灰色の空が辺りを包んで、全てがモノクロに感じる。


 それでも木々の緑は鮮やか。ところどころに色鮮やかな傘の花が開きだしている。


 あいにく傘は持ってきていない。ちゃんと天気予報を確認してくるべきだった。


 購入した品物の袋を閉じて、濡れないように注意を図る。


 赤信号に捕まり、暫し足止めをくう。


 相変わらず街中は、多くの車と人で溢れている。

 仲のよさそうな学生らしきグループ、家族連れと思われる3人組。付き合って間もない様なぎこちないカップル。ベテランの白髪のカップル。


 誰もが当たり前の日常生活に埋没してる。


 いつしか雨脚は激しいものへと成り変わっていた。



 やがて歩道の信号が青に変わった。


 小学生らしき少年が、意気揚々と走り出す。その手にしてるのは黄色い傘。その身体に似合わず、まるで黄色い傘だけが移動しているようだ。


 そしてその真後ろには両親と思える男女。


 眼を大きく開き、大声でなにかを叫ぶ。しかし傘が邪魔でその声はうまく届かないようだ。


 山崎の視線の端で、大きな影がうごめいた。



 耳をつんざく激しい音。


 その場の誰もが我が目を疑い、祈りの言葉を叫ぶ。



 黄色い傘が宙に舞った。


 続けて宙に舞ったのは、真新しい赤い靴。



 全てが、雨でしらばむ世界にかき消えていった。

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