シャルルこの世に立つ!
やっと産まれました。
んぅ……。
柔らかな感触。
さらりと流れる生地は滑らかで暖か。
ころりと寝返りを打ち、ふわりと覚醒する。
「どこここ……」
ふんぎゃーー!!
誰っ!?誰の声!?
あ、起きたから口内をクリーン。
えっ!?
クリーンてなに!?
さっぱりしたけども!!
知らないのに知ってる。
何これ。
がばりと起き上がり、きょろりと辺りを見回す。
薄暗い……。
どうやらここはベッドのようだが。
でかい。
クイーンかキングか、やたらでかい。
わたしが5人くらい並んでも寝られそうだ。
でもそれ以外は見えない。
えっと……。
えーーーっと……。
よし、落ち着け。まだ焦る時じゃない。
ひっひっふーー。
うん、コレジャナイ感。
ふと目に止まった手を見る。
薄暗い中でも分かる。
白く細っそりした腕の先に、これまた細く小さな手。
指先には形のいい爪が乗っている。
「ぇぇぇぇぇぇ!!」
あれ、もしかしてわたしの声か!
「あーあーてすてす」
わたしだ!!
あわあわとパニクってると、天井からひらりと紙が落ちてきた。
文字が金色に浮かび上がる。
”自分の名前を付けなさい”
名前?
あれ?わたしの名前、なんだっけ……。
女神様に、おやすみって言われて……。
あぁそうだ、生まれ変わるって言われてた。
前世の名前は思い出せない。
新たに生まれたのだから、名前が必要、と。
ふ、と浮かんだ名前。
”シャルル”
誕生日は花の月1日。
”シャルル・エイプリル”
それが、わたしの名前。
ぅぐっ!!
名前を決めた途端、頭に流れる莫大な情報の渦。
自分の世界に色の波。音の流れ。
全てがグルグルと渦巻く!
うわぁぁぁぁぁ!キッツゥゥゥ!!
意識が……。
…………。
◇◇◇
鐘の音が聞こえる。
3つ。
あぁ3の鐘の音。
体内時間をam9:00にセット。
ぁー、キツかった。
15歳の成人したての子供が覚えている、ヴェルデの常識を一気にインプットされた。
もちろんすぐに全部覚えられる訳もなく。
頭で考えなくても身体が覚えてる事柄も多い。
さっきのクリーン、あれも知識庫から漏れ出たやつ。
朝イチの習慣だからね!
まずベッドから出てトイレだな。
このベッドは天蓋付きのベッドだ。
お姫様仕様。
天幕を開けると、眩しい朝日が入り込む。
わたしの目覚めに反応して窓のカーテンが開くんだと!
なにそれすごい!
ベッドから降りるのも、やんごとない高さがあるから足がつかない。さすがお姫様仕様。
これ、上がるのも大変だな。
寝室にトイレと洗面所とシャワーブース、クローゼット。
さて、トイレトイレ〜♪
室内履きでパタパタとトイレに駆け込み用足し。
ペーパーはない。
キラリと光る石にタッチすると、自動でクリーンが掛かる。
なにそれすごい!
タッチした時に見た指先、桜貝のような爪。
薄暗い中で見たよりも白い肌。
ふと俯いた時に、さらりと落ちた髪の毛は、銀髪。
銀髪!?
え、銀髪!?
それ普通なの!?
手触りはお願いした通り、柔らかで滑らかだけど!
コスプレじゃないよね!?
ん?コスプレって何だっけ。
まぁいっか。
やべぇ、これ鏡見たら卒倒するんじゃないだろうか……。
しかし、起きたからには洗面だ!
いざ!洗面所!
ドアを開けたら、目の前は窓。
見えるのは、ヴェルデで3番目の世界樹。
でっかいなぁ……!
ドアから左手に洗面台ね。
よし、いざ鏡!
うん、まぁちょっと知ってた。
だって女神様たち、張り切ってたし。
自分で見た感想は”人外”。
美少女?いやそんな陳腐な言葉で言い表せない。
銀髪と思ってた髪は、光の加減によって薄い紫?蒼?にも見える。
瞳は紫紺から中心に行くにつれ金色に。
魔力が高いと中心は金色になるんだって。
柔らかににカーブを描く眉、マッチ5本は軽く乗りそうなまつ毛はくるんと上向き。
零れそうな大きな目は、多分今自分を見て驚いているからだろう。
桜色のほっぺ。
あんぐりぽかんと開いた口には、薔薇色の唇が縁どっている。
てか、毛穴どこ!?
つるんと陶磁器のような肌は、さながらビスクドール。
はぁぁぁぁ……。
女神様!やり過ぎですっ!!!
ここまでの何故それ何は、そのうち明かされる。はず。