旅に出た。〜湖編その6〜
焚き火台に火を熾し、鉄板を置いてスタンバイ。
コンロにシチューを乗せて温める。
レシラ(レタス)は大きくちぎって、お肉を巻けるようにしてっと。
あ、ジークが近くに居るから、おにぎりは出せないな。
焼きおにぎりしたかったけど。
丸パンを半分にして、鉄板で焼く。
焼き色が付いたらカモフラージュのマジックバッグに入れて置いて、食べたくなったら、お肉サンドでもいいよね。
ふふんふーん♪
ランタンセット!黄昏のいい時間!
お肉焼いて、いただきます!!
ふと隣を見ると、何か齧ってる。
そして目が合った。
手に掲げるは、ジャーキー?
焚き火台で炙りながら、パンと食べてるけど……。
やだ、何か、こっちで焼肉とか罪悪感。
「あのぉ……お肉たくさんあるんで、食べませんか?」
「え?いやでも、悪いよ」
「いえ、食べきれないんで、よかったらどうぞ?」
にっこり
「いいのかい?それなら遠慮なく」
カウカウ好きだよね?若者は好きってゴードンさん言ってたし!
「どんどん焼くので、たくさん食べてくださいね。シチューもどうぞ。パンもありますよ。お肉、レシラで巻いても美味しいです、どうぞー」
タレに漬け込んだのも、丁度いい具合になってるし、なんと言っても、お肉の味がいいので、塩コショウで充分美味しい。
「え?うまっ!!何これ!このタレ!こんなの食べたことない!」
ほほぅ、タレがお気に入りですか。
ふふっ
「自家製ですが、気に入って貰えたならよかったです」
「自家製!?マジか!どんだけでも食えそう!ヤバいなコレ……」
そう言って、パクパクモグモグと、凄い勢いで食べていく。
うひゃー見てて気持ちいいな!
「あ、ごめん。凄く美味くて……」
「ん?いえ、見てて気持ちいいです。お腹いっぱい食べてくださいね」
くすくすっ
「ありがとう、今度お礼するね」
そう言って、結局タレ漬けのお肉は完食!
塩コショウで焼いたのも、切り出したお肉ほぼ完食!
わたしも凄く食べたけど、やっぱ男の人が食べる量はすごいなー!
「とりあえず、お茶はご馳走させて!カフェルは好き?」
「はい、好きですよ」
「カフェル、俺も好きで淹れるのに凝ってるんだ。外だからコレだけど」
そう言って、ネルドリップのコーヒー(カフェル)を入れてくれた。
雑味が少なく、カフェオイルも程よく、うん、美味しい。
「美味しいです。ほっとする」
「よかった!あのごはんのお礼としては、全然足りないけど」
「いえ、充分です。ホントに美味しい」
にっこり
あ、そう言えば、誰と間違えたんだろう。
「そう言えば、見つけたって言ってたのは?」
「あ、あぁ、その、信じないかもしれないけど、妖精を見たんだ。君みたいな銀髪で、後ろ姿だったんだけど、ラスラ川で。一瞬で消えちゃったんだけど」
え、ラスラ川って……毒消し草の……。
たらーーーーーり……。
「他に誰も見てなくて、見間違いかなって思ったんだけど、ゴブリン討伐の切っ掛けになったハンターが、妖精が居たって言ってて、まさかと思ってたんだけど、本当に居たんだって。その妖精に似てたから、突然でびっくりしたろう?ごめんな」
しょんもり
ダラダラと背中に冷たい汗が流れる……。
「そ、そうだったんだね。妖精ね。そんなにステキなイキモノと間違われたなんて、光栄だわぁ」
ははは、は、……。
覚えがありますとも。
えぇ、覚えてますよ。
ゴブリン討伐、時期的にも、あの時ですよね?
ダラダラダラダラ……。
「まぁきっと何かいい事が起こる前触れだったのかもしれないと思ってるよ」
にっこり
はい、わたしもにっこり。
いい事あるといいね!!
あの時見てたのはジークでした。




