穏やかな日常①
「久しぶりに一緒にご飯を食べた気がするわね」
シスターがふとつぶやいた。
「最近任務が多かったからな、なかなか寄れなくて」
「あら~?結構中央で遊んでるって聞きますけど?」
シスターの目線の先は遊んでいる子供たちのままだ。
「それ、だれ情報だよ」
フッと笑いながら木の実を割る。中に種が入っていてこの辺の子供達は大好きなカパオの実だ。
差し出すとシスターもひとつまみしパキっと乾いた音が響く。
「もっとここに帰ってきてもいいんですからね」
「何?すねてんの?」
「あ、そうやって女の人くどいてるんだぁ」
二人してクスクス笑う。
子供たちを見ると何か人形を持って遊んでいる。
あのくらいの年の子は何をやっても楽しそうだ。
「本当に家族だと思っていますよ」
シスターの真剣な声に目線を向ける。
シスターの目線は子供たちのままだ。
「君がどう思うと、思われようと、ここは君の家ですよ。これまでもこれからも」
ゆっくりうつむき、手の中のカパオの実を転がす。
この人はいつもこうだ。居場所になろうとしてくれる。
俺がここに来た時からずっと。
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「この子たちが・・・」
初めて孤児院に来た時も雨が降っていた。
「はじめまして。遠いところからよく来てくれましたね
ここでシスターをしています。レイアと申します」
しゃがんでくれたが俺は目線を合わせることはできなかった。
孤児院の中に入ると軍の大人と孤児院の大人が何かを話している。
礼拝堂の椅子に座る。女神像が礼拝堂には置いてあった。
モネアは手をつないだまま眠ってしまった。
「寒くはないですか?」
シスターの声に振り向くと、ブランケットとマグカップを持っていた。
首を振り平気と伝える。
シスターは少し困った顔をした。
「隣いいですか?」
この質問にはどう答えたらいいかわからず顔を女神像に向ける。
この人からは敵意は感じない。
シスターはわざとらしくよいしょっと声を出し隣に座った。
平気といったのにブランケットを渡してきた。
不満を察したのか寝ているモネアに渡すよう促された。
「せっかく入れてきたのでよかったらどうぞ?」
渡されたコップをとりあえず受け取る。中には温かいミルクが入っていた。
最近じゃミルクなんて軍の施設にいても見たことがない。
「実はここの大事な収入源なんです。裏庭にヤギがいましてね、みんなでお世話しているんですよ」
ジャックスはコップの中のミルクを見つめたまま動かない。
「今日は寒いのでこれもいれちゃいます」
蜂蜜が追加される。
温かいコップの中からは甘いにおいがする。
一口飲んでみる。
口いっぱいに甘くて優しい味が広がる。
「あ。でも礼拝堂での飲食は禁止なんでした」
シスターの言葉に思わず顔を向ける。
「内緒にしておきましょうね」
シスターがウインクをする。
「フフ、やっと目があいましたね」
ぽかんとしているジャックスにシスターは優しく微笑んだ。
「今日からここが君たちのおうちになります。
ここで守ることは・・・よく食べてよく遊んでよく寝ることです
守れそうですか?」
コクリと頷く。
これがシスターとの出会いであった。
そこから今に至るまでモネアの面倒を見てもらっている。




