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不動の山崎孝之


 オーク学園は、今まで一度として武力での纏まりを見せたことのない学園だった。

 何故なら多くの規律で封じられた、名門を誇る高校だったからだ。


 それ故、幾多の不良は正義の名の下に排除されていた。

 昭和以前から続く古くさい規律。強いていえば、朝廷制度のような状態だった。



 だが数年前、その状態が破られる出来事が起こる。

 山崎孝之、及び桜田総一郎、上原歩夢らが入学してきたのだ。

 彼らの勢力は、学園の姿を怒涛の如く変えていく。

 それにより落ちこぼれが救済されて、行き場を失った不良も居場所を得ることが出来たのだ。



 それと同時に、動き出した存在もあった。同じく入学した淀川エリだ。


 彼女は学園の主だった宅ちゃんと、ある契約を交わす。つまり淀川ファン倶楽部の発足だ。


 以降学園は、それら2つの存在と、生徒会執行部。その三つ巴の均衡バランスの中に存在することとなる。




 だがそんな完全な均衡バランスがいつまでも続く筈はない。


 そもそも時代というのは常に流れいく存在だ。それは水の存在にも似ている。


 空から降る雨が大地に降り注ぎ、小さなせせらぎとなる。

 せせらぎは小川となって、幾つも紡ぎあい大河となる。

 大河は海に流れて大洋となり、いつしか太陽に炙られて蒸気となって空に昇華する。

 それはやがて群雲となり、大地に降り注ぐ雨となる。



 それこそがこの世の摂理。輪廻転生のことわりにも酷似している。

 せせらぎとは即ち、学園に入学してきた幾多の猛者たち。

 それらは大河となって淘汰、粛清、排除を繰り返し、天に飛翔するまで流れ続ける訳だ。


 私立キングダムオーク学園。

 今まさに、時代のうねりの中に存在していたのだ。






 さわさわと、雨が降り注いでいた。

 しのつくような霧雨だ。


 降り注ぐ雨は雫となって滴り、木々の緑を一層濃いものに染め抜いていく。

 雨とは全ての生きとし生ける者にとって、恵みとも呼べる存在だから。



 昼時を迎えた3年F組の教室後方では、数人の生徒が集まって談笑していた。


 それは山崎と桜田たち。少し離れた窓際には、上原の姿もあった。



「しかしこの前のケンカ、よくこれだけのダメージで済んだもんだ。俺なんか未だに腕が痛いしさ」

 ヘラヘラと笑みを見せる桜田。


「お前だからその程度で済んだんだろ? 田中達なんか当分の間通院生活だ」

「うちらも酷いが、奴らはもっと酷いだろ。あの蜂須賀ってコゾー、右目を潰されっぱぐったらしいぜ」

「一年の湯田って奴の仕業らしいな。東雲の外道も酷いが、あのコゾーもえげつない」

 呼応して仲間たちが言った。


 自らの身を犠牲にして、東雲達を庇った蜂須賀と千家だが、湯田の卑劣な追い込みでかなりのダメージを貰っていた。


 大野や玉木達がいなければ、長期の入院が確実な情況だっただろう。



「しかしよく降る雨だぜ」

「お気に入りの靴、履いてきたのにな」


「雨だってなきゃ困るだろ? 農家にとっちゃ、死活問題だ」

 それを山崎が、和やかに相手している。


 覚めたように教室の外に視線を向ける歩夢。


 もうすぐ昼時を迎えるグラウンドは、ひっそりと静まり返っている。ただ沈黙と共にあるだけ。


 だがそのグラウンドに、黒い傘がぽつんと浮かんだ。

 どうやら遅刻した誰かが、校舎に向かって歩いてくるらしい。


「……誠」

 それを認め上原が漠然と呟いた。



「誠だって?」

 窓際に駆け寄る桜田。


「本当だぜ。あれは葛城だ!」

 そして興奮気味に叫んだ。



 彼らにとって、葛城誠はかわいい後輩。

 そして頼れる存在でもあった。


「これで学園の覇権、一気に奪える」

「そりゃー狂犬葛城だぜ。孝之と組めば、最強だ」

「あのコゾーも、これで終いだな」

 興奮気味に叫ぶ面々。


「はしゃぎすぎだぞ。少しは落ち着け」

 覚めたように投げ掛ける山崎。


 それでもその胸中、ぐっと込み上げる感情があった。

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