悠然たる葛城誠
1年G組~
「おい見てみろよ、葛城誠だぜ」
「マジか。これで山崎も勢いを増すってもんだな」
「奴らを倒すのは、難儀しそうだよな」
このクラスでも、葛城の話題で溢れていた。
誰もが戸惑うような、困惑した表情だ。
「別に気にすることでもなかろう」
その空気を断ち切るように大野が言った。
葛城の存在など気にする素振りも見せず、椅子に座り込み瞼を閉じている。
「だけど山崎と葛城のビッグネームふたつは脅威だぜ」
「そうだぜ。あのうるさい東雲を、あそこまで叩きのめした存在だからな」
堪らず言い放つ仲間たち。
ゆっくり瞼を開く大野。
「なにを言ってる。俺たちの目的は自らの自警だけ。こっちから仕掛けなければ、葛城は動かない。むろんそれは、山崎も同じこと」
そして鋭い眼光を向ける。
「まぁな」
「そう言えばそうなんだが」
ポツリポツリともらす面々。
確かにその通りだ。
志士の会のありようは、東雲から身を守る、いわば自警団にも似た存在。
つまり自ら勝負を掛けなければ、葛城と闘うことはない、ということだ。
「バーカ、てめーらは勇み足すぎんだよ。湯田たちに感化されすぎ」
玉木が言った。
窓際に上半身を預け、煙草を吹かしている。
それでもその言葉に、いつもの元気はない。
昨日のアンディの件、未だ尾を引いているようだ。
その後姿を、大野が静かに見つめている。
「アンディの言ってたこと、関係ないんだな」
そして言った。
リサの件は、それとなく訊いていた。そして疑われているのが玉木だと言うことも。
「馬鹿。俺は紳士だ。女を襲うなんて真似、する訳ねーべよ」
煙草の煙が、灰色の空に昇っていく。
その視線が捉えるのは、葛城の姿だ。風間や雷丸、その他多くの仲間に囲まれ、雨の中でじゃれあっている。
玉木の脳裏に浮かぶのは、入学当初の葛城の暴れっぷり。まさしく男といった生き様だ。
……それらと比べてみると、今の自らが置かれたありようが馬鹿馬鹿しくさえ感じてしまう。
気怠そうにバリバリと髪を掻き上げる。
「今日はかえんべ。気がのらねー」
言って教室入り口に足を向けた。
「なんだよ。帰るのか?」
仲間が声を掛ける。
「雨は嫌いだ。帰ってナンパ」
そして消えて行った




