君に語る、君は紡ぐ、君が歩む
移植施術を終え、彼女は悲壮と共に歩む、擦る足の後は悲しみを乗せ重く聞こえた
龍宮城の門を開け、一際目立つ巨大な竜に目をやる
勿論その龍我の視線も彼女に向いた
乙姫が動く、手をかざし、竜へ向ける
乙姫は海流を一局集中し、放つ
ぐんぐんと進む海流は竜目掛けて突き進む
一瞬だった、逢魔天使がいる場所よりやや上部を貫き、巨大な竜は行動不能になる
その刹那竜は走馬灯を見た、そして大きな悔いと共に生き絶えた
『クソッ、クソッ、折角裏切ったのに、折角私が、竜の頂点に立つために画策したというのに、乙姫にすら敵わぬというのか』
竜の体は、命が抜けると同時に引き裂け、散乱した
その中に、エルが見えた
エルを回収した、まだ目覚めなかった
医師によると少なくとも三日はかかるらしい
龍宮城に戻った乙姫は、暗い表情で歩む
涙を隠す、目を開け続け滲み出る涙を乾かす
けれども止まらない、少しづつ彼女の歩みが早くなっていく、誰かに見られるわけにはいかない、声を出したらすぐにバレてしまう、そう思い歩む、唇を噛み締め歩む
臣下に声をかけられても気づかなかった
部屋に戻り、泣いた
聞かれるわけにはいかない、毛布に顔を埋め、声を出さないように、顔が丸めた和紙のようにしわくちゃだ
勿論臣下達は気付いていた、たが気を遣い、それについて話すことは無かった
三日後、エルが目覚めた、一部始終を聞いた彼女もまた泣いた、ほんの少ししか会っていないが、友人が死んだのは初めてだった、今までも親しくなった者はいたが、皆病気や怪我をしても、己の力で治していた
たがらこそ、悲しんだ
エルはまた一人ぼっち、そんな彼女は声をかけられた
浦太郎だ、彼は怒りにより肉体の限界を超え動き続け、今日まで歩くことも立つこともできなかった
彼は乙姫からの伝言を話す
「龍宮城で暮らさないか」と
エルは困惑した、そもそも自分が今までの騒動の中心にいたのだ、故に彼女には罪悪感がつのっていた
乙姫曰く、ここなら守ってやれるという理由らしい
エルはますますわからなくなった、自分を守る前提で考えている、向こうが傷つくやもしれぬというのに
乙姫はレイを移植し、彼女の記憶を見ることができたのだ、そして逢魔天使の事情も、だからこそ彼女を迎え入れたかったのだ
エルはそのことを知ると、自分のやるべきことを見つけた、今まではただふらふらと放浪していただけであった、生きる理由がない、そして天使であるが故死ぬこともできない、これは恩返しだ、ここまで自分を思ってくれた者達への
エルは、決心した
彼女は天使エル、乙姫の家臣である




