モーリェ。〜その7 お昼寝〜
宿に着いたとたんに、どばしゃーー!!と夕立。
「おぉ!危なかったね!」
「だなー!こりゃすげぇ。カフェルでも淹れようか」
「わ、嬉しい!お茶のお供にはこれにしよう」
と、プレーンのパウンドケーキ。
ラム漬けのはまだだからね。
あ、でもジーク好きそう。
「これは?」
「ガルボさんに型を作ってもらってケーキを焼いたの。中には何も入ってないんだけどねー」
「へぇ!楽しみ!」
雨が叩きつける海を眺めながら、一息。
「これも美味いな。中何もなくても美味い」
「ジークお酒飲むって言ってたよね?ラム漬けのドライフルーツ入れて焼くのも美味しいの。出来たら差し入れするね」
「シャルルが酒飲まないのに、酒使って大丈夫なの?」
「焼いたら香りだけになるから大丈夫、楽しみにしてて!って、そう言えば飲んでるの見た事ないけど、飲んでいいんだよ?」
「ん?あぁ、大丈夫。飲んだら理性と戦えなくなりそうだから飲まないだけ」
にっこり
え、これは、もしや、そーゆー事か?
わたしも笑っとこ。
にっこり
「大丈夫、ちゃんと許可取ってからにするから」
誰の!?
「シャルルの」
にっこり
「顔真っ赤」
「揶揄わない!」
あーカフェル美味しいな!!
◇◇◇
それから半刻くらいで雨は上がった。
雲間から天使の梯子が降りてくる。
「あ!虹!」
ねぇ!と声を掛けようと思ったが、ジークはソファで眠っていた。
そりゃそーか。
ずっと抱っこしてたんだもん。
疲れてるはずだよね。
寝顔可愛いな。
何このまつ毛、長くて瞬きしたら風おきそうじゃん。
ヒゲ薄いのかな?見当たらない。
そういえば手足の毛も少なかったな。
腹筋バキバキだったし、腕も逞しくて……。
って何考えてんの!
髪の毛柔らかそう。
ちょっとだけ。
おぉ!色に違わず柔らか!
ま、わたしには負けるけどな。
隣に座って、さっきの意味を考える。
いや考えなくても分かる。
嫌いじゃない、どっちかと言うと、 すき。
話してて楽しいし、身長の話をした時だってバカにしなかった。
オーク退治の時だって、責め立てて聞いてこなかった。
何より、わたしを否定しなかったし……。
いやまて、しかし、……
すぴー
◇◇◇
あ、寝ちまった。
今日はどさくさに紛れに抱っこ三昧した。
役得だった。気持ちよかっt げふんげふん。
ナンパしたやつらに1mm位は感謝してやる。
シャルルどこだ?
やばっ、寝てる!俺!俺の肩で!
起こさないようにそーっと、肩に手を回して引き寄せる。
何このフィット感。
ずずっと横になる。そーっとそーっと。
脇に身体、肩に顔。
何このフィット感!
大事な事だから2度言うよ!
まつ毛で影が出来てるじゃん。
この髪の毛の触り心地ときたら!極上!
なでなでなでなで。
抱っこした時も思ったけど、柔い。
どこもかしこもいつまでも触っていたい位だ。
……俺、変態か?
いや!正常だ!
男なら誰でも思う!触らせないけど!
これで戦うと強いんだ。
解せぬ。
「ん……」
はっ!起きる?起きちゃう?
手!手が俺の胸に添えられた!!
やばい。嬉しい。
手、ちっちゃいなぁ。
剣だこなんてないのに、剣も使う。
手もむにむにしてたし。
もう一度むにむにしてやる。
むにむにむにむに。
何なんだろうこの子。
やっぱり妖精なのかな?
いや、ダメだ。妖精だったらいつか消えてしまう。
今この腕の中に居るんだ。
離したくない。
ずっと一緒に居られたらいいのに。
待っててくれるかな。
待たせるのは可哀想かな。
いや、まだ先だ。
それまでには……
くかー
ジークの妄想が……。
もういいからはよくっついちまえよ( ・᷄ὢ・᷅ )




