魔工銃改良実験任務⑧
「すでに耳に入れているものもいるだろうが、このエリアに出たことのない魔物が出現した。
当初の任務であった魔工銃のデータはある程度集まったといえる。
そのためこれより魔工銃改良実験を切り上げることとする。」
マドグスは昨日の報告を受け、早朝に部隊を徴集していた。
「魔工銃隊はこのまま中央基地に戻ること、
警備隊はその護衛にまわる部隊と、引き続き今回の状況を調査する部隊に分かれることとする。中央基地に戻る部隊隊長はこのまま私が、調査部隊隊長には遊撃隊の者が部隊隊長を率いることとする。」
兵たちがざわつく。
「遊撃隊だって?」「誰が来るんだ?」
「やばい案件ってことか?」「どうなってるんだ?」
マドグスが咳ばらいをし続ける。
「そう構える必要はない。たまたま手の空いたものがいたから任務を依頼しただけだ」
「そーそーそんなビビりなさんな」
突然の聞きなれない声に全員が後ろを振り向く。
大柄の男がそこには立っていた。
男は全員の目線を受けながらゆっくりとマドグスに近づく。
ハーフアップにした茶髪が歩くたびに揺れる。
魔工銃隊も警備隊も男のために道を開ける。
「さてと、遊撃隊のロルフだ。初めての奴が多いだろうがよろしく頼む」
全員の前に立ち男は挨拶をした。
「ロルフってあの?」「おいおいまじかよ」
「なんでそんな大物がここに」「初めて見たぞ」
遊撃隊のロルフといえば謎の多い遊撃隊の中でも、その名を聞いたことが多いものが多い。
遊撃隊には他の部隊のように階級がないものの、ロルフが実質は隊長のような役割をしている。
戦闘能力が高いのはもちろんのこと、魔力も高く他国への遠征や魔王軍領地への偵察なども行うことから、誰よりも外の世界に詳しい男といわれている。
そんな男を入れる特殊任務なのか、もしくは遊撃隊のスカウトではないかと全員に緊張が走る。
「まー俺のことは知ってるやつが多いか!
つっても今回の任務は本当に手が空いてただけだから裏とかはねえぞ。
たまたま休暇のところにかわいい従弟が困ってるっての聞いただけだからな」
マドグスの肩を組もうとする。
「遊撃隊には隊長と同権利があるからです。動ける人材がいただけですから」
マドクスはそれを払いのけると淡々と続けた。
「この男はこんなですが、仕事はしますのでご安心を。
ではこれより分隊を伝える。各員指示に従うように」
ジャックスはロルフの調査隊に振り分けられることとなった。
アッシュは中央基地に戻るようで軽く手をあげ挨拶をする。
中央に戻るチームは魔工列車に向かっていった。
「さてと、残りが調査隊だな」
人が減り、開けた場所でロルフがメンバーの確認をする。
「改めてロルフ・リッヒだ。よろしく頼む」
「あ!リッヒって」
隊員の一人がハッとした声を出した。
ジャックスも言われて気が付いた。マドグスの名はマドグス・リッヒだった。
「そういうこと、本当に親戚ってだけよ。だから全員肩の力抜いてくれ」
ロルフは笑いながら全員を近くに集める。
「とはいっても、そんなに長くここにいれるわけじゃないからな。
とっとと魔物の侵入ルートの確認をしよう。可能であれば原因確定まで行きたいところだな」
笑いながらロルフは地図を広げる。
「地形に関しては俺より詳しいだろうから気になるところ教えてくれ」
「それならここが」
ジャックスは広げた地図の中のとある箇所を指さした。
昨日子供たちを助けた廃工場地だった。
「俺ら警備隊は定期的に基地の見回りをしているが、
以前来た時にはこの廃工場にはミングルが巣を作っていた。
が、昨日ここではミングルを見なかった。その手前のエリアには通常より多くのミングルがいた」
「何かに住処を追われたってことだな」
ロルフと目が合う。
「決まりだな。準備ができ次第向かうぞ」




