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ファン倶楽部


 こうして無理やりグラウンドにつれて来られた太助たち。



 だが事態は予測不能な状態に陥ることになる。



 いつもなら多くの生徒が部活動に明け暮れる光景が目に付く筈。

 だが何故かグラウンド内に、ひとりの生徒の姿もないのだ。


 多くの生徒が遠巻きに、グラウンド中央を見つめている。



 流石の押尾も、その様子に慌てふためく。


「どうしたんでしょ、この光景は」

 そして呆然と立ち尽くす陸上部部員に訊ねた。


「あれですよ、倶楽部の連中です。今日は“エリザベート”の生誕十八周年記念祭とかで」


「生誕記念? そうか、もうそんな季節だったのね」

 そして押尾も、愕然と肩を落とした。



「生誕記念? エリザベート?」

 その意味が判らず、てんぱる太助。


「仕方ない、奴らが消え去るまで、ここで待機だ」


「なにか始まるんですか?」

 覚めたように言い放つ押尾に、ひとりの生徒が訊ねた。



「倶楽部のパレードよ。エリザベートの誕生日を祝って、奴らが勝手に行ってる行事よ」

 それに押尾がサバサバと答える。


「へ?へ?」

 益々困惑する太助たち。


「なんだお前ら、“エリザベートファン倶楽部”を知らないのか」

 先程の陸上部部員が問い掛けた。


「エリザベート?」

 小柄な生徒が愕然と喰い寄る。

「前にも言ったでしょ? このガッコーは部活動と倶楽部って集団があるって」

 押尾も渋々と話し出した。



「なんでも有りのメチャクチャな奴ら、でしたよね」

 うんうんと頷く太助。



「そう、本来は部活動ってのは生徒会の承認を得た由緒正しき活動を差してる。だけどその活動に、異を唱える輩が現れたのよ。『課外活動なんだから、自由が欲しい』とか『アニメ研究会とか、美少女研究会も欲しいよ』とか、ワガママな連中よ」



「はぁー、アニメ研究会っすか」

 太助を始め、他の1年生が至福の表情を浮かべた。


「そんなの邪道よね。男らしくない」

 その空気を振り払うように、不気味な視線を向ける押尾。


「はぁ」

「……そうっすよ」

「押尾さんは偉大です」

 困惑して棒読みで答える1年生。

 もちろん心の中では、オネー言葉を遣う押尾を、理不尽だと思っている。


「そんなこんなで、奴らは生徒会に真っ向からクーデターを起こしたのよ。『生徒会の承認はいらない。だったら私たちは好きにやらせて貰う。倶楽部、個人の趣味を高みに押し上げる倶楽部。それで文句はない筈よ』……なんて生徒会長に啖呵たんかを切って」

 昂揚気味に言い放つ押尾。




 それこそがオーク学園の実情だ。


 現状オーク学園を取り仕切るのは3つのグループ。


 多くの不良たちを率いる山崎孝之の“学園正規軍”。


 秩序で学園の表舞台を取り仕切る生徒会長、源平静香げんぺい しずかの“生徒会執行部”。


 そして、学園の裏を仕切るのが、無秩序でやりたい放題の“エリザベートファン倶楽部”。その総代が淀川よどがわエリ。


 それこそがオーク学園の三大勢力。その3つでバランスをとっていたのだ。



「ははは、訳判んないね、オークって」

 戸惑い言い放つ太助。


 粗方の意見はそんなもんだろう。普通の人間には理解不能な話だ。



 そんな彼の耳元に、校内放送のメロディが聞こえてきた。


 曲はエレクトロニックパレード。不気味な歌詞が添付されている。


「な、なんなのこの、耳をつんざく歌声は?」

 それで訳の分からぬ恐怖に包まれる太助。ガタガタと身体が震えだす。



 そんな太助を尻目に、校舎側から異様な集団が現れた。


 パレードなどに使うド派手な台車フロート

 それを様々な衣装に身を包むコスプレ集団が、前後から押し引きしている。



 その台車の中央に堂々と立ち尽くすのは女生徒。

 小柄な体型で長い黒髪の、凛とした表情の女性徒だ。

 肩には黒い小猿が、ちょこんと乗っている。


 さらにその両隣りを、派手な特注制服を着込む二人の女生徒が取り巻いていた。


「彼女がエリザベート。倶楽部を仕切る、女将軍ってとこね」

 押尾が言い放つ。


「あれには近寄らない方が身のためだぜ、ヤバイことに巻き込まれちまうからさ」

 陸上部部員も伝えた。



 凛とした女生徒は、淀川よどがわエリ、通称エリザベート。現オーク学園3年生。


 その凛とした表情、類希なる容姿美貌により、学園内にエリザベートファン倶楽部なるものを立ち上げたカリスマ女生徒。


 オーク学園の裏の無秩序を仕切る女将軍だ。



「ヤバイことって?」


「あの取り巻き集団だよ。あいつらは異質すぎる力を持ってる。あいつらを怒らせたらどんな目に遭うか判らない。だからみんな、こうしてあいつらをやり過ごしてる訳さ」


 恐らくその言葉は、嘘偽りない事実だろう。

 だからこそ多くの生徒が、覚めた視線でその光景を見守っている。


 部活動に勤しむ生徒も、下校途中の生徒も、グラウンド中央部には足を踏み入れずに端の方を行き来している。


 ド派手さの中にも、張り詰めた空気が漂っていた。

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