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命がけの脱出劇



「キャキャキャ、悪いな。少しばかり油断してたぜ」


「マジだわ、山崎の野郎、あそこまで強いとは想像しなかったぞ」


「あのジャージの奴も凄かったしな」


 その頃校舎裏手を、東雲率いる数人の生徒達が逃げ惑っていた。


 東雲と森は見るからに深手のようだが、走るのには支障はないようだ。


 こうして敗走の集団は、裏口付近に差し掛かる。


「来たぞ! やっぱり来やがった!」

 突然響く、湯田の声。


「嘘だろ?」

 愕然となる明智。信じられず我が目を疑った。

 そこに居並ぶは、多くの志士の会の面々。その数は二十人程。


「クソッたれが、あの外道共!」

 東雲も怒りを覚え、歯を食いしばった。


「相手は手負いの獣、勝ち目は俺たちにある!」

 湯田が吠える。


「敵は東雲と数人だけだ! 奴の首を討ち取れば、名前が一気に轟くぞ!」


「潰せ潰せ! 数で圧倒するんだ!」

 同じく言い放つ鳳仙と古谷。


 その檄に呼応するように、幾多の生徒が駆け出した。



「クソッ! 死ぬ気で撃破しろ。ここで捕まれば、終わりだぞ!」

「ふざけんなよ、馬鹿野郎!」

「やられてたまるかーー!」


 対する東雲たちも必死だ。 

 攻撃を受けることを覚悟して、その戦線に飛び込んでいく。



「逃げるんだ、斗馬!」


「この場は俺らが引き継ぐ!」

 刹那、校舎脇から別の声が響いた。


「理、正宗!?」

 東雲の瞳に光が宿る。


 そこに映るのは、蜂須賀と千家率いる別働隊。約十人程の集団だった。


「怯むな突っ込め!」


「俺らがやられても派閥は復活出来るが、斗馬がやられればお終いだ! ここが踏ん張りどころだ!」


 そして躊躇うことなく、湯田率いる面々に突撃を開始した。



「クソッ! 新手か!」

「邪魔だ、俺は東雲の首が欲しいんだ!」

「ウルせーそんなことさせるか!」


 こうして激しい闘いが幕を開ける。





「……おい、斗馬。正宗たちも、酷い怪我してるぞ? 勝てる訳ないぞ」

 その様子を見つめ、うろたえ言い放つ明智。


 確かに彼が言う通り、千家も蜂須賀もその他の生徒たちも、大なり小なり傷ついていた。


 対する連合の生徒は、大野に玉木、湯田に鳳仙に古谷。誰も彼もが腕っ節に自信のある生徒ばかり。

 しかもその誰もがまだ無傷の状態だ。


 いくら蜂須賀と千家が加勢に出向こうが、勝機は皆無に思える。


「キャキャ、逃げるんだよ」

 それでも非情に言い放つ東雲。


「そう言うこと。勝てないから逃げる。単純な理屈だ」

 森もアッサリと言い放った。


「エッ、エッ?」

 愕然とその後姿を目で追う明智。


「てめーも逃げろ!」

「せっかくあいつらが覚悟を決めたのに、ここで捕まる訳にはいかねーんだよ!」

 既に2人は、裏口付近まで進んでいた。



「逃がすか、東雲!」


「斗馬には触れさせん!」


 いきり立つ志士の会生徒を、そうはさせまいと掴み取る蜂須賀。


 それは覚悟の姿だった。東雲を高みに押し上げ、自らは犠牲になる崇高なる覚悟。


 そしてそれは千家や、他の面々も同じだ。



 それをつくづく実感し、呼吸を整える明智。


「クソッたれがーーー!」

 気合を籠めて、その場からの脱出を図った。

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