4話:新たな地
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そこで俺は目を覚ました。夢だったのかな……夢だったら良かったね。
もちろん何があったのかは全て覚えている。窓から飛び出したことも、変な空間のことも、神様のことも、それから海に叩きつけられたことも。
まあ、そんなことは置いといて今の状態を確認しなきゃな。
見渡すと整頓されたというより置くものが無いといったほうが正しい4.5畳の和室に、今俺が寝ているオフトゥンが一つ、まるで小さな旅館の一室のようだ。
さて、知らない場所に来たら言わなければならないことがある。これは1世紀前から決まっている言葉だ。
「知らない、天井だ」
『ふざけたこと抜かしてないでもうちょっと現状考えようよ〜』
おっと、その声はアリスさんやないすか、ちわっす。で、その現状教えていただけます?
『OK、で君はどこまで覚えてる?』
幾何学模様の空間から追い出されて海に叩きつけられたとこ
『君は海に叩きつけられ一度死んだ、ちなみに叩きつけらたことはわざとだから安心して。で、君の肉体のデータだけ取って、この島に肉体を再構築しようとしたんだけど、座標間違えちゃって三キロぐらい離れたところにつくちゃったテヘペロ。海を漂ったあとこの島に流れ着いて打ち上げられて土左衛門みたいになっていたところを心優しい人に介抱された。そして目を覚ました←今ここ』
……なるほどな。ツッコミどころ満載で、海に叩きつけたことも座標間違えて三キロぐらい離れたところに作ったことも聞かないから一つだけ聞かせて?
『それ聞いてない? ……まあいいや。で、なにかな?』
肉体を再構築したあとの俺って本当に俺? テセウスの船的に。
『……さぁ? それを決めるのは君自身だし、今まで通り怖いことから逃げるのもいいし、島だし戸籍とかも私がどうにかするから関係ないし名前でも変えて新しい人生を歩むのもいいし、私としては自分の能力を自覚して問題を解決してくれればいいから〜』
……分かった俺は俺だが一回死んだんだなら、新しい人生を歩みたいしアリスの言う通り名前でも変えようか? いや、この名前は今は居ない両親がくれた数少ないものの一つだし変えないでおこうか。
『無事新しい人生を歩むように決めたようだね〜 じゃあ最後にこのアリスさんから女神の祝福を授けましょう! それが私から君に上げることができる最大限の救済だ。しかも、なんとこの祝福を授かるのは永久くん、君が初めてだ!』
「なにそれ怖い」
『安心してくれたまえ、メリットしかないから……多分』
「最後不安にするのやめてくれない?」
『もう遅いです〜じゃあ最後に〜のあたりにもう授けてました〜』
「このクソ女神!」
『あ、ふーん、そんなこと言うんだ〜へ〜また手が滑って海に叩きつけしゃうかもな〜』
「すみませんでした」
『分かればよろしい、で、肝心の効果だけど筋力が少し上がったり消費魔力が少し減ったり色々あるから。じゃ君が能力を早めに開花することを切に願っているよ』
そう言ってアリスの気配は消えていった。
……なぜかは分からなかったがアリスはとても話安い人だったな。まるで、昔あったことがあるような……そんなことを今考えても詮無いことか。
そんなことを考えると同時にスリスリというこの場所にはとてもにつかぬ、いや、ある意味とてもお似合いな布をするようなの足音が聞こえた。
その足音は部屋の前で停まるとゆっくりと襖を開けた。が、肝心の襖を開けた人物はオフトゥンから起き上がっている俺を見て目を丸くしている。
……とりあえず助けてもらったことに礼を言うか。
「「あの」」
襖を開けた人物と俺の言葉が重なる。……少し気まずい。先に声をかけるか。
「あ、あの、おはようございます。そして、助けていただきありがとうございます」
「いえ、私は散歩をしているときに貴方が浜に打ち上げれているのを見て連れてきただけですので」
「それでもです。助けていただいたことに変わりはありません」
襖を開けた人物は感謝されることにあまり慣れていないようで、すこし頬を赤らめている。
「あの、できればでいいんですけど、早くふ、服を着ていただけませんか」
……おっと、頬を赤らめているのは俺の上半身が丸見えだったからのようだ。
そのことに気がつくとだんだん恥ずかしさと恐怖がせり上がってきた。
虐待やいじめの跡が見られて命の恩人から無能力ともバレていないのに引かれないかな? 大丈夫だよね?
俺はできるだけ気丈に振る舞えるように心の準備をしつつ、枕元においてあったかなり大きい男物のTシャツとズボン、パンツを確認すると、襖はしまっていた。襖の奥から小さな呼吸音が聞こえるためそこにいるのだろう。……急いで着替えよう
数分後着替え終わり襖を開けた人物と話すことにした。
「先程は大変お見苦しいものを見してしまいすみませんでした。どうか土下座程度で許していただけませんでしょうか」
「そ、そんな」
……やはり土下座程度で許していただけないか
「それでは何をすれば許していただけるでしょうか?」
「いえ、謝罪も何もいりません、私が確認せずふすまを開けたのがいけなかったのですから」
なんと! この人物はわかっていたことだがとてもとても優しいようだ。どこぞの学校の人達とは大違いだね!
閑話休題
……そういえば名前知らないや。人に名前を聞くときは自分から名乗れって偉い人が言ってた。
そう思い俺は自己紹介をする
「改めまして、お……私は新堂永久と申します。能力は言えませんが以後お見知りおきを。そして、助けていただき誠にありがとうございます」
「ご丁寧にどうも、私は七篠 慧。能力は自分が刃だと認識した物の垂直方向に力を発生させる能力です。簡単に言えば『物を切る能力』ですね。あとタメ口でいいですよ」
「わかりま……わかった」
……初めて戦闘にしか使えない能力を見た。いや、料理には使えるか。
そんな事を考えていると顔に出ていたのか慧が苦笑する。
「そうですよね、こんな能力現代じゃあんまり使えないと思いますよね。でも、私が刃と認識すればいいので手でも使えるんですよ」
「凄いね。俺は応用できないから羨ましい限りだよ」
「そんなこと無いですよ。ただ家の方針に従っていたらできただけですから」
……俺は能力が使えないから純粋に羨ましい。俺もそんなふうになれるのかな。あと家の方針とはなんだろう?
「家の方針ですか? 言ってませんでしたっけ、私の家というか七篠家は七篠流っていう剣技があるんですよ。しかもここ道場の離れですし」
そう慧は心を読んだかのように言う。
最近の女の子は凄いなアリスといい慧といいナチュラルに心を読んでくるし。何なの心読むの流行ってるの?
そう思っていると慧はおもむろに立ち上がり俺の方に近づいてくる。なにか気に障るようなこと言ったかな?
俺の耳元で慧が囁く
「あの……答えにくいことならいいんですけどなんであのとき海に打ち上げられていたんですか?」
「…………」
……すっごい根本的で言いにくいこと聞いてきた。どう答えるのが正解かな……
すると慧は考えている俺を見て答えにくいと思ったらしく俺から体を離して居住まいを正す。
「答えられないならいいです。……おかゆ作ってきますね。あと、御飯ちゃんと食べます? さっき上半身見たときから思ってたんですけど痩せしすぎですよ」
そう言って慧は襖の奥に消えていった。
ありゃっした〜