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Heaven'sWrath  作者: ナベ
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穏やかな日常④

 扉が開き、自室のベッドに倒れこむ。

 ここは研究所にあるジャックスの部屋だ。

 といっても寝るためのベッドと任務用の道具しかない殺風景な部屋だ。


 ゆっくりと体を反転させる。

 痛みで思わず声が漏れる。


 任務の怪我なら慣れたものだが、魔力抽出の痛みは何度やっても痛みを感じる。

 骨折や切り傷などとは違い体の中から焼かれるような痛み。

 そして極度の疲労感。


 ーあぁ、ダメだ寝ちまう。

 

 抵抗もむなしく体は動かず、夢の中へ落ちていく。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「お父さん!見て!これできるようになったんだよ!!」

 「おぉ!!すごいじゃないか!!昨日より大きな雷だな!!」

 「えへへ、お母さんが教えてくれたんだ」

 「うふふ、もう少しでお兄ちゃんになるんだもんね」

 「そうだよ!お兄ちゃんだからね!守れるように強くなるんだ!」

 「偉いな!かっこいいお兄ちゃんだな」


 両親が幼いころの自分を抱きしめてくれる。

 それを少し遠くで見つめる。


 ーあぁ、またか。


 雨が降り始めてあたりが暗くなる。


 「こっちだ!」「あそこはもうだめだ!!」「はやく!!」

 たくさんの人の声がする。


 顔を向けると火の手が上がっている基地が見える。


 ーこれは、夢だ。


 そう夢だとわかっている。けど、走れずにはいられない。

 逃げる人々と逆方向へ走る。

 その先に母親が生まれてばかりの妹を自分に預けている姿が見える。

 

 そして母親は立ち上がり前線へと走り出す。

 背中に手を伸ばすと炎に母親が包まれた。


 -おかあっ・・・!!


 炎に包まれ母親が悲鳴をあげこちらに助けを求める。

 

 ー違う、これは夢だ。あの時俺は走り出す母さんの背中しか見えてない。


 首を振って反対方向へ走り出す。早く覚めろと祈りながら。


 走った先に孤児院が見えた。

 花を摘んでいるモネアの背中が見えほっとする。


 声をかけようとした時、ロガーが上から降ってきてモネアに襲い掛かる。

 走って近づこうとするが距離が一向に縮まらない。

 その間にもモネアの体が食い荒らされていく。

 必死に手を伸ばすが、どんどん遠ざかって・・・


 「あぁぁぁぁ!!!!」


 声をあげ飛び起きる。

 

 「はぁっ・・・はぁっ・・・」


 息を整えながら状況を確認する。

 どうやらあのまま寝てしまったみたいだ。


 どうやら外は雨が降っているようだ。


 雨の天気は嫌いだ。

 どうしてもあの日を思い出す。


 ふらふらと起き上がると最低限の荷物を持って夜の街へ向かう。

 こういう日は誰かの体温のそばで眠りたい。


 酒場に顔を出すと何人かが声をかけてくる。

 適当に中身のない会話をし、馴染みの知り合いの家へ転がり込んだのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ジャックス~昨日どうだったんだよ」

 スケジュールボードを確認しようとしていると同僚が後ろから肩を組んできた。


 「あ~・・・酔ってて覚えてねぇんだよな」 

 ジャックスは後ろの奴らにも手をあげ挨拶をしながら答えた。


 「か~!!でたでた!たまにフラッと来るくせに絶対持って帰るんだもんな」

 「俺昨日こそイケると思ってたのによ~」「いや、お前は眼中にないだろ」

 

 ー朝から楽しそうだな、まったく。

 おもわず笑みがこぼれる。

 

 「何笑ってんだよ!・・・やっぱ、その、よかったのか?」


 別の同僚がそいつの頭を殴る。


 「え~気になるじゃねぇか!」「お前おわってるわ」「でもわかる、でかいもんな」

 「それは同意だわ」「それならあのショートヘアの子も」「あー!しかもかわいいしな」

  

 バカみたいな会話を聞き笑いながら歩みを進め、ボードに目を向ける。


 『ジャックス、待機・面談予定有り』


 見慣れない言葉に怪訝な顔をしていると遠くから別の同僚が自分を呼ぶ声がした。


 「ジャックス!指令室までこいだってさ!」

 「了解!ほら、お前らもくだらねぇこと言ってないで支度しろよ」


 まだ騒いでる同僚に声をかけ指令室へ向かおうとした。


 「待て待て!!で、実際どうだったんだよ~」

 「ガチでおぼてねぇって!・・・あ、でも朝飯出してくれてうまかったぞ」

 「女神じゃねぇか!!」

 

 よっぽどこいつは昨日の子が気になるらしい。

 

 「一人暮らしはさみしいって言ってたからさっさと今日の任務片して、声かけて来いよ」

 ーこれはガチだ。今朝聞いたからガチだ。


 「おっしゃ!!やる気しかねぇ!!行くぞ!!」

 走り出した同僚に、他の奴らもやれやれとついていく。


 「気を付けろよ。ヴェーオルの加護を」

 背中に声をかけ見送る。

 ジャックスも指令室へと駆け出した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 「ジャックス・ヴァンダルです。」

 ノックをし声をかける。


 ドアが開き、部屋には二人の姿か見えた。


 1人は警備隊全隊長ベルント・ブラント。

 ジャックスの上司である。


 もう一人は先の任務で一緒になった、ロルフ・リッヒであった。

 

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