東雲に対する処分
1時間後~職員室~
「どうしてです? 何故あの生徒の謹慎が解かれたのです?」
「そうだよ、あいつは入学式において、多くの生徒を殴り倒し、なおかつ教師にまで手をあげたんですぞ」
「現に彼より罪の軽い、葛城誠は、いまだに謹慎中だ」
多くの教師たちが口々に喚いている。
東雲が学園に現れたこと自体が、彼らには納得出来ないようだ。
「まぁまぁ落ち着いて。今、彼は生徒指導室に呼ばれているんです。なんらかの処分が下されるでしょう」
それを白髪の教師が宥めた。
「教頭と学年主任の佐藤先生が行ってるんでしたな」
「入学式の件は済んだことと仕方ないが、今回は別でしょ」
「そうですな。大勢の生徒が見てる前で、あれだけの乱闘騒ぎを起こしたんだ。長期の停学、もしくは退学処分もあって然りだ」
こうして職員室内は様々な意見で紛糾していたのだ。
だが多くの教師の想いとは裏腹に、生徒指導室で広がっていた光景は、異様なものだった。
「だから、俺らは学園を救った英雄ってことじゃんよ」
何故かその場の主導権を握っているのは東雲だった。
「マジ、融通きかねーオッサンたちだよな」
その横には、木刀を肩に担いだ森の姿もある。
「……しかしだね、東雲くん」
「その意見は余りにも理不尽だ」
テーブルを挟んだ向かい側、困惑する教頭と学年主任の姿もある。
パイプ椅子に堂々ともたれ掛かり、威圧する東雲たちに対して、教頭達は溢れる汗をハンカチで拭い捨てて、明らかに態度が逆転している。
「キミの無期停学を解除しただけでも噂が立っているのに、先程の一件を、不問にするのはどうかと……」
上目使いで東雲を見据える教頭。
バシッ! 森がテーブルに木刀を振り落とした。
「別にかまわねーんだぜ? 斗馬を処分するってなら、こっちとしても腹を括る覚悟は出来てんだ」
そして怯える教頭の眼前に、携帯電話の画面を見せ付けた。
「そ、それは……」
言葉を失う教頭、及び学年主任。
携帯電話の画面に映るのは、教頭と学年主任が若い風俗嬢らしき女と仲良くしている映像だ。
その青ざめる教頭たちを見つめて、森がおもむろに立ち上がる。
「この子らってさ、東蘭高校の生徒たちなんだよね。今は退学してお水で働いてるけど、現役教師がこんなことしていいのかなぁ?」
そして意味深に言い放って辺りを歩き出す。
「わ、私はあの子らが未成年と知らなくて」
身を屈め、ガクガクと震える教頭。
「だけど、あれはキミらが仕組んだことだろ?」
学年主任が上目使いで森を睨んだ。
バーンとテーブルを両手で叩く森。
「そうかも知れんがさ、事実は事実じゃんよ? スクープだぜこれは。処分は確実、下手すりゃ懲戒免職だ」
そして教頭の顔色を覗き込むように睨みを利かした。
学園の生徒は別として、既に教師達は東雲に掌握されていたのだ。
そんな状況下、東雲は煙草を口にくわえて、欠伸を掻いて窓の外を見つめるだけだ。
「いいじゃんよ、センセー達さ。俺のお陰で、このガッコーが悪党の手から救われた。結果オーライじゃんよ」
そして何事も無かったように立ち上がる。
「だわな、斗馬が居なきゃ、学園は血の雨だった。女は犯され、校舎は火の海」
その後を森が嘲るように続きだす。
「東雲くん、森くん……」
「しかしだな……」
教頭たちはその後姿を、悔しげに見つめるだけだったのだ。
こうして学園側は、東雲への処分は一切下さなかったのだ。




