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最強の盾


 ガシャーン! 体育館2階の窓ガラスが砕けた。


「そこに突き出してる、といを伝って下に降りろ」


「そっと、そっとだぞ。落ちるなよ」

 体育館内に封じ込められていた3年生が、次々と外に飛び降りる。


 中には勢い余って転び落ちる生徒もいるが、今は関係なかった。


「このクソガキが!」

 飛び出したと同時に、通用口を守る1年生に飛び掛る。


 中で応戦する1年生達とは違って、外の1年生達は格下の男達だった。


「止めて!」

「勘弁してくださいよ!」

 攻撃を受けるや否や、雲の子を散らすように逃げ去っていく



「クソッたれが、俺達をこんな場所に封じ込めて、てめぇの意見を通そうとは」


「マジだぜ、俺らの怖さ、その身に叩き込んでやんよ」

 3年生の方は冷静だ。封鎖された通用口扉を、改めて開放した。


「ここの1年なんかにかまうな!こいつらはハッタリだ!」

「奴らの狙いは孝之だ! クラスに戻れ!」

「東雲のガキ、血祭りに上げてられや!」

「ほら、脱出だ! 孝之が心配だ、走れ!」

 こうしてその場から解放された3年生達は、興奮気味に校舎目がけて走っていく。


 目指すは山崎孝之の身の安全。及び東雲斗馬への反撃。

 誰も彼もが狂気に満ちた、凄まじい覇気を纏っていた。



 こうしてガヤガヤした喧騒に包まれる体育館内。


「……どうした。エラク冷静じゃん」


「冷静? お前だって冷静だろ。作戦が失敗した、敵の大将とは思えないくらい冷静だ」


 その最中、蜂須賀と桜田が対峙していた。


「山崎はヤバイんじゃねぇか。相手は斗馬だぜ」

「斗馬? あのガキか」

「言うじゃんか、歳だってたった2つしか違わないってのに」

 それは覚めたような淡々とした会話だ。


 それでも内に秘めた想いは激しいもの。それぞれこころざしを同じくする者への、ある種の畏敬の念が垣間見える。


 それは蜂須賀に取っては東雲斗馬、桜田に取っては山崎孝之。その両君に対しての崇高なる感情の成せる業であろう。



 多くの生徒たちは、山崎の救出及びその対応で体育館から姿を消していた。


 残ったのは戦線離脱した者、及び一般の生徒。


 故に邪悪な感情を持たず、その2人の様子を見つめていた。


「お前は、孝之の実力を測り違ってるんだ」

 静かに響き渡る桜田の声。


「なんだと?」

 怪訝そうに眉をしかめる蜂須賀。


「仮に東雲の実力が、孝之をしのいでいたとしよう。……だけどあいつの首は捕れない。何故なら、“最強の盾”がついているから。俺たちはなにも、最強の戦士としてこの学園の頂点に君臨してる訳じゃない。最強の防壁ガード、何者にも突き崩せぬ盾があって、この学園の覇者として君臨してるのさ」


 桜田の台詞には重みがあった。学園を守護する、正規軍としての重みがだ。


「最強の盾だって?」

 流石の蜂須賀も、少しだけ胸騒ぎが生じるのを覚え始めていた。



 そしてその言葉こそが、第一次オーク戦線・前章戦の鍵を握るキーワードだったのだ。

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