東雲派閥 明智光昭
夕刻~駅前、高架橋下~
パーッと、電車が走る音が耳に響く。その都度ガタンガタンと言う激しい音が耳をつんざく。
車両から小刻みに光が漏れて、暗闇を明るく染める。
それに照らされ、浮かび上がるのは数人の男達。
「ほら、逃がすか!」
「ザケンな、この裏切りものが!」
「黙れ、これが俺たちの選んだ道だ!」
「グオッ、なんて野郎だ!」
二手に分かれて激しい争いを演じていた。
「まさか、貴様が東雲の手下に成り下がるとはな」
フェンスに背をもたれ掛ける、茶髪の男が悔しげに言い放った。
既に身体中ボロボロで、闘う気力もないようだ。
「生きるって意味はそう言うことなんだ。自分が無力と感じれば、強い勢力に身を委ねるのも生きる意味。……違うか?」
暗闇からひとりの男が姿を現した。
それは明智光昭だ。
数分前明智は仲間を率いて、茶髪達と争いを繰り広げていたのだ。
「欺瞞だな。自らの非力を誤魔化して、言い訳してるに過ぎん」
「欺瞞だっていいさ。俺は東雲に負けた、だから奴について行くのみ」
「あいつの行き方を認めるってことか? あれ程忌み嫌い、反目していた貴様が?」
この茶髪の男は出身中学こそ違えど、かつては明智と思想を共にしていた男だ。
「あいつは怖い男だよ。正直ビビッて逃げ出したい思いだ」
「だったらなんで?」
「見たいのさ、あいつが見てる光景の先に、どんな光景が広がっているか? その為に俺は、奴と行動を共にする覚悟を決めたんだ」
既に明智は、東雲の魅力に引き込まれつつあった。
東雲の存在自体を認める訳ではないが、今後、東雲がどんな行動をするのか見てみたい。……そんな想いが、彼を駆り立てていた。
「腐った理屈だなぁ! だったら上等、排除してやるだけだ!」
興奮気味に飛び出す茶髪。
身を低くして右の拳を繰り出す。
「そんな傷だらけの男に、負けられるか!」
それを左腕で打ち払う明智。
「くそっ!」
茶髪が左のストレートを突き出した。
「なんの!」
それを左に回避する明智。
すかさず右蹴りを、茶髪の太ももに叩き込んだ。
「ちっ?」
よろよろと仰け反る茶髪。
「悪いが、俺達の野望に礎に、なってもらうぞ!」
その顔面を、明智の拳が貫いた。
一瞬の沈黙。
ガタンガタンと、高架橋の上を電車が走って行く。
「勘弁しろや」
ボソリと呟く明智。
その眼前で、茶髪が無言で崩れ落ちた。
空は黄砂の影響で、澱んだ灰色に広がっていた。
街並みの光を反射して、うっすらと広大に。
オーク学園の狂った流れは動き出した。
男たちの狂気と絶望を飲み込んで、ただ静かに確実に。




