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成人病への回帰~自己責任論に一石を~

作者: 橘 正巳

◇◇◇◇


「生活習慣病」という言葉があります。一昔前は「成人病」と呼ばれた病気で、高血圧や糖尿病がその典型でしょう。

 話の焦点がぼやけるので、ここでは敢えて糖尿病に絞っていきたいと思います。

 

 私はこの「生活習慣病」という呼び方、非常に差別的だと考えています。

 確かに、糖尿病は暴飲暴食といった悪い生活習慣が発症の要因です。ですが、これはあくまで要因の一つでしかない気がするのです。

 

 私は医師でも病理学者でもありません。ですから、これから述べることは単なる伝聞や、経験談からの憶測です。間違いがあれば、感想欄にご指摘をお願いします。

 

 糖尿病には2種類あって、「一型糖尿病」と「二型糖尿病」に分類されます。前者は生まれつきですが、後者は誰でもなり得ます。

 この「二型糖尿病」が持つ「誰でもなり得る」という特徴がミソで、加齢や暴飲暴食、運動不足などが起因となるというのが、我々の共通認識です。

 つまり、生活習慣に起因するのだから予防を啓発に努めようという運動で、「成人病」から「生活習慣病」に呼び方が変わったのです。


 結果から見ると、これは悪手だったのではないでしょうか?

「生活習慣が問題なのだから、自助努力で防げたはずだ」というのは、一見して、論理としては適っています。

 ですが、同じ生活習慣を送っていても、糖尿病になる人とならない人は確かに存在するのです。

 人並みの食生活で体系が普通でも罹患する人、大食漢の肥満でも健康体な人、これら2種類の人間は確実におられます。

 彼らの話をよくよく聞いてみると、親族に糖尿病患者が多かったり、その逆だったりするのです。


 つまり、結局のところ「二型糖尿病」は遺伝の要因が大きいのでしょう。今では遺伝に種々の要因が加わって発症するという説が一般的のようです。

 もちろん、遺伝は要因の一つに過ぎませんから、絶対の保証ではありません。糖尿病になりにくい家系の人も、過度に因子に晒され続ければ、罹患する確率は跳ね上がることでしょう。

 糖尿病になりやすい家系の人も、それこそ修行僧のような生活を送れば、発症を免れ得るのかもしません。

 ですが、両者に共通して、避けられない要因があります。


――加齢です。


 なりやすい人もそうでない人も、結局年齢に追い付かれ、罹患率を高めてしまいます。

 

 そもそもの話、生活習慣と名を変えた自己責任のせいにしていると、そうでない人を爪弾きにしてしまうのではないでしょうか?

 いえ、ひょっとしたら、そういう方は少数派なのかもしれません。先ほど散々持論を述べておきながら、本当のところは、糖尿病患者の大部分が生活習慣に起因しているのかもしれません。

 しかしながら、我々は民主主義社会に生きています。それは単に多数決という数の暴力が罷り通るのではなく、立憲政治で少数者の保護を図るものでもあります。

 図らずとも病気になってしまった人を見捨ててはいけません。


 それでは、明らかに生活習慣が原因で病気になった人はどう評価すればいいのでしょうか?

 結論から言うと、私はそういった人たちも責める気にはなれません。

 一度社会で働いた人には共感していただけると思いますが、我々は自らの意思で行動を決めることが儘ならないのが現実です。

 飲みたくもない酒を飲まされる、行きたくもない接待に付き合わされる、そんなこと日常茶飯事です。

 職場で受けたストレスのはけ口として、暴食に走ることもあるでしょう。健康のための運動なんて、仕事で疲れて不可能かもしれません。

 懸命に生きている人を、自己責任の一言で見放すのは乱暴にすぎます。


 広くあまねく人々に降りかかる災難の「成人病」。

 昔の人は正しいことを言っていたのです。


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