魔工銃改良実験任務①
あの日のことはよく覚えている。昼か夜かもわからなくなるほどに暗い大雨だった。
大勢の人たちが走っていく中流れに逆らい母親を追いかけた。
「オレも一緒に行く!オレだって戦えるよ!」
必死に叫んだことを覚えている。その声で母親は振り返って抱きしめてくれたことも。
「ありがとう。あなたはこの子を守ってほしいの。私たちもすぐに行くから。
・・・ほら、お兄ちゃんでしょ?泣かないの。ね?大丈夫私の愛おしい子」
そう言ってキスしてくれたことも。その時に預かった妹の体温の温かさも。
大丈夫。ちゃんと覚えている。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おい!そろそろ時間だぞ!またあいつらに文句言われるぞ」
同じ隊の仲間に声を掛けられ、タバコの火を消し、おいていた荷物を背負う。
「せかしといてなんだけど、それもったいねえよ。いいのか?最近じゃ中々手に入らねえだろ」
同僚が煙草をうらやましそうに指さす。
「いいんだよ。どうせやめろって言われてるしな」
「はーー!妹ちゃん思いだな~!」
「そのくせに昨日もイケてる姉ちゃんと飲んでただろ!!」
同僚達に肩を組まれ、荷物が傾く。
「任務のついでに店の片づけ手伝ったらおごってくれただけだっつーの。
つーか重いって、半分持てよ」
嫌がる同僚に無理やり持たせる。中には魔工銃のパーツが入っている。
魔工銃とは魔物に対抗するために、ここで生きていくために必要不可欠なものだ。
「魔工銃の改良実験ねぇ…今まで以上の威力を出すってなるとやっぱり魔力の不安定さが課題だよな
魔工銃隊の奴らないものねだりだよな」
「やはり警備隊は魔工銃への知識が乏しい者ばかりだな」
言葉をさえぎってきたのは、魔工銃隊の隊員マドクス・リッヒだった。
今日の任務はマドクス率いる魔工銃隊7班とジャックスが所属する警備隊での魔工銃の改良実験をすることだ。
この国エーデルは砂漠に囲まれた魔工学が有名な国であった。
個々の能力に頼る魔法とは違い、だれでも魔物と戦うことができる魔工銃を唯一生産してる国である。
それゆえに、大陸果てにある魔王軍に目を付けられ、10年前魔物の大量侵略に襲われた。
居住地をいくつかの基地に分けた領地であったため、全滅は免れたがいくつかの基地が壊滅。
当時は大型魔工銃を使用し、魔王軍を退けた。
現在も各基地にて大型魔工銃を設置し、警戒をしている状態が続いている。
そういった歴史からも同じ軍でも警備隊よりも魔工銃隊の方がエリート扱いされやすい。
マドクスは冷ややかな目で続ける
「特にいくら魔力があっても小型の魔工銃すら破壊してしまうような野蛮な魔力持ちにはこの任務の尊さはやはり理解できないか。」
明らかに自分一人に向けた言葉であった。
目が合う前にかぶりを振る。
このマドクスという男は何かと絡んでくる男だ。面倒なことはごめんだ。
「フン。まぁいい、早く任務を終わらせるとしよう。さっさと第4基地基地へ運ぶぞ。
ヴェーオルのご加護を」
「ヴェーオルのご加護を」「ご加護を」
不満な声で同僚が国の守護神への祈りを告げた。
ジャングスもそれに続いた。




