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志士の会

「なっ?」

「てめーらは?」

「どうして!」

 愕然と声を荒げる東雲派閥。


 そこに雪崩れ込んできたのは玉木に湯田、古谷に鳳仙といった、連合に名を連ねる生徒たちだった。



「ほらよ、ボケーッとしてんじゃねーぞ!」

 玉木が小柄な男のどてっ腹に、蹴りをぶち込んだ。


 小柄は机をなぎ倒して倒れ込む。


「やれやれだぜ、ようやく伸び伸びとケンカ出来るよ」

 それを煙草を口にくわえて、飄々と見つめる玉木。


「貴様は、ナンパ師玉木!」

 それをゴリラのような男が愕然と指差す。


「オウよ、それがどうしたってんだ!?」

 すかさず玉木がその襟首を両手で奪い取る。


 そして間髪いれずにチョーパンを叩き込んだ。


「ガハッ!」

 それで後方に弾かれるゴリラ。


「ゴリラは動物園に帰れってんだよ!」

 そして玉木、今度は強烈な拳をその顔面に叩き込んだ。


「フ、フガァ……」

 ガックリと膝を折るゴリラ。やがて意識が吹き飛び、床に屈伏した。



「大丈夫か、朝陽?」

 大野の傍に誰かが歩み寄る。背中しか見えないが、短い銀髪の男だ。


「ああ、大丈夫だ。お前らがいいタイミングで、駆けつけてくれたからな」

 それに笑顔で答える大野。



「クソがぁ! もう少しで大野を仕留められたってのに、邪魔しおって!」

 その銀髪めがけて巨体の男が後方から襲い掛かかる。



「仕留めるだって?」

 すかさず振り返る銀髪。


 その眼前、巨体の拳が迫ってくる。


 すっと右に身を逸らして、その拳を回避した。


「仕留められるのは、おめーの方だろ!」

 ぐっと拳を握り締めて、強烈な右アッパーを巨体の顎に叩き込んだ。


 巨体の身体が宙に舞う。地響きと共に、床に倒れ込んだ。



「嘘だろ、マサトが一発で潰されるなんて?」


「それよりあいつ、見たことあんだよ」

 その様子を愕然と見つめる東雲派閥の面々。


 一方の大野は、和やかな視線を銀髪に向けている。


「流石だな、拓未たくみ。噂以上の実力だ」


「ははっ、俺は先輩の付き合いで忙しいんだけどよ。この腕が空いてん時は、いつでも加勢してやるさ」

 指で鼻頭を擦り、無邪気に笑う銀髪。


 その会話を聞き入る、東雲派閥の表情が青ざめる。


「思い出した! 大瀬良拓未だ。本牧なんかで有名な野郎だ!」


「それって、夜叉烏やしゃがらすの幹部とタイマン張って、楽勝した奴だよな? 中坊時代から、レジェンドの幹部候補生と噂されてた」


 銀髪の名前は大瀬良拓未おおせら たくみ

 ヘラヘラした笑顔からは想像出来ない、正義感と腕っ節に溢れる男。


 その類希なる才能を買われ、市内のロード系チーム・本牧レジェンドの未来の幹部と目される男。


 そして大野率いる連合に名を連ねる男だった。



「な、なんてこった。名の知れた奴らばかりだぞ」


「マジだ、大野と玉木、それに大瀬良が手を組んだなんて訊いちゃいないぞ」


 ガクガクと足をすくませて、後ずさる東雲派閥の面々。



「おっと、逃がすか」


「悪いが俺達の存在を、軽く見ちゃいけねーな」

 その後方から声が響く。


「なっ?」

「お前らは白樺二中の!」


 そこに立ち尽くしていたのは、湯田と古谷。


「帰って東雲に伝えな。オークを支配するのはてめーじゃねぇって。最強の支配者は、俺達連合だってな!」


「尤も、喋れる状態で、この場から帰れたらの話だがな!」

 そして2人、怒涛の攻撃を繰り出した。



「ハッハッハ! どいつもこいつも死にさらせよ。東雲なんざ、俺が叩き潰してやるぜ!」

 教室の隅では、朝倉が特殊警棒片手に、多数の相手を殴りつけている。



「ヘッヘへ、マジ最高だぜ! この肉の軋む感触、エクスタシーを感じる瞬間だぜ!」

 更に教室中央部では、鳳仙が気絶した相手をガンガン殴っている。

 

「おらおら! 俺達は帝王中学の者、ケンカじゃどこにも負けねーんだ!」


「拓未の応援しろ、そっちだ!」


「ふざけるな、勝つのは斗馬! 雑魚の連合など、力で捻じ伏せる!」

「数で圧倒しようと、俺達は負けねーんだよ!」


 教室内は東雲派閥の生徒と、連合配下の生徒との激しい戦場と化している。


 その様子を、訝しげに見据える千家。


「成る程、斗馬のビックネームには敵わぬと踏んで、県下のミドルネーム同士が手を組んだようだ。それでこのオークの覇権を狙うつもりか?」

 そして大野を睨んだ。


「ビックネームか、ミドルネームかは置いておいて、俺にこのガッコーの覇権を掴むなんて野望はない」

 敢然と言い放つ大野。


「野望はない? だったら何故、こんな集団を?」


「野望はない。俺たちはお前らみたいな野蛮な連中の束縛を受けぬ為の、自衛集団に過ぎん」

 グッと体勢を構える大野。


「自衛集団ね。そこに理想や信念などないと言うことか」


「理想や信念ならあるさ。ある意味俺たちは、志士だからな。生き残るための志を持った者たち。それこそ最大の理想であり信念だから」


 2人の会話はどこまで行っても平行線だ。



「だから俺たちは、お前らを排除する。その課程でオークのてっぺんを掴みとることも、あるかも知れんがな!」

 すかさず走り出す大野。



「だったら阻止するまで!」

 同時に踏み出す千家。



 激しい凶音と共に、2つの拳がぶつかった。


 クルリと回転し、バックブローを穿つ大野。


「くっ!?」

 千家は咄嗟に腕をかざし、それを凌ぐ。


 しかし大野の方が、少しばかり格上だった。大きく足を振りかぶって千家の頬にハイキックを打ち込んだ。


「くそっ!」

 それでヨロヨロと後退る千家。


「ここで勢いを欠く訳にはいかんのだ!」

 それでも気を引き締め、手前に飛び出す。



「悪いが」

「えっ?」

 その眼前、勢いよく拳が飛んでくる。



「お前らの狂った流れ、ここで断ち切ってやるぜ!」

 大野の強烈な右ストレートが、千家の顔面を直撃した。



「馬鹿な。いくらいきなりな展開だったとはいえ……」

 愕然と天を見上げる千家。


 ガックリと膝を着き、そのまま崩れ落ちた。



「嘘だろ、正宗が一撃で負けるなんて?」


「あり得ないよ、ウチの側近中の側近だぜ」

「大野朝陽、ここまでの逸材だったとは……」

 その様子を愕然と見つめる東雲派閥の面々。



「成る程、大野朝陽。まさに悪鬼だわ」

「それでこそ我らがリーダーってとこだな」

「オッシャー! アッキサイコー!!」

 逆に興奮気味に声を荒げる連合の生徒達。



 その興奮冷めやらぬ中央に立ち尽くすのは、威風堂々たる大野朝陽。


「流石だな朝陽、それでこそ俺らのリーダーだぜ」

 その肩を湯田が叩く。


「俺たちは志士ね。だったら志士の会ってネーミングもいいな」

 うんうんと頷く玉木。


「俺たちならどこにも負けない。東雲だろうが葛城だろうが、向かってくる奴はことごとく粉砕する。それが俺たちの生きる意味だ!」

 大野の咆哮が教室内に轟いた。




 東雲一派の怒涛の如き流れを、断ち切ったのは大野率いる連合、正式名称“志士の会”だった。


 彼らの目的はオークのてっぺんではない。自らの平和を守り、修羅の荒野を生き抜く盾としての意味。

 つまり防衛組織だ。


 そしてその意味は、学園の生徒たちに、ひとつの事実を知らしめるのだ。



 オークで名を馳せる猛者は、東雲斗馬や葛城誠、山崎孝之だけじゃない。

 大野朝陽という、強力な男もいるという事実。


 この瞬間、オーク戦線に志士の会の名が刻まれたのだ。

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