困惑する玉木仁
翌日~オーク学園~
窓の外は雨の世界。
そこから見えるのは緑鮮やかな光景。滴る雫が萌える緑を優しく染め抜いている。
雨は本来、全ての生きとし生ける者にとって恵みなのだから。
「へへへ、だろ、あの辺は上質のおねぃさんが大勢いんだよ」
「確かだわ、玉木の鼻は利きすぎて怖いくらいだぜ」
ホームルーム前の教室内、玉木たち数人が教室後方で会話に興じている。
むろん話題はナンパのこと。玉木に取っての青春は、綺麗なおねぃさんとの熱い日々を送ることにあるから。
教室の入り口には、別の集団の姿があった。そのだれもが怒りに燃えるような視線を放っている。
それらのひとりが室内に足を踏み入れる。それはアンディだった。
躊躇いもせず一直線に足を進める。その視線の先にあるのは玉木仁。
「なんだよ。アンディじゃねーの」
玉木の方も、そのアンディの姿に気付く。
アンディはなにも言わない。玉木に歩み寄ると、すかさず玉木の頬に拳をぶち込んだ。
「ぐおっ!?」
突然のその攻撃に、もんどりうって後方に弾き飛ばされる玉木。
机や椅子を薙ぎ倒して、床に倒れ込んだ。
「……な、なんだぁ?」
茫然自失で、目を丸くして前を見つめる。
そこに立ち構えるのはアンディ。狂気の表情で仁王立ちで構えている。
それでようやく気付いたようだ。いきなり現れたアンディに、攻撃を食らったのだと。
「てめー、アンディ! いきなりなにをするんだ!」
流石にムカつきと戸惑いを覚え、立ち上がろうとする。
しかしアンディはそれさえも許さない。
玉木の上半身にのしかかり、胸ぐらを奪う。
「いきなりだと? 貴様が行った行為に比べりゃ、可愛いもんだろうがよ!」
そして吠えた。
「俺が、行った?」
益々理解不能に陥る玉木。
アンディの表情は、仁王にも酷似していた。
憤怒に燃えるその表情。完全に玉木を敵と決めた表情だった。
「アンディ、センセーが来るぞ。今日のところはそれまでだ」
入り口の仲間が伝えた。
それを訊きいり、さばさばと頭を振るアンディ。
「確かにこんな外道、不意討ちで潰したって意味ないな」
そしてゆっくりと玉木の胸ぐらを振り解いた。
「こいつは宣戦布告だ。お前は正々堂々と叩き潰してやる。覚悟しときな」
こうして教室を抜けていくアンディ。
「なんだってんだよ?」
玉木は呆然とその後姿を眺めるしか術がなかったのだ。
この日をもって、アンディが東雲派閥に合流した。
かくして東雲は、最大派閥の頂点に上り詰めることになるのだ。




