旅に出た。〜湖編その2〜
お肉からタラりと流れる脂が落ちて、パチッと爆ぜる火の粉。
お肉を焼いている間に用意した、シチューとピクルス。
焚き火で、とろりと溶かしたチーズを、パンに乗せてぱくり。
ついでにシチューに浸してぱくり。
ピクルスで口をサッパリさせてから、うさぎ!
うさぎのお肉は表面をパリッと、中はしっとり。
多分、お家で食べても、こんなに美味しいと思わない。
外の空気は極上のソースだね!
お酒飲めないから、食材室にあったシャルドネの100%ジュース。
たはー!美味しい!
もちろん赤のピノ・ノワールのジュースもあるわよ。
ワインだけじゃなく、ジュースも美味しいのよ?
お肉に合うワインは、とか言っちゃダメよ?
ジュースだし、雰囲気雰囲気!
そろそろランタンを灯そう。
魔道具だから火じゃないけどね。
タープのポールの先に明るく、テーブルに明るさ弱めに、テントの中は……いらんな、付属してた。
残りは予備でいいや。
丸っこい形のランタン、可愛い。
そろそろ暮れてきた。
森の中なので夕日は見えないけど、群青とオレンジの混ざる黄昏。
やっぱり冷えてきたな。
そう言えば、あの怪しいローブあったわ。
ササッと着込めば、うん、暖かい。
さすが自動温度調整。
暑い時に着たら涼しいんだろうなー。
他人から見たら暑苦しいだろうけど。
ふふっ
リクライニングチェアに横たわり、空を見上げる。
なんと言うか、これは、圧倒される……。
星が、落ちてくる。
月は見えないから、本当に星だけの空なんだけど、湖にも反射する程の光。
自分が宇宙に飛ばされて浮いてるみたい。
この世界に生まれてから、早寝してたので星空をちゃんと見るのは初めてだ。
これは凄い。
空気を汚すものがないから、こんなに綺麗に見えるのか。
流れ星なんて、探さなくてもシュンシュン落ちてる。
願い事?
そうね、世界平和なんて大それた事は言わないから、わたしの周りの人達が穏やかに暮らせますように。
願わくば、わたしもその輪に入れますように。
なにとぞっ!!!
パンッ!と手を叩いたら、思いの外響いてびっくり。
あちこちでガサガサと音がする。
驚かせてごめんよ!小さな動物たち!
夜に歩き回るのは危ないから、探検は明日のお楽しみ。
明日の予定は、うーんそうだなー。
午前中は、アブコン探しつつ探検。
もちろん聖域の外は、気配察知、気配遮断、気配探知フルラインナップでやるわよ!
大丈夫よ、学習したもの。
同じ轍は踏まないの!!ふんすっ!!
お昼は、うーん、状況によりだけど、一応聖域戻るつもり。
食べるなら安全な所がいい。
そして!午後は!湖に!入っちゃいます!!
魔獣は居ないはずだけど、お魚とか捕れたらいいよね!
潜ってもみたいし。
くふふふふ
さて、と。
リクライニングチェアをインベントリにしまって、流石にお風呂はないので、クリーンで我慢。
ランタンはタープの下ね。
夜露を凌がないと。
これ、流石に聖域以外なら全部しまわないとダメよね。
泥棒がいるかもだし。気をつけよう。
テントなのに、外なのに、家と同じクオリティの寝具でおやすみなさい。
すぴー
◇◇◇
一方その頃。
「なんで!?なんで俺にはデンタツしてくんないの!?
なんでゴードンなの!?
いつの間にそんなに仲良くなったの!?
知り合ったのは俺が先なのに!
つーか、アノ見た目で怖くないの!?
まぁ男ならカッコいいかもしれないけど、女装だよ!?
え、そーゆー趣味?まさかそうなの!?」
「用事が済めば良かったんじゃねぇの?レシピ交換するみたいだし」
「だから!いつの間にそんな事になってんの!?
お昼って、俺もまだ一緒に食ってないのに!」
「俺も食ってねぇよ」
「マイクは仕事で度々会ってるじゃん!ずるい!」
「ロリコンかよ」
「違ぇわ!!!」
シャルルからデンタツ貰えなかったラシードさんが、ヘルベスさん相手にお酒を飲みながら、くだまいてましたとさ。




