モーリェ。〜その1〜
温泉と聞いてからは、もう気もそぞろ。
その日はテントに泊まって、晩ごはんはお店に入ったんだけど。
こそっと
「ママさんのお店の方が美味しかったね」
「あぁ木もれ陽亭なー、あそこは毎回行きたくなる店だからな」
この街でいつも食べるお店は、混んでいて入れず、この店は初めてだったらしい。
デンタツのハンター情報網にも載っていなかったらしく、ちょっと残念だった。
食べ〇グあるの!?
ん?
翌日、簡単な朝ごはんを食べて、いざゆかん!
温泉の街へ!!
ジークの抑え気味?なスピードで、お昼過ぎには、
「海!海キレイ!!」
キラキラと光る海が正面に見えてきた。
「そんなに喜んでもらえると、誘った俺も嬉しくなるよ」
「本当はね、ひとりで来ようと思ってたの」
「海に?」
「うん、友達居ないから」
あら、何か寂しい子みたいになっちゃったわ。
「あぁえっと、王都に居ないから、ね!」
「そっか。今は俺が居るじゃん」
そう言って頭なでなで。
ふへへ
「うむうむ、連れてきてくれてありがとう!」
ははっ
「まだちゃんと着いてないし、楽しむのはこれからだろ?」
「そうでした!」
「今日はもう昼も過ぎたから、スプリアは明日だなー。宿にチェックインして、屋台でも行くか?」
ぱぁぁ!!っと笑顔。
「わかりやすっ!!」
あはははは!
◇◇◇
宿は、なんとオーシャンビューのコテージ。
思わずぽかーん。
「部屋をふたつ借りるより、寝室だけ別でいいかなーと思ってここにしたんだけど、ダメだった?」
いや、ダメじゃないけど、知り合ってまだひと月も経ってないよね?
え、これってどうなの!?
久しぶりの識庫さん!!
*人はくっついたり離れたりするもんです。気にすんな。
えええええええええ!?
おざなり!!
え、わたしが意識しすぎ!?カンチガイ女!?
「シャルル?」
「大丈夫!です!」
「よかった!ここキッチンもついてるから、あわよくばメシも作って貰えるかなーと言う下心もあったりする」
ぺろっと舌を出すジーク。
何だよぉぉおおおおお!!ああああ危ねぇ!!
カンチガイ炸裂するとこだったよ!!!
「作り置きも減ってきてるし、食材も王都と違うものがありそうだもんね!でも外食もするよ?」
「もちろん!作りたくなったらでいいよ!」
あぁその笑顔が眩しいわ……
よかった、勘違いしなくて……ほっ!
そんなアホの子を隠しながら荷物を置いて屋台のある通りへ行く。
こっそり識庫さんじゃない知識庫を見ても、要約すると同じような事が書いてあった。
中々に長命なこの世界では、くっついたり離れたり、パートナーが変わる事は変な事ではないらしい。
えーまじかー。
まぁ深く考えなくてもいいのかな?大人の階段は近くて遠い。
いやまだ15歳。中身は大人。
うぅん、何となくジレンマ。
◇◇◇
「わぁ!いい匂い!」
「な?買いたくなるだろ?」
「うんうん!あ!あれなんだろう?」
香ばしい香りが空腹感を刺激しまくり!!
「買って来てここで食べる?歩きながら?」
「もちろん!」
「「歩きながら!」」
あはははは!
買って、食べて、また買って食べる。
手がベタベタしてもクリーン!口の周りもクリーン!
あぁ便利!
わたしが串焼き1本の所、ジークは2本。もしくは1本を分けっこ。
ホントよく食べるわー!育つのも分かるわね!
お腹もくちくなって、念願の海へ!
白い砂浜。
寄せては返す波。
キラキラと輝く水平線。
遠くで暴れる魔獣。
そう、魔獣。
「ねぇ、あれなに?」
「あぁ、あの大きさならクラーケンじゃね?さっき食べたよ」
思えば遠くへ来たもんだ。




