第5基地訓練②
列車の外の光に目を細める。
初めて降り立った第5基地は砂漠が真っ先に目に入ってきた。
かろうじて建物の形跡はあるものの、多くは朽ちている。
基地の城壁が壊れ、砂漠が入りこんでいるようだった。
ロルフが比較的形が残っている建物へ歩いていく。
ジャックスもそれに続いた。
「こんな感じになってんすね」
風に舞う砂を手でよけながら進む。
「ここは結構好きな街並みだったんだがな・・・
壁が壊れてからは・・・ま、厳しくなっちまったな」
ロルフは風に揺れる前髪を押さえ目を細め、ジャックを建物へ手招く。
建物内はテーブルや機材がおいてあり、簡易的な会議室のようになっていた。
「そいつが言ってたやつ?」
中にいた赤髪の少女が飴をなめながらこちらを指さした。
小柄なわりに圧を感じる。
品定めをするかのようにじっとこちらを見てくる。
「そ、さっそく連れてきたってとこ。ヴァンはまだ来てないか」
「しらない。メルしかいなかったんだもん。ってか急に呼びつけるのいい加減にしてほしんだけど」
悪い悪いとロルフはなだめながら荷物を片付け始め、奥の部屋に行ってしまった。
「・・・立ってないで座れば?」
メルと名乗る少女に言われ、席に着く。
するとメルは身を乗り出して顔を近づけてきた。
「え?あんた、がっつりエーデル人じゃん!うちに純エーデル人来るの珍しっ!」
キャッキャッと楽しそうに笑う。
碧眼はエーデル人の特徴でもある。
そういえば遊撃隊には他国の人材が多いと聞く。
目の前のメルと名乗る少女は金色の瞳の色から他国の人間なのだろう。
(・・・人間、か?)
少し独特の魔力がメルからは感じ取れる。
「エーデル人のくせに勘が鋭いじゃん」
ジャックスの目線から何か感じ取ったのか、メルはニヤリと笑った。
飴をバキっと音を立て嚙み砕くと、勢いよくジャンプした。
空中でふわっと浮いたかと思うと、メルの背中には小さい羽が生えていた。
異種の存在を目にし、ジャックスは瞬時に刀に手を伸ばした。
「はやっ!うける」
とメルはくすくす笑っている。瞳が怪しく光り、それを見たジャックスは息を止め神経を集中させる。
「こら、何ビビらせてんだ」
緊張を緩めたのはロルフの声だった。
手に持っていた丸めた書類でメルの頭を軽くたたく。
「え~だってあまりにも坊ちゃんって感じで、いじめたくなっちゃった~」
メルは残念そうな顔をし、席へと戻った。
「わりぃな、こいつはヴァンパイア系の血が入っててな。すぐふざけたがるんだ」
ロルフは書類を広げる。
「あ、いやこっちこそ、すいません」
仮にも部隊の先輩になるかもしれない人に刀を向けそうになったことを詫びる。
「基地にいると外の者を見ることも少ないから気になるだろうけど・・・
うちの部隊はこういうのばっかだから慣れてくれ」
ガハハと豪快に笑い広げた書類をジャックスが見やすいように反転させた。どうやら近辺の地図のようだ。
「さて、お前さんにやってもらいたいことだが、魔物の撃退をしてもらう。
ここが俺たちのいる拠点だ。んで、こっちの方向に最近ムカデ系の魔物が住み着いててな。
お前さんにはそれの退治をしてもらう。
やばそうなら助けはするが、お前さんひとりでどこまでやれるかを見たい」
地図と魔物の記録を受け取る。
「ま、今日は一旦しっかり休んでおくように。
2階が仮眠室になってるからしっかり休んで備えろよ」
ロルフが後ろの階段を指さす。
了解と返事をし、荷物を上に運ぶことにした。
「こっちね」
メルがパタパタと羽を動かし上に上がっていく。
どうやら案内をしてくれるようだ。
「この部屋なら使えると思う。ちょっと窓は壊れてるのはごめんだけど
寝るだけなら何とかなるでしょ?」
案内された部屋は窓以外は比較的綺麗な状態であった。
「一応木材でふさいであるけど、夜寒かったら追加で自分でふさいでもいいし
近くにいるムル捕まえて部屋に置いとくと暖かいかも」
ハイと渡されたランタン。
ムルというのは害のない小さい生き物で、ランタンにいれ暖房具にすることがあると聞いたことがある。
まぁ自分でこの辺はなんとかしろということだろう。
「ありがとうございます。・・・さっきは失礼しました」
ジャックスの言葉にメルは一瞬動きを止めクスクスと笑い出した。
「マジで真面目じゃん!いいよいいよメルが驚かせちゃったし
ってかこの部隊敬語もいらないよ!ぶっちゃけ中と違ってうちら自由にやってるから」
中というのは基地のことだろう。
「それより隊長が、あ、一応みんなあいつのこと隊長って呼ぶんだけどさ
隊長が面白いのがいるって言ってたからめっちゃ気になってたんだよね」
ジャックスの周りをくるくる回る。
「結構魔力もあるし、戦闘スコアもいいし、あんた面白そうじゃん
楽しみにしてるからね~明日死なないように頑張ってね」
そういってメルはバイバーイと階段を下りて行った。
「死なないように、ね。」
不穏な言葉に少し長めのため息をついた。
「おし、準備すっか」
いろいろ不安はあるが明日の任務に備え準備をすることにしたジャックスだった。




