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悪夢の入学式 サムライ

 もちろんそこには争いに加わらぬ者たちの姿もある。



「くそったれ、一弥かずやの奴。俺を除け者にしおって」

 それは長い髪を左右に分けて下ろした生徒だ。

 それをバンダナで結わえて、制服の上に羽織りを掛けている。

 何故がその手には木刀。


「なにがナイトオペラだ。永倉ながくらの野郎も調子に乗りおって……」


 その視線が捉えるのは体育館の壁際。


 そこには数人の新入生らしき生徒が、壁に背を預けて佇んでいる。


 中央にいるのは茶髪の目つきの鋭い男。

 争う面々など眼中にないように、対面の壁際を睨んでいる。


 そして対面にも数人の新入生の姿。同じように鋭い視線。


 静かだが、熱い感情がそこには見える。

 血にまみれた戦場にあって、別の戦場にいるような、独特の空気感に包まれている。



「くそっ。俺だって負けるわけにはいかんからな」

 それをまざまざと感じ取り、少しばかり疎外感を感じ取る長髪。


「てめーが無視するなら俺も無視してやる。……剣の道を行くのみ!」

 ムカつきをあらわにするように吠える。


「拙者は土方歳三だ!」

 髪を掻き上げ、後方に結わえた。





「ふっ、誠の奴、入学早々派手に暴れてるもんだ」

 縦横無尽に暴れまくる葛城を見つめ、和やかに笑う人物。


 ショートの髪を額で分け下ろした無精ひげの生徒だ。

 その立ち振る舞い、放つオーラからして、かなりの人物らしい。


 その後方には、仲間と思しき幾多の荒くれが集結している。



「しかし、このままでは停学処分もありえるぞ」

 その傍らに立ち尽くす、小柄な生徒が助言した。

 黒いジャージで身を包んだ、深く野球帽を被る生徒だ。

 無精ひげとは違う、崇高なるオーラを纏っている。


「気にするな。あいつはあいつ、俺達は俺達。同士といえど、想いはそれぞれさ」


「まあ、確かにな。孝之たかゆきがそう言うなら、良しとしよう」





「呆れた連中やのう。入学式当日からこの有様とは、正直堪らんわ」

 壁際に背を預ける生徒が、ボソッと呟いた。


 緑色のソフトモヒカンの生徒だ。着込む真新しい制服からして、どうやら新入生らしい。


 これ程の乱闘騒ぎだと言うのに、眉ひとつ動かすことはない。腕を組んで、的確に情況を見つめるのみ。


 そしてその頭の上には、何故か黒い小猿がチョコンと鎮座ちんざしている。



「どうよ猿飛、このガッコーは楽しめそうか?」

 上目使いで言い放つモヒカン。

 しかし猿は答えない。瞼を閉じて、寝入ってるようだ。



「なんやお前、この情況でおねむなのか。大胆なやっちゃのう」

 怪訝そうに言い放つモヒカン。


「ワイも寝とこか。朝早かったから、眠くてあかんわ」

 そしてゆっくりと瞼を閉じた。





 2階部分には、他とは色彩が違う、異質な集団の姿があった。


 トップモデル顔負けの女生徒数人と、見るからに屈強な男達の集団だ。


「恐ろしい男揃いだな。姫に近寄らなければ良いのだが」

 憂うように言い放つ刈り上げの女生徒。


「大丈夫だ。姫の御身は俺たちが守る。それに、我が校で生きていくのであれば、姫に手を出す者などおらんだろ」


「それに、今年の新入生の中には、猿飛や由利ゆりがいるからな。奴らが加われば、俺たちの勢いも増加する」

 それに屈強な男たちが豪語した。



 その中央で堂々と立ち構えるのは、長い黒髪の女生徒だった。 

 凛とした表情、透き通った白い肌、湖のような雄大な瞳、類希なる容姿の女生徒。


「どの道、私たちには関係ないことさ。私たちは私たち、奴らは奴ら、存在する世界が違うから」



 その視線が捉えるのは、壇上近くで教師たちと並んで椅子に座る、威厳あふれる集団。

 その中央、一際煌めくアイドルを彷彿させる美しい女生徒の姿だ。



 その女生徒は口を開かない。真一文字に結び、修羅場と化した争いを見入っている。ウェーブさせたダークブルーの髪があでやか。



 黒髪の女生徒が大人びた美しさを誇るとすれば、ダークブルーは幼さの中にも華やかさを演出していた。

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