6話:初めての街(1)
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アリスに連れてこられ慧と暮らし始めてからはや3日その間に俺と慧は自分がこれまでどうやって生きてきたのか家族はいるのか家のルールはなんてことを話し合い価値観のすり合わせを行ってきた。しかし今、俺は大きな問題に直面していた。
「服がない!!!」
そう、男物の服がないのである。慧曰く「男物の服? ああ、おじいちゃんが死んだときに粗方処理しましたので数着しかないですね」だそうだ。しかも、その数着は助けられたあの日に着ていたものを除いてーー小柄な俺でも着れるのがーー1着しかない。
「どうしよ……とりあえず慧言って買いに行くか……でもお金ないしな……」
ここらへんアリスがどうにかしてくれないかな……無理か。ああぁ〜5000兆円ほしい。
そういえば慧が今日街に買い物に行くって言ってたな。まあ買えなくてもついて行って街の地理だけでも覚えよう。
そう考えながら着替えていると、スタスタという足音が聞こえてきた。いつも通り襖が開かれる。
「永遠さん準備はできましたか? できましたね! さあ街へいきましょう!」
襖を開けて来たのは、何故かハイテンションな慧だった。……俺ならともかく初めていく訳でもない街にどうしてハイテンションになるのか不思議でならないがそこはおいておく。重要なのは慧がいつも着ているような和服? 袴? ではなく白いパーカーにジーンズというラフな格好であることである。お腹のあたりが少し膨らんでいるから小刀でも入れているのだろうか。
「あの、慧さん? その格好はなんです?」
「……ん? あははやだな〜私が洋服着ているのがそんなに違和感がありますか?」
ええとっても。
「私だって普通の女の子なんですよ。洋服の一着二着ぐらい持っていますよ」
「普通の女の子は和服の数よりも洋服のほうが多いと思います」
そして家族が蒸発しておじいさんに育てられてそのおじいさんがいなくなったりしないと思います。まあこんなこと言った暁には俺の首と胴体が泣き別れすることになるから言わないけど。
「ま、まあそんなことは置いといて早くいきましょう!」
慧はなぜか焦ったように言う。準備は終わっているから行くぶんには問題なんだけどな。でも、何に焦っているのか気になるし聞いてみるか。
「慧なんでそんなに急ごうとしてるの? 別に街は逃げないしゆっくり行こうよ」
「それじゃ間に合わないんです」
「間に合わないって何に?」
「それは……」
「何なの? はっきり言ってよ」
「そろそろ面倒事が舞い込んでくる時間なんですよ。私の家……七篠流の問題なんですけど、昔から七篠家当主が近くの暗がりの森から出てくる魔獣の駆除をしてるんですよ。で、その駆除の依頼が毎週日曜日にあるんですよ」
へえ〜 そりゃ初耳だ。魔獣ね……いいな〜畜生のくせに俺と違って能力を使えるし、能力のせいか頭もいい。俺も早く使えるようになりたいな。で、話の中で出てきたけど暗がりの森ってどこにあるんだろう? 聞いてみるか。
「ごめん。暗がりの森ってどこにあるの?」
「暗がりの森ですか。そうですね、ここから南西に少し行ったところにありますよ。……絶対に一人で行かないでくださいね。あなたは能力の剣術も使えないんですから。行きたいなら私と一緒にいきましょう」
……おおなんとも頼もしい。こんなに気遣ってくれる人なんて今までいなかったから優しさが身にしみる。こんな人が兄弟にいてくれたらな……話がそれたな。
「まあ、そんなに嫌なら俺も準備終わってるし行こうか」
「はい!」
そうして俺たちは慧の家を発った。
慧の家を出て5分ほど俺たちはのどかなーー整備されたーー田んぼ道? 機械が張り巡らせれてるけどほんとに田んぼかこれ?
「……ねぇ、慧これってたん……」
「田んぼですよ。誰がなんと言おうと、100年前の人が見てもそうは見えないと思うけど、これは田んぼです」
「…………」
……田んぼらしい。あぁ俺が持っていた田舎のイメージが崩れ去ってゆく。そうそう今の都市では見ない光景に一喜一憂しながらも歩いてゆく
「……ねぇ、慧街まであとどれくらい?」
「そうですね、5,6分歩いたんであと10分ぐら……い……」
「ん? 慧?」
慧の言葉が途切れる。その目の先には前からくる魔電スクーターが一つある。後ろのトランクからして郵便局の物のようだ。……しかし、こんなところに届け先があるのだろうか? 慧の家からここまで一本道で田んぼと誰も住んでなさそうな小屋ぐらいしかなかったけど。それとも慧の家に用でもあるのだろうか? ……あ、正解っぽい、慧がゴ◯ブ◯を5匹無理やりに詰めこんで煮詰めたコーヒーで流し込んだときの俺みたいな顔してるもん。
「……あの街のクソどもめ。スクーターが魔導エンジンぶっ飛ばないかしら……いやぶっ飛んだところで電子メールでくるから意味がないか……ここから逃げる? ……いや永遠もいるしだめですね」
……かなりやばいかもしれない。あまり良く聞こえないけど、慧がなんか怖いこと言ってる気がする。
この3日間でわかったことがある。慧は懐に入れた相手には優しくて面倒見が良いが敵には全くもって容赦がない。
「……慧? どうしたの?」
「い、いえなにもなんでもないですよ! 本当になんでもないですよ?」
どうしよう、その言い方は指摘した方がいいのかな? ……まあいいや。でも少しいたずらでもしておこう。
「ま、まあ件のスクーターの事は置いといて早くいきましょう」
「はい! ……あ」
……やっぱり慧は実力はあるのだが絡め手や口撃には弱いようだ。
「カマかけましたね! 最低ですよ!」
「かかったのはそっちじゃ……って、置いてかないで! やめて俺道わかんないから!」
ああぁぁぁあ全力で走らないで! 訓練している人と一般人は体力が違うんだから! そう心のなかで叫びながら走って追いかけるが、俺は驚いていた。なぜなら、景色がものすごい速度で移動しているのだから。
その速度に追いつけない俺は転けないため足の回転数を上げていくしかない。
「ヤバいヤバいヤバいヤバいぃぃぃぃ」
「え?」
いつの間にか慧のいた場所を通り過ぎている。……止まるためには! ……だんだんと回転数を下げるしかない! ……あ、行けそう……ようやく止まれる。
そう思った瞬間俺は石につまずいた。俺の頭が地面へ向かう。……俺のファーストキスは地面とだったか
「あぶない!」
そう慧が叫ぶと俺の関係は宙に浮く……おかしいな、俺には能力はないし慧の能力は違うし……まあ、助かったのなら良いや
「今の速度なんですか! 能力はないんじゃなかったんですか! どうして私を置いてくんですか!」
「……俺も知りたいけどさ、最後のは違くない?」
「うっ……それも……そうですね。……ハイ、私が悪かったです。はめられたので恥ずかしくなってしまいました」
……こう面と向かって謝られると俺が悪かったように聞こえるからやめてほしい。でも、俺も悪かった気がしてきたし俺も謝っておこう。
「ごめん、俺も悪かった。まだすると思うけどできるだけ少なくするよ」
「やめてはくれなんですね」
好きに生きるって決めたからね
「ま、まあ早くいきましょう。街はすぐそこですよ!」
ありゃっした〜