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神様っているんだな

「斗馬!」

 有り得ぬ展開に、咄嗟に駆け寄る明智。


「逃がすか小僧!」

 そうは行かぬとばかりに、その後を追う田中。


「おめーは俺が相手するぜ!」

「邪魔すんじゃねーぞ!」

 しかしそれを数人の1年生が阻止する。



 森の方も気が気ではない状況だった。


「てめー、よくも斗馬を!」

 怒りの感情をむき出しにして、視線を東雲に向ける。


 だがその隙を突いて、林が動き出す。

 貰った、とばかりに森の後頭部目掛けて拳を繰り出した。


 しかし森は冷静だった。木刀を逆手で握り直して腰の位置で構えた。


「雑魚は、寝てろや!」

 振り返ることもせず、木刀の切っ先を後方に突き出す。


 それが林のみぞおちに直撃した。


「ぐはっ?」

 悶絶の表情で崩れ落ちた。



「てめーも死んどけよ!」

 そして再び木刀を握り直し、山崎目がけてぶっ込んでいく。


「ふっ、剣の使い手か。厄介な奴だ」

 咄嗟に飛び退く山崎。それでも顔では笑っていない。


「騙るなよこの野郎! その首、刎ね飛ばしてやんぞ!」

 それを鬼の形相で睨む森。

 踊るように木刀を乱舞させ、山崎を狙う。


 こうして山崎と森の死闘が開始された。



「斗馬、斗馬!」

 その間に明智は東雲の傍まで歩み寄っていた。東雲の肩に手をかけて、揺さぶって声を掛ける。



「なんだよ光昭? ……やっべー気絶すっとこだったわ」

 東雲の鼻は折れ曲がり、息をするのも億劫おっくうのようだ。それでも意識ははっきりしているようだ。


「まいったよな、オーク学園正規軍大将、山崎孝之。想像以上だわ」

 意識と体力には損傷ないが、予想外の山崎の実力に戸惑いは感じていた。


 山崎孝之の実力、それは東雲が考えていた以上のものだった。それをまざまざと感じ取り、東雲の表情もいつになく真顔だ。


「斗馬?」

 戸惑う明智を余所に、煙草をくわえゆっくりと立ち上がる東雲。


「キャキャキャ、おもしれぇ。意外すぎる実力だったが、今日こうして、ここを襲撃した甲斐があったってもんだわ」

 火を点けた煙草の煙をくぐらせ、剣呑な視線を山崎にぶつけた。



 その眼前で山崎は、森相手に死闘を演じている。


「どう言うことだよ、斗馬?」


「判るだろ? これだけの実力だ、仮に葛城が復学したら、こいつらは無敵だぜ。今の俺らじゃ到底太刀打ち出来ない事態に陥っていた」


 それが東雲の本音だろう。


 自分の実力を把握し、尚且つ相手の力量を見極める。戦士としての気構えが垣間見える。


「……だったら」

 それは明智にしても痛感せざるを得ない。その額に冷たい汗が滲む。



「そんなツラすんなよ。だからラッキーなんだろ?」

 しかし東雲の表情は呆れるほど冷静。


「なんだよラッキーって」

 困惑する明智。


「幸い葛城はここにはいない。俺たちは幸か不幸かこの場所に殴り込んだ、葛城の居ないこの空間にな。……判るだろ? 今しかないってことなんだよ、山崎を打ち倒すチャンスはよ。だから俺らはラッキーなんだ」


「斗馬、お前……」



 それは先程打ち倒された男の台詞とは思えぬほど、的確な分析能力だった。

 その恐ろしい程の分析能力を認め、明智は益々冷たい感覚を覚える。



「神様っているんだよな。……俺にオークのてっぺん狙えって、チャンスをくれる神様って」


 東雲の顔に浮かぶのは笑み。


 あらゆるピンチをチャンスに変えて、あらゆる局面を脱出する男。それこそが東雲斗馬。



 目の前で戦う山崎孝之。その相手は森竜丸。


 だがその山崎を狙う東雲斗馬と明智光昭の存在が、ひどく不気味だった。

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