魔工銃改良実験任務⑦
ジャックスの父、ヴォイス・ヴァンダルはエーデルの歴史の中でも屈指の魔工銃の名手であった。
第7基地を守る軍のトップの座についていた。
魔王軍の大規模侵略前まではエーデル国は砂漠の中に12の基地があり、
中心に中央基地を構えた国家であった。
その中でも第7基地は隣にある第8基地と共に軍の教育機関が多い基地であった。
ヴォイスは魔工銃の扱いがエーデル国一の天才といわれており、実技だけではなく誰よりも魔工銃のことを知っている人物だとされていた。
母親のミネ・ヴァンダルはそんな父親に軍から嫁入りを命じられたソチ族の女性であった。
ソチ族とは別大陸にある魔法が強い国に生まれる一族であり、電気を体にまとい身体能力を向上させることができる。
魔王軍の侵略にあり、各国に散り散りになり
奴隷として扱われていたところをエーデル国の遊撃隊に保護された一人であった。
能力を買われ、ヴォイスの妻となったが
二人の仲は良く、周りからもおしどり夫婦といわれていた。
そこに生まれたのがジャックスであった
ソチ族の特徴である金髪をもち、エーデル民の特徴である碧眼を持った子供であった。
魔力が高く身体能力も高く知能も高いことから
幼いころから、父親や部下の監視のもと任務や訓練への参加が認められていた。
魔工銃の仕組みを父親に習い、母親に魔力コントロールを教わる穏やかな幼少期を過ごした。
7つ下の妹モネア・ヴァンダルが生まれる。
その3日後に魔王軍の侵略が起こる。
当時ジャックスは7歳であった。
両親ともに魔物との戦いで殉職。
その後、叔父のダルシム博士のもとに引き取られる。
当時、魔力開発基地が破壊されたことによりエーデル国は深刻な魔力不足を抱えていた。
また、軍の教育基地の破壊により武力不足ともなっていた。
元々砂漠地域にあった国であることに加え、魔王軍の侵略により魔物が増えてしまったことから
他国から助けを得ることが難しい厳しい環境となってしまった。
ダルシム博士は魔力持ちから魔力を抽出し、保管する技術を開発した。
魔力研究により、魔力をエネルギーに変換できる設備ができ
魔力持ちたちは国のために魔力を提供するようになった。
魔力の高かったジャックスは初期から研究に協力することとなったが
初期の研究時は痛みを伴うことも多く現在のような摘出装置が出来上がるまでには死亡者も確認されている。
研究でボロボロになりながらも、父親の遺志を継いで軍学校に通ったジャックスだったが
成績は良いものの、高い魔力に魔工銃は耐えれず破壊してしまう。
父親のような軍人になることを期待された分、周囲の落胆は大きかった。
魔工銃での戦いがエーデル国では一般的である中、ジャックスは剣での戦闘を余儀なくされた。
どんなに優れた結果を納めても、エーデル国では通用しない野蛮な戦い方と評価されるしかなかった。
軍の中でも妬みにあることも多く、信頼できる仲間もいない時代を過ごした。
国の情勢も、魔力持ちはエネルギーになることから当時は魔力持ちの誘拐なども多かった
モネアにはジャックスほどの高い魔力は引き継がれていなかったものの、
妹の安全を考え、中央基地から比較的情勢が落ち着いている第2基地へ移動し
そのまま警備隊として生活している。
「周りからはヴァンダル隊長の子供なのに魔工銃は使えない
ただのでかい魔力持ちなだけなのに親の名前だけで
警備隊に所属してるってのが、俺の評価なわけ」
ジャックスは最後の一口を口に入れる。
話をしているうちにパスタはすっかり冷めてしまったようだ。
「聞いてたより悲惨だね
研究のこととか周りに言わないの?
ダルシム博士のおかげで今のエーデル国はエネルギーの供給ができているようなもんだろ」
アッシュは一通り聞くと最後のパスタを飲み込んで問う。
「まぁ、この国もひどい時よりは生活できるようになったけどよ・・・
その結果命を金に換えるやつも生んじまったわけで」
ジャックスは酒を追加する。
きっと明日は今日の件を踏まえ朝から早いだろうに止めれそうにない。
魔力をエネルギーに変えることができたため、エーデル国は再び夜まで明かりがつく国に再建できてきたといえる。
当時と違い、魔力抽出の安全性も上がった。
が、非合法に抽出することで懐を潤す輩も出てきている。
他国からのアクセスは未だ悪いものの、魔力持ちはエーデル国にいけば自身の魔力を売ることで大金を得れると信じて他国から一攫千金を目指す移民も増えてきた。
今や、この国は金と同じくらい魔力が価値があるといわれている。
魔力というものは充分な休息と、魔素を取り組むことで回復するものの
魔王軍によって荒らされた台地では魔素がすくないことから、他国よりも魔力回復が遅い
その中で無理して魔力を売ることによって命を落とすものもいるのが現状だ。
自分と叔父の研究が不必要だったとは思わない。
だが、結果として正しかったものかも自信がなかった。
父親と母親の守りたかったエーデル国はこんな姿ではなかったはずだと
どこかで疑問を抱いてしまう。
「妹さんは10歳になるんだよね、このことは?」
「今は、第2基地の南区で孤児院に世話になってる。俺よりも魔力少ねぇから
普通の子供たちと一緒に暮らしてる。今話したことは知らない」
「・・・いつかははなすの?」
アッシュの問いかけにジャックスの碧眼が揺れる。
「はなす、かもしれないな。けど、俺みたいに軍には入ってほしくねぇな」
ここ最近ジャックスを悩ましている問題であった。
父親の血なのか、モネアは小さいころから頭が良く魔工学が得意であった。
しかるべき機関に入れば彼女の才能は花開くかもしれない。
同時にそれが人を傷つけることになるかもしれないと思ってしまう自分もいる。
モネアが8歳のころ書いてくれた魔工銃の設計図を見ると
魔力エネルギーを効率よく使用できるつくりとなっていた。
当時は天才だと喜んだが、使用者の魔力切れのリスクを指摘すると
「知ってるよ?だから使い捨ての武器なんだ」
と無邪気に笑ったのだった。
まだ道徳も育っていない子供ゆえの無邪気な発言だったのかもしれない。
だが、賢いがゆえに効率を求めてしまうのではいか
誤った道を選んでしまうのではないかと不安を思えた出来事であった。
「ほら、軍って野郎が多いじゃねぇか。
父親のことを知って近づくやつもいるかもしれねぇしな」
そこまで妹のことを話す必要はないと思い、明るい声でごまかす。
「何?かわいいの?今度会いに行ってみようかな」
アッシュも空気を読んだのかそれに乗っかる。
「お前みたいなのに絡まれたくないから第2基地にいるんだからやめろ」
二人は食べ終わると、店の外に向かう。
「さ~てと、明日からはまた色々動きありそうだね
そんじゃ明日も頼むよ」
「おぅ、お疲れ」
そういって二人は帰路についた。




