東雲派閥 森竜丸
放課後~パーラー・ユニオン~
店内は激しいBGMと、ジャラジャラとした音響で包まれている。
仄暗い世界に、煙草の煙がいくつも棚引いていた。
「オッシャー、リーチ目確定。後はここから連チャンしてくれりゃ御の字だ」
ヘラヘラと、煙草の煙を吐き出し、ガンガンと筐体を叩く男がいる。
オークの制服で身を包んだ学生らしいが、訝しがる辺りの客の反応などお構いなしだ。
男の名は伊達。オーク学園2年生。
「おいおい伊達、あまり騒ぐと店員に追い出されるぞ」
その様子に、隣の席ににいる仲間と思しき男が言い放つ。
「ははは、そう言うなって、これで一機逆転するからよ」
しかし伊達は気にする素振りも見せない。黙々とスロットルのボタンを押すだけだ。
その後方から、悠然と近づくひとつの影があった。
「はん? ウチの生徒だな」
その姿をチラリと見つめる伊達の仲間。
歩んでくるのは金髪の男。その肩に木刀を担いでいる。
「おめーは、1年生の……」
それを愕然と見つめる仲間。ゆっくり立ち上がる。
「邪魔だ、クソ野郎!」
金髪が躊躇いもせずに木刀を一閃させた。
それは仲間の首筋を確実に捉える。
その身体が背中から崩れ落ちる。ガシャーンという響きと共に、筐体ガラスが砕け散った。
「なんだこのガキ共?」
「ケンカかよこんな場所で?」
そのいきなりな修羅場に困惑して、多くの一般客が立ち上がる。
距離を置いてその様子を窺う。
「俺の前に立ちはだかるから、そうなんだよ」
現れた男は森竜丸だった。単身、伊達への強襲を仕掛けたようだ。
「てめー、俺が誰だか分かってんのか!」
その状況下、伊達が怒りと共に立ち上がった。
「知ってるさ。オーク学園2年C組、伊達だろ? 知ってるからこそその首、貰い受けに来たんだからな」
伊達に木刀を突きつけ、言い放つ森。
飄々とした表情だが、内に秘めた想いは熱く燃えている。
「俺の首を貰い受ける? やって貰おうじゃねーか!」
伊達が走り出した。
「ヘヘッ、そうこなくちゃな」
木刀を走らせる森。
「くっ?」
それを伊達が右下に回避する。
「アメーぞ。そんな棒っきれ、こんな狭い場所で振り回す馬鹿がどこにいる」
そして懐に飛び込み、右のアッパーを放った。
しかし森が浮かべる表情は笑み。伊達のアッパーを間髪で避ける。
「知ってるって。そんなこと!」
そのまま間合いを詰めて、伊達の襟首を握り締める。
「こいつを喰らいな!」
右膝を突き上げて、伊達の顎に付き込んだ。
「ゴハッ?」
口元から血を流して、伊達は後方に仰け反る。
「ヘヘッ、その首、貰い受ける!」
森はその拘束を振り解き、木刀の両端をがっしりと握り直す。
そして中心部分で伊達の首筋を筐体に押し付けた。
伊達は木刀で頚動脈を圧迫されて、声も出せない。
「ほら、死ねよ。死んじゃえよ!」
益々木刀を押し込む森。
筐体の放つ輝きがその表情を赤や青に染める。
その吐き出し口からは、ジャラジャラジャラとコインが溢れてくる。
「なんの騒ぎだ!」
そこに店員らしい衣服に身を包んだ男が走りこんできた。
「あっ。……坊ちゃん?」
そして困惑したように立ち尽くす。
ここは森の父親が経営する店だったのだ。
「学生の分際で、スロットなんかやってるから、お仕置きをしてたところよ。ウチの店は、学生の遊戯禁止だろ?」
ヘラヘラと言い訳する森。ゆっくりと木刀を引き戻した。
伊達の意識は既に吹き飛んでいた。ズルズルと声もなく床に崩れ落ちる。
それはあまりにも大胆で、理不尽な状況だった。
それでも森の気迫に押されて、文句のひとつもいわない。
多くの客が怪訝そうな表情をして、再び自分の遊戯台に戻っていく。
「さーてと、お客様方、大変ご迷惑をおかけしましたね。お詫びといっちゃなんだが、1ゲームフィーバー、サービスしときますんで、これからもパーラー・ユニオンを御ひいきに」
森がペコリと頭を下げた。




