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そこ知らずの狂気



 葛城誠が合流した正規軍は、圧倒的強さを誇っていた。


 アンディと合流した東雲たちが幾度強襲しようと、その牙城は崩すことはできなかった。


 それどころが逆に、戦力を削がれていくばかり。



 その間志士の会は沈黙状態にあった。


 今回のレイプ騒動、渦中にいるのは玉木仁だ。

 か弱い女を襲って凌辱りょうじょくした。そんな人物と歩調を合わせることに疑問を持つ生徒が多くいたからだ。






 パーラーエディオン~



 その雑音溢れる空間に、東雲の姿があった。


 白いジャージに身を包み、パチンコに興じている。口には煙草をくわえ、筐体に視線を注ぐ。


 筐体は勇ましい音に溢れてフィバーしているが、それには興味を示していない。

 逆に隣に座るサラリーマンが眩しい視線で見つめるだけ。



「流石に調子良さそうだな」

 そこに森が歩んできた。


「どうした、その瞼?」

 そして訊いた。その視線は東雲の右瞼を捉えている。何故かその右瞼がうっすらと腫れていた。



「2年の永瀬っているだろ?」

 その瞼を擦る東雲。


「あの雑魚、ケンカ売って来たから、ぶち殺した」





 今から1時間程前だ。


 東雲がここにくる道程で、オーク学園2年生、永瀬晋作と出会った。


 永瀬もあの山崎襲撃事件に遺憾をもつ人物だ。

 その2人の出会いは、自ずと激しい抗争を生み出す。


 結果、2人は死闘を演じる。

 もちろんそこは最強のルーキー東雲。戦いの軍配は彼に挙がったということだ。




「永瀬ね。雑魚にしてはいい攻撃貰ったみてーだな」


「マジだわ、あの雑魚。ムカつくから、右足エグってやったけどな」

 あざけるように言い放つ東雲だが、その目は笑っていない。


「雑魚ね……」

 苦笑する森。


 東雲は雑魚と言い張るが、本当はそう思っていないのは確かだ。


 東雲斗馬という男は、全てに全力をかけるほど馬鹿な男じゃない。


 永瀬晋作という男と争い、どこか危険だと判断したから、足をエグったのだろう。

 それだけの実力と脅威を永瀬に感じたということだ。



「まあ、だったらいいわ」

 さばさばと頭を振る森。


「興信所の調べ、上がったぜ」

 そして一枚の紙切れを差し出した。


「そうか」

 それを受け取る東雲。


 上から順に、一字一句漏らさず目を通していく。その表情が少しずつ笑みで包まれていく。

 長くなった煙草の灰が、ポトリと落ちた。


「大当たりだな」


 その台詞と共に筐体が激しく輝きだした。


 隣に座るサラリーマンの視線が釘付けになる。『なんでその台だけ爆発してんだよ』そんな羨ましそうな視線だ。



「オッサン、この台やるよ」

 言って立ち上がる東雲。雑然とする通路を歩き出す。


 えっと目を丸くするサラリーマンだが『ありがとう』と言ってその席に座り込んだ。




「住んでる場所はここで間違いないんだろ?」


「もちろんさ、ちゃんと家から通ってる。朝帰りなんかできない性格なんだろ」

 そして森が東雲の後を追う。


「善は急げ。これからやる」


「そういうと思って、準備はしてたぜ」

 2人共に笑顔。よこしまな感情だけが支配していた。

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