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 「あ、それ簡単にできますよ」とその担当者は言った。「システムの方は簡単ですし、実際の読み取りやらなんやらのハードに関しては、タブレットとラズベリーパイがあれば十分です。総額でも数万、10万はいかないといったところですね」


 しばらくして、また職人たちから不満が出た。


――社長、このリスト、メーカーがバラバラになってて探しづらいです。もっと見やすい順番になりませんかね?


 現在、システム上に表示される塗料リストは、フクが最初に作ったリスト順となっている。メーカー順などこだわらずに作成したものだから、確かにわかりづらい。

 ということで、フクは、前回の経験で顔見知りになった公益財団法人の担当者に電話をする。

「あ、それ簡単にできますよ」とその担当者は言った。「並び変えて入れなおすだけでしょ?お金を取るレベルの仕事じゃないですね」



 こうして、改良を加えながら、システムは一般販売されることとなった。

 このころ、2018年に経済産業省がガイドラインを発表したDXが、新型コロナウイルスへの対応の中で電子化の要請が増して、より広く取り上げられるようになり、世の中の一つの潮流となっていた。

フクの会社のシステムは、この中で発表されたため、塗料メーカーが興味を持ち、フクの扱いも少し良くなった。

 フクは、塗料メーカーが開催する各地のセミナーに呼ばれ、倉庫の改善とシステム導入による成果について話をするようになった。

 あちらこちらで話をしていると次第に客の反応に一定の傾向があることがわかってくる。

 業界の経験が長い年配の社長は、このシステムに何の反応も示さない。興味がないというより、何のことかわからないといった方が正解かもしれない。システムどころか、倉庫を綺麗にする効果についても思い至らず、この人は何の話をしているんだろう、といった顔をして壇上で話をするフクの顔を見つめることが多い。

 興味を持つのは若い経営者だ。倉庫をどうすれば綺麗になるのか、単管パイプをどう組めばいいのか、といったところから興味があるようで次々と質問がある。

 システムについても、自分がシステム改良の提案をすると受け入れてくれるのかといった質問まである。


 そんな中で不便を感じるのは、システムに関する商談をする時だ。

 5Sができるようになってから、フクの会社は着実に成長し、店舗事務所と倉庫を分離することができている。倉庫は以前の場所のまま、店舗は近隣の少し規模が大きな2市に一店舗ずつ。交通の便がいいのは店舗の方で、結果として、システムを見たいという客は、店舗を訪れ本業の客の中で説明を聞き、実際に倉庫を見たいと言われれば30分ほどかけて移動することとなる。


――これは本業の客にも、システムの客にも失礼かもしれないな


とフクは考えだす。律儀な男なのである。

 そんなこんなしていると、一つの店舗の隣のテナントが空いた。


――お、ここにシステム用の商談スペースを作れないかな?できれば、補助金を使って経費を抑えられないかな?

と考えたフクである。


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