検問&制裁
「オラーッ小僧、顔を見せろ!」
「触んなってんだ!」
「クソッたれ、また雑魚か」
「ほらそこのてめー、まだ通ってダメだ!」
「ザケンナよ、この馬鹿野郎!」
「なんだこのガキ。逃がしてやるって言ってるのに反抗する気か?」
3年生エリアでは厳しい検問が始まっていた。
それは東雲斗馬、及び森竜丸、明智光昭の身柄確保の為だ。
多くの1年生は辛くも通行を許されていた。流石に全てを確保するのは難しいと思われたからだ。
それでも中にはそれに従わぬ1年生もいた。その都度激しい応酬、リンチにも似た光景が繰り広げられていた。
それでも主犯である東雲たちの姿は確認出来ずにいた。
そこにはまだ多くの1年生の姿がある。
それ故、駆け付けた3年生が、山崎と合流するのも困難。イラつきの感情ばかりが増していく。
「孝之は大丈夫なのか?」
そこに桜田が姿を現した。
蜂須賀との戦いで幾らかのダメージを受けているようだが、さほど支障はないようだ。
「桜田、お前らこそ大変だったらしいじゃん」
「孝之なら無事だ。歩夢の機転で敵を返り討ちしたそうだから」
仲間が言い放つ。
それを受けて、教室の方を覗き込む桜田。
「で、敵さんの大将は見つけたのか?」
人混みを避けて、ゆっくりと歩き出した。
「いや、まだだ。まだそこらに隠れてると思うんだが……」
その仲間の指差す方向、十人程の1年生が、廊下を塞ぐように立ち尽くしていた。
その一番手前に立ち尽くすのは、腹の突き出た太った1年生だ。キョドったように視線をキョロキョロ巡らせている。
そしてそれを、何故か桜田がムカつき加減に睨んでいる。
「邪魔だ、そこを退きやがれ!!」
その刹那、桜田がその太った1年生を回し蹴りで薙ぎ倒した。
「ガハッ!?」
数人の仲間を巻き込んで、床に倒れ込む1年生。
「てめーらも死ぬか? 邪魔だって言ったろうが」
それでも桜田は躊躇わない。拳を突き出して残った1年生を捲し立てる。
それでその場の1年生の表情が凍り付く。恐れ戦くように壁際に張り付いた。
それで多くの3年生も気付いた。
その開けた光景、全開に開いた窓際に、銀色のなにかが輝いていることに。
バリバリと髪を掻く桜田。
「ムダだ、敵さんは逃げ出してるさ」
戸惑う仲間たちに言い放つと、さばさばと教室内に入っていった。
呆然と立ち尽くす3年生。
「なんだって?」
「まさか!」
それでもハッとして窓際に走り出す。
窓際で煌めく銀色のなにか、それは避難用の避難梯子だった。
校舎裏側に向かって一直線に降ろされていた。
「まさかあいつら、これを使って逃げ出したのか?」
「道理で見つからない訳だ」
どうやら東雲たち数人の1年生はこれを使って既に脱出していたようだ。
そんな愕然となる仲間たちを余所に、桜田は教室内に足を踏み入れていた。
「災難だったな、孝之」
教室内は激しい争いの形跡を残すように、無残に荒らされている。
山崎はその奥の方、窓際に佇んでいた。
そしてその傍らでは、上原が腕を組んで窓の外を見つめている。
「お前らこそ、閉じ込められてたんだって?」
和やかに言い放つ山崎。
「まぁな。幸い相手は本気じゃなかったようだがな」
「こっちは酷い有様だったぜ。あのガキ、俺をなめて掛からなきゃ結果も違ったかも知れん」
それは東雲の本気の実力を知っての台詞だろう。
「歩夢の実力にも、そうとう度肝を抜かれてた見たいだしな」
そして上原に視線を向けた。
上原は無言だ。じっと窓の外を見つめるのみ。
ひらひらとゆらめくカーテン。先ほどまでの喧騒が嘘のような長閑さだ。
「とにかくこれであいつらも、山崎孝之の実力を認めただろう。……上原歩夢っていう、完璧なボディガードの存在もな」
桜田が煙草をくわえた。
それに火を点ける山崎。そして自らも煙草をくわえて火を点ける。
「あとは、誠の復帰を待つだけだ」
そこにあるのは揺るぎない自信。
正規軍として、オークの頂点に君臨する者だけが持ち得る王者の風格だった。




