閑話 ジークの純情。
「はぁ!?ゴブリン終わったばかりなのに、北に行けと!?」
「高ランクがみんな対応中で、出払ってるんだよー、頼むよー」
「はぁ、分かりました。調査だけですよね?流石にリェスウルフの群れはソロじゃ厳しいっすよ」
「うん、調査だけでいいよ。痕跡が新しければ、討伐隊編成するから」
「期間は決まってます?」
「まぁなるべく早く調査が終わればありがたいな」
「ふむ、じゃあ明日出ますわ。ゴレ車で行くから3日もあれば到着するし、調査も4〜5日ってトコですかね」
「あぁ、それで頼む」
◇◇◇
ウルディアに到着したのが3日目の昼前だったので、ギルドに顔出ししただけで、森に入る事にした。
受付の、何だったっけ、あー、女がうるせぇんだよ。
どっから声出してるのか分からんが、妙に高い声で、ごはん行きましょうよ〜ぅ!とか、車乗せてくださ〜い!とか、ベタベタ触ってきたりとか、とにかくうるせぇ!!!
自分で言うのも何だが、よく女に言い寄られる。
モテる。うざい。
割と小さい時から、変な女に言い寄られてるから、面倒くさくなって、話しかけるなオーラを出してるつもりなんだが、女には効かないらしい。
とにかく、サッサと森に入って、聖域で癒されたい。
あの場所に行けるのは高ランクの特権だよな。
まさか、あんな出会いがあるとは思っていなかったが。
調査をしつつ、聖域に入ったら、水辺に妖精が居たんだ。
あの時見た妖精。
やっぱり裸だった。
でも、美しすぎていやらしさはなく、水に濡れた髪が、光に反射して、神々しいまでの美貌。
攻撃されたのは仕方ないよな。
そりゃ突然男がいたらビックリするよな。
話してみたら、妖精じゃなくて、人だったけど。
そして、作ってくれた料理は美味いし、特別熱の篭った視線を向けられることも無いし、話してて楽しいと思ったんだ。
女と話してて楽しいなんて、もう何年も思ったことがない。
もっと話したい。
もっと笑顔を見たい。
もっと一緒に居たい。
もっと、もっと。
だから、少しでも一緒に居られるように、王都まで行くことを提案したら、断られた。
でも!海の街を案内するって言ったら、一緒に来るって!
俺!グッジョブ!!サムズアップ!!
俺、追いかける事した事ないけど、追いかけていいかな?
俺、ハンターだし。
誰がうまいこと言えt げふんげふん。
とりあえず、この旅の間に少しでも距離を縮めておきたい。
なんだか、ラシードさんも狙ってる気がするし。
どさくさに紛れてデンタツ聞けたのは僥倖だよな!
今後、さり気なく誘う事も出来るかもしれないし。
……さり気なく、って、どうやるんだろう。
ま、まぁ、何とかするさ。うむ。
ハンターって、時間の融通が利きそうで利かないんだよな。
王都所属ったって、ずっと王都にいられる訳じゃないし……。
こんな時、内勤ていいなぁ……って思うわ。
そうしたら時間も取れてデートとか誘って……。
……また断られるかな……。
俺、結構ヘタレなのかもしれない。
とほほ。




