穏やかな日常②
「それで最近はどうですか?」
「特に変わりはないかな」
「・・・痛い思いはしていませんか?」
シスターと目が合う。
まっすぐ見つめてくる。
「・・・ん、大丈夫」
ここに来た当初は叔父の研究の手伝いも多く、痛みで眠れないこともあった。
軍学校時代も人で不足で戦場に駆り出され怪我が多かった。
警備隊になってからは怪我が治るまでここに来ることが減った。
ーまぁ、ばれてるんだろうけどな。
「そういや今回の任務で魔工銃隊の奴と組んだんだ」
シスターは何か言いたげだったが、そのまま話を聞く姿勢になってくれた。
「正直魔工銃隊の連中はいけ好かない奴ばっかだと思ってたけど、
今回の奴はやりやすい奴だった」
「え?君がそんなこと言うの珍しいですね。
どんな子だったんですか?」
よかった小言を言われずにすみそうだ。
「俺のこと知ってても普通にしてくれてさ、ただ調子がいい奴なんだよな・・・」
アッシュのこと、任務のことを話した。
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「じゃあロガーは無事討伐できたんですね」
シスターはぱちぱちと手をたたく。
いつの間にか増えたギャラリーの子供達もお伽話でも聞いてたかのように目を輝かせている。
「まぁ俺らがっていうより、ロルフさんがいたから何とかなったんだけどな」
自身の手のひらを見つめ目をつぶる。
浮かぶのはあの時のロルフの姿。
ー遠かった。
実際ロルフがいなかったらロガーは倒せなかっただろう。
大型魔物への対処は自分にはまだできなかった。
「ガキーン!!」「どりゃー!!」
子供たちの声で目を開く。
話を聞いた子供たちが棒などを持って討伐ごっこを始めたようだ。
「そうだとしても、守ってくれたのは間違いないですよ?みんなのヒーローですね」
シスターはいつものようにフフっと笑う。
まいったなとジャックスは頬をかいた。なんだか慰められてしまったようだ。
「そっか、ロルフ君も頑張っているんだね」
「え、シスター知り合い?」
おもわず食いつく。
「えぇ、昔一緒に働いていたことがあってね」
意外な接点であった。
「昔からすごい人だったけど、今や遊撃隊所属だもんね
なんだかすごく遠い人になっちゃったな」
「え?待ってその感じ、なんかあった感じ?」
「さぁ~どうでしょう?
さぁ!皆さんそろそろ寝る時間ですよ!」
シスターは微笑むと手をパンっと鳴らし遊んでいる子供たちに声をかけた。
「え、ちょ、気になるじゃん」
「はーい、もう寝る時間でーす」
就寝の準備をするシスターにジャックスは渋々従った。
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「これで全部かーー?」
シーツを干しながら声をかけるが返事はない。
「んーーーーー?」
周りを見渡す。影が走っていくのが見えた。
「モネアー?あれー?どこだー?
・・・・なんちって!」
「キャー」
バッとめくって隠れてたモネアを抱きしめる。
モネアは嬉しそうにはしゃいでいる。
「もーー!なんでばれてるのー!」
「兄ちゃんだからな!お見通しなんだよー!」
二人で笑いながら近くのベンチに腰掛ける。
「お兄ちゃん!見てみてこれ作ったの!」
モネアが何か木箱のようなものを渡してくる。
「ん?なんだこれ」
手のひらサイズのそれをぐるぐる回してみる。箱のようだが、どこから開けるのかわからない。
「魔力を入れてみて!!」
首をかしげながら言われたように魔力を流し込んでみる。
すると木箱からカチッと音がし、箱が展開した。
中には何かキラキラしたものが入っていた。
「おぉ~!!すごいなこれ!?自分で作ったのか?
仕掛け箱なんて中々作れるもんじゃないぞ」
ここまで仕掛けがあるものはなかなか個人で作れるものではない。
モネアは本当に魔工技術が高い。
「えへへ。あのね、これね、モネアとお兄ちゃんの魔力に反応して開くようになってるの!
だから二人の秘密をここに隠せるんだよ!」
モネアが興奮気味に話す。
「お!じゃあモネアの失敗したお菓子もこの中に隠せるのか~?」
「もー!!最近は失敗してないもん!いじわるいわないでよ~!!」
つい可愛い妹を茶化してしまいたくなる。
「じゃなくて!これもあげるの!!」
入っていたキラキラしたものを目の前に突き出してきた。
モネアとしてはこっちが本命のプレゼントのようだ。
黄色の小さなガラス玉が付いているブレスレットだった。
「きれいだな。これも作ってくれたのか?」
モネアは頷きながら慣れた手つきで巻き付ける。我が妹ながら本当に手先が器用だなと思う。
「うん!ふたりの髪の色と同じ色にしたの!きれいでしょ!」
「・・・うん、すげえ綺麗だ。ありがとう」
笑うとそれ以上の笑みをモネアが返す。
ー笑ってきた顔は母さんに似てきた気がする。
「これは何に使えばいい?」
箱を宙に投げながら問いかける。
発明品をよく見せてくれるが渡してくる場合は何かしら使ってほしいことが多い。
「あのね・・・もし集めれればでいいんだけど
魔物の魔素が付いたものを入れてほしいの」
モネアの言葉に投げていた手が止まる。
「何に使うんだ?」
「危ないことじゃないよ!」
食い気味の返答に眉を顰める。
「いまね、ちょっと調べていることがあるの。でも、あってるかわかんなくて・・・」
モネアは落ちていた木の枝を拾い、足元に何か書き始めた。
「もしかしたら魔物を全部追い出せるかもしれなくて」
図を見るとおそらくこの国を表しているようだ。
その周りに何かドームのようなものをかいている。
「でも、そうだとしても、それって・・・」
モネアはぶつぶつ何か言っている。
頭がいい分、周りの人間を置いて行ってしまうのが悪い癖だ。
「モネア」
ジャックスの声にハッと顔をあげる。
「危ないことじゃないんだな?」
真剣な顔で見つめる。
「大丈夫。魔素の動き方を学びたいの。
でも、きっといいことではないかもしれないから
だからさっきの箱はお兄ちゃんとモネアしか開けれないようにしたの」
普段子供っぽいのにこういう時は大人と話している気分になる。
しばらく見つめあった後、折れたのはジャックスだった。
ふぅーーーっと息を吐き、頭をなでる。
「わかった。でも、俺が危ないと思ったものは持ってこないからな?」
「っ!うん!!ありがとうお兄ちゃん!!」
「わかったわかった、さてととっとと片付けちゃうぞ」
毎回折れるのは自分だなと思いつつ、残りの洗濯を干すために腰を上げた。




