穏やかな日常⑤
「よ!こないだはありがとさん」
ロルフが軽く手をあげる。
ジャックスも会釈で返す。
「ご苦労。まずはかけてくれ」
警備隊全隊長、ベルント・ブラントの合図でジャックスも席に着く。
ーなんかしたか?俺。
「ま、そんな緊張するなって」
ジャックスの怪訝そうな顔を見ながらロルフは煙草に火をつける。
「ここは禁煙ですが・・・。はぁ・・・いいでしょう。本題に入りましょう。」
ベルントはジャックスをまっすぐ見つめる。
「ジャックス・ヴァンダルを遊撃隊に所属させたいとのお話ですね」
「・・・は?」
斜め上の展開に思わず声が漏れた。
「そうだ、どう考えてもこいつは警備隊でも魔工銃隊でもなくウチ向けだろ。」
「彼は警備隊が適性であると判断されここにいます。」
「判断ね・・・。」
「彼の戦闘スコアは開示されています。そちらの認識不足では?」
「そうだな情報は開示されてるな、本当に丁寧な程にな?訓練内容もすべてな?」
「・・・・」
「なんでアレを受けさせていねぇんだよってことよ」
「必要ないと判断されたか「受けさせなかったの間違いだろ」
ベルントの言葉をロルフがさえぎった。
二人とも無言で互いを見つめる。
沈黙を破ったのはベルントだった。
「・・・1回の任務だけで決めるのいかがなものかと」
「俺が判断した、それ以上の根拠がいるか?」
ベルントはため息をつき軽くこめかみを押さえた。
ジャックスは動揺しつつも、二人の会話を頭で整理しながら聞いていた。
ー俺が遊撃隊向け?受けさせていない訓練?
ベルント隊長、動揺してるのか?何か隠しているのか?
二人の視線を感じ顔をあげると、複雑そうな顔のベルントとすっきり顔をしたロルフがこちらを見ていた。
どうやら話はついたようだ。
「おし、それじゃレンタルってことでこいつ預かるとするか。いいな?」
「え、それって?」
「はぁ・・・こちらが何を言っても無駄でしょう。必要な時には呼びつけますからね」
「えっと?」
「OKOKそれでいい。それじゃ行くぞ」
「は?あんたなにいって」
「15分後にロビーに来い、任務道具忘れるなよ」
「待てって」
ジャックスをおいてロルフは扉を出て行ってしまった。
「ジャックス、詳細は後程伝達するがしばらくは彼の下で任務にあたるように。
こちらから指示が出るまでは一時的に彼を上官とするように」
「はぁ!?」
いろいろ言いたいことがあったジャックスだったが
「急げ、彼は待っててはくれないぞ」と言われ、言葉を飲み込み廊下へ飛び出していったのであった。
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15分後。
ロビーに降りると警備隊に囲まれているロルフがいた。
ジャックスに気づくと手をあげた。それに合わせ皆が場所をあける。
「お、来たな。そんじゃ行くぞ」
「なぁいったいどういうことなんだよ。」
歩きながら話を聞く。
警備隊のメンバーからもどうした?といった視線が届くが「また今後」とジャスチャーをしながら外に向かう。
「お前さん、第5基地訓練ってやったことないんだよな?」
「え?あぁ、そうっすね、俺には不要って言われたんで」
「誰に言われたそれ」
「普通に上官っす」
施設から出たところでロルフが少し声を小さくする。
「ダルシム博士はそれについてなんも言わなかったのか?」
「警備隊にしかなれないお前には必要ないっていわれましたけど・・・」
ジャックスの回答にロルフはそうかとだ返し一瞬何か思考するそぶりが見えた。
が、すぐに飄々とした態度に戻った。
「ま、博士は必要ないことはしない人だもんな」
魔工列車の窓口に向かう。どうやら本当にこのままどこかに向かうようだ。
おそらく話の流れ的に第5基地へ向かうのだろう。
「あの人は俺のこと期待外れだと思っていますから」
つい口から言葉が漏れた。
ロルフは怪訝な顔を向けたが、ハッとした表情になった。
「あ~違う違う。そういうことじゃなくてだな~
ん~・・・期待どうこうの話はよく知らんが、調べる必要がないってことだろ」
何が違うのかわからず今度はジャックスが怪訝な顔をした。
「お前さんの出生やらなんやら見せてもらったが、博士はお前さんのこと知り尽くしてるんだろ?
いまさらこの訓練しても結果はわかりきってるってことだろ」
言ってることがわかるようなわからないような、飲み込めない表情のジャックスをみてロルフはフッと笑った。
「まぁ、そこを含めお楽しみってことで」
列車の手続きが済んだようでロルフが行くぞと列車に乗り込み、ジャックスもそれに続いた。




