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しつけと称したイジメ


「誰だぁ、コラ! ここの清掃した奴!」

 ボクシング部内に、足柄の怒号が響き渡る。


「お、俺です」

 そこに太助がヨタヨタと歩み寄った。


「雑巾で水ぶきしたのかよ!」


 窓の桟を指でなぞる足柄。その指先を太助の目の前にかざす。

 そこには僅かだが埃がこびり付いている。


「えっと、そこはおととい掃除したんですが」


「おとといだって? 今日は掃除してねーのか。制裁喰らわすぞ!」

 そして鬼の形相で、太助の胸ぐらを引き上げた。


 その様はまるで嫁いびりする姑だ。まるで昭和なやり取り。あの頃はこの手の先輩ざらにいた。



「ご……ごめんなさい」

 声を震わせ、必死に謝る太助。


 足柄はかなりの腕力の持ち主だ、ハマジとは比べ物にならぬ恐怖感が渦巻いていた。



「なんだよその目付きは? 言っとくがこいつは、いじめとは違うぞ。こいつはしつけ、貴様を思えばこその躾なんだ」


 吐き捨てるように言い放つ足柄。

 


「仕方ねーな、連帯責任だ。1年生全員、グラウンド100週!!」

 そして敢然と言い放つ。



「嘘っ、ボクらまで?」

「ひ、100週って」

 その台詞に、愕然と呟く他の新入部員。




「そんな……」

 そしてそれは太助に取ってもあり得ない台詞だ。

 自分の為に、他の生徒が辛い思いをする。それは自らが傷つく以上に辛いことだった。




 その台詞をシャドーボクシングに打ち込んでいた生徒も神妙な面持ちで聞き入っている。

 逞しい肉体に、坊主頭の目付きの鋭い男だ。


「自分も、っすか?」

 その腕を止め、静かに問い質した。


 その台詞に、足柄の表情が変わる。


「いや西園寺さいおんじ、お前はいい」

 慌てたように言い放った。



「そうっすか」

 こうして坊主頭は黙々とシャドーを再開する。


 その生徒の名は西園寺大輔さいおんじ だいすけ。子供の頃からボクシングに打ち込み、中学時代は県大会で優勝した実力者。

 ボクシング特待生として、オーク学園に入学した生徒だった。



「うふふ、あたしが監視してるから、あんたらはさっさとグラウンドに行くんだよ」

 こうして押尾が仕切る中、太助たちは否応なしに部室から表に放りだされて行ったのだ。



「ふん、なにが躾だ。自分が弱いからって弱い奴をしいたげる。腐った奴らばかりだな……」

 そのうしろ姿を西園寺が冷ややかに見据えていた。

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