動転する明智光昭
ゆっくりと外を歩き出し、車に乗り込む東雲。
それを確認し、車が動き出した。
「ねぇ、どうだったの?」
姉と思しき人物が、バックミラー越しに東雲に訊ねる。
「うるせー、てめぇは黙ってろ」
それを恫喝する東雲。
実際の話、彼女は東雲の姉などではない。ただのセフレ、東雲の身の回りの世話をする。
元々は家出少女だった。とある理由から東雲の身の回りの世話することを押し付けられて、そのまま東雲のいいなりになった女。
今では単なる都合のいい女に過ぎない。
口に煙草をくわえて、携帯電話を取り出す東雲。
「良くやったぜ光昭。巧く行きそうだ」
煙草に火を点けた。
その炎で浮かび上がる彼の表情は、なんとも嬉しそうな表情だ。
『う、巧く行ったって、警察にはばれないんだろうな?』
携帯越しに帰ってくるのは、明智の困惑した声だ。
「バーカ、奴らは警察なんかにはタレこまねーよ。なんせ自分らが捕まっちまうからな」
東雲の台詞は、妙に自信に溢れ一切の躊躇いない台詞だ。
『何故だよ。どこからそんな自信が沸いてくるんだ? こっちはいつバレるんじゃないかと必死なのに』
「アンディとリサ、それにその仲間は、薬を扱ってる“お薬屋さん”だ。警察なんざに泣き付いたら、捕まるのは自分らだって認識してる。だから警察にだけはタレこまないのさ」
そこにあるのはあらゆる狂気。相手の次の手を読んで、更なる一手を講じる。
東雲が、最強の策士たる所以だ。
それでも明智は動転したままだ。
『……だ、だけど俺はどうすんだよ? ……俺、中に出しちまって』
泣き出しそうな声が響くのみ。
「中出しした?」
一瞬、東雲の視線が揺らいだ。
「キャキャキャ! 馬鹿じゃねぇ。興奮して我慢が足りなかったんだべ?」
そして大声で爆笑する。
『笑うなよ! ……だいたいにして俺は仕方なく』
携帯の向うで弁明する明智。携帯越しにもその紅潮した表情が浮かび上がる。
「キャキャ、しょうがねー奴だわ」
そして東雲が、携帯電話の電源を落とした。




