放課後の教室にて
「さあてと、授業も終わったな」
「帰り、どっか寄ってくか?」
「ゲーセンでも行くのか?」
放課後の教室内、ガヤガヤとした会話が響いている。
そんな和やかな空気の中、太助はひとり黙々と帰り支度をしていた。
「どうした斉藤、今日も部活か?」
ハマジがのほほんと投げ掛けた。
「うん、早く行って部室の清掃しなきゃならないから。一秒でも遅れると、怒られるんだ」
太助の顔中には、痛々しさを物語る青あざや絆創膏が刻まれている。
その青あざの意味は、ハマジにも理解出来ただろう。
「へーっ、大変だな熱血少年は」
それでも卑下たように笑い、言い放つだけだ。
「へへっ、そう言うことで行くね」
こうして太助は、教室をダッシュで抜けていった。
「へへへ、馬鹿な奴」
ボソッと吐き捨てるハマジ。
最近、太助に対するハマジの執拗ないじめは鳴りを潜めていた。
流石にシュウに目を付けられては大変だと実感したのだ。
それでも彼の胸中、イラつきの感情はなかった。太助をボクシング部に身売りすることで、鬱憤を抑制していたから。
その傍らでは大野の仲間たちが、なにやら神妙そうな会話に興じている。
「しかし東雲の奴、良くあれだけの騒ぎで退学にならなかったよな」
「マジだぜ、お陰で奴ら、勢力を盛り返しつつあるってさ」
「朝倉の奴、結構マジになってたぞ。『このままじゃ、あいつら全てをもって行かれる』って」
「だろうなあいつ、相当頭にきてるから。実際この戦況じゃ、奴じゃなくともそう感じるもんな」
「だけど動けないよな。俺たちが動けばバランスが崩れる。崩れれば“正規軍”が動き出す可能性も秘めてる。葛城だって、いつ謹慎が解けるか判らない」
「だからこそアッキは動けないんだよな。……悔しいよな、俺たちが付いていながらさ」
それは学園の実情を憂いての会話だった。
東雲の派閥は躍動を見せ始めていた。多くの猛者を恭順させ、押し潰して排除していく。
だが大野率いる連合の反抗も堂々としたものだった。
いつしか2つの派閥均衡は不動のものとなり、バランスの中に存在することとなる。
そしてそのバランスの中心にあるのは、山崎を主軸とした“学園正規軍”。
それと“表の秩序”と“影の無秩序”。
荒野なりの均衡が、確かにそこには存在していた。




