表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/99

東雲派閥 森竜丸



 放課後~パーラー・ユニオン~



 店内は激しいBGMと、ジャラジャラとした音響で包まれている。


 仄暗ほのぐらい世界に、煙草の煙がいくつも棚引いていた。



「オッシャー、リーチ目確定。後はここから連チャンしてくれりゃ御の字だ」

 ヘラヘラと、煙草の煙を吐き出し、ガンガンと筐体きょうたいを叩く男がいる。


 オークの制服で身を包んだ学生らしいが、いぶかしがる辺りの客の反応などお構いなしだ。


 男の名は伊達だて。オーク学園2年生。


「おいおい伊達、あまり騒ぐと店員に追い出されるぞ」


 その様子に、隣の席ににいる仲間と思しき男が言い放つ。


「ははは、そう言うなって、これで一機逆転するからよ」

 しかし伊達は気にする素振りも見せない。黙々とスロットルのボタンを押すだけだ。



 その後方から、悠然と近づくひとつの影があった。


「はん? ウチの生徒だな」

 その姿をチラリと見つめる伊達の仲間。


 歩んでくるのは金髪の男。その肩に木刀を担いでいる。


「おめーは、1年生の……」

 それを愕然と見つめる仲間。ゆっくり立ち上がる。


「邪魔だ、クソ野郎!」

 金髪が躊躇いもせずに木刀を一閃いっかんさせた。


 それは仲間の首筋を確実に捉える。


 その身体が背中から崩れ落ちる。ガシャーンという響きと共に、筐体ガラスが砕け散った。



「なんだこのガキ共?」


「ケンカかよこんな場所で?」


 そのいきなりな修羅場に困惑して、多くの一般客が立ち上がる。

 距離を置いてその様子を窺う。


「俺の前に立ちはだかるから、そうなんだよ」

 現れた男は森竜丸だった。単身、伊達への強襲を仕掛けたようだ。


「てめー、俺が誰だか分かってんのか!」

 その状況下、伊達が怒りと共に立ち上がった。


「知ってるさ。オーク学園2年C組、伊達だろ? 知ってるからこそその首、貰い受けに来たんだからな」

 伊達に木刀を突きつけ、言い放つ森。


 飄々とした表情だが、内に秘めた想いは熱く燃えている。



「俺の首を貰い受ける? やって貰おうじゃねーか!」

 伊達が走り出した。


「ヘヘッ、そうこなくちゃな」

 木刀を走らせる森。


「くっ?」

 それを伊達が右下に回避する。


「アメーぞ。そんな棒っきれ、こんな狭い場所で振り回す馬鹿がどこにいる」

 そして懐に飛び込み、右のアッパーを放った。


 しかし森が浮かべる表情は笑み。伊達のアッパーを間髪で避ける。



「知ってるって。そんなこと!」

 そのまま間合いを詰めて、伊達の襟首を握り締める。


「こいつを喰らいな!」

 右膝を突き上げて、伊達の顎に付き込んだ。


「ゴハッ?」

 口元から血を流して、伊達は後方に仰け反る。



「ヘヘッ、その首、貰い受ける!」

 森はその拘束を振り解き、木刀の両端をがっしりと握り直す。

 そして中心部分で伊達の首筋を筐体に押し付けた。


 伊達は木刀で頚動脈を圧迫されて、声も出せない。


「ほら、死ねよ。死んじゃえよ!」

 益々木刀を押し込む森。


 筐体の放つ輝きがその表情を赤や青に染める。

 その吐き出し口からは、ジャラジャラジャラとコインが溢れてくる。



「なんの騒ぎだ!」

 そこに店員らしい衣服に身を包んだ男が走りこんできた。


「あっ。……坊ちゃん?」

 そして困惑したように立ち尽くす。

 ここは森の父親が経営する店だったのだ。


「学生の分際で、スロットなんかやってるから、お仕置きをしてたところよ。ウチの店は、学生の遊戯禁止だろ?」

 ヘラヘラと言い訳する森。ゆっくりと木刀を引き戻した。


伊達の意識は既に吹き飛んでいた。ズルズルと声もなく床に崩れ落ちる。


 それはあまりにも大胆で、理不尽な状況だった。


 それでも森の気迫に押されて、文句のひとつもいわない。

 多くの客が怪訝そうな表情をして、再び自分の遊戯台に戻っていく。



「さーてと、お客様方、大変ご迷惑をおかけしましたね。お詫びといっちゃなんだが、1ゲームフィーバー、サービスしときますんで、これからもパーラー・ユニオンを御ひいきに」

 森がペコリと頭を下げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ