嵐の前の騒動。
それにしても、料理名は変わらないのに、素材名が違うのがややこしい。
いやまぁ、覚えるのが素材だけだからいいっちゃいいのか。
てゆーか!!15歳の常識に素材はないのか!?
フルーツや肉くらい食べるだろうが!!!
識庫さん!
*……愛のムチです。
うぉぉい!!!
え、なに?イジワルされてる感じ?
ちくしょう!!負けるもんか!!
調味料も、知ってる名前と知らないのが混在してんのよ!
何なの!?もぅ!!
と、それより魔獣、紅いボスの毛皮は欲しいかも。
すんごくキレイだったし。
あのでっかいトカゲは要らないけど、紅いボスだけは自分で解体しようかな。
明日、売りに行ったら聞いてみよう。
◇◇◇
「こんにちは、魔獣の買い取りお願いします」
「はいよっ!やぁ君がシャルルさんだね!いやホントに綺麗だねぇ!ギルマスから聞いてるよ!ギルマス居るけど呼ぶかい?」
テンション高いな!
「あ、特に用事はないので買取だけで大丈夫です」
「おっけー!じゃあここに出してみて!」
え?ここ?
狭くない?
「えっと、ここでは狭いかもです」
「え、狭い?ここが?」
「はい」
「いやいや、出してみてよ!大丈夫よー!」
ぇー、んじゃまぁ……
どーーーーおおおおん!!
ずずぅ……ん……。
ほらぁ、しっぽ曲がってるじゃん!
「まだあるんですけど」
「は!?え!?待って待って!?これ……ギルマスぅぅぅぅ!!!」
びゅんっ!!と走って行っちゃった……。
とりあえず仕舞っとくか。
「シャルル!一体何を持ってきたんだ!!!」
「え?なんかすんごくでっかいトカゲみたいなやつと、紅い狼みたいなやつなんですけど、ここには出せなくて……」
ぽかーん。
あ、ヘルベスさんのぽかーん、久しぶりに見たな。
コメカミぐりぐりしてるし。
もしかして、またやっちまった系??
受付の人泣いてるし。えっ!?泣いてる!?
「えー……っと、とりあえず1番の大部屋行くぞ」
「はーい」
てくてくてく。
すぅぅぅぅ!はぁぁぁぁ……。
「よし、ここに出してくれ」
どーーーーおおおおん!!
ずずぅ……ん……。
「紅い狼は出しますか?」
「………………あ、あぁ、いや待て、ちょっと待て、紅い狼?」
「はい、多分ボスと手下9匹なんですけど、ボスの皮は綺麗だったから欲しいなと思ってます」
「シャルル?この魔獣、なんだか知ってるか?」
「鑑定まだしてないんですよね、今してみますね」
”鑑定”
リェスドラゴン、別名死を齎す厄災。ドラゴンの中では中位に当たる。鱗が固く武器が通りにくく倒しづらい。
魔法も効きづらく、最大の攻撃が尻尾の攻撃で、受けると最悪死に至る。地を這うように、素早く動き、力強いので大変厄介な魔獣である。
しかし、その素材は全て貴重品。血液から尻尾の先まで余すことなく使える。
大変珍しい魔獣である。
「あら……?」
あらあら!やっちまったなぁ!!!はっはっは!!
「見たか?そうだ、ドラゴンだな?しかも、めぼしい傷が首にしかない。大変美しく倒されてる。これな、オークション行きだぞ」
「へ、へぇ……それは結構なお手前で……」
何言っちゃってんのわたし!
「とりあえず、うちで預かるな?血液も貴重な素材だから」
「あ、はい」
そう言って、マジックバッグに仕舞った。
「で?紅い狼?」
「はい、全部出していいですか?」
「あぁ、もう何があっても驚かない。大丈夫、俺はやれる」
どどどん!!
どれも首皮1枚でつなぎ止めてる。
「…………。いや、驚かないつもりだったんだが、シャルル?これも鑑定してみたか?」
「あ、やります」
”鑑定”
リェスウルフ(紅は上位種)獰猛。5匹〜15匹位の群れで行動し、連携して攻撃してくる。顎が丈夫で、噛みつきによる攻撃が1番厄介。爪も鋭い。足が速く、見つかったら逃げられないと思っていた方がよい。
リェスウルフの通った後に生き物は居ないと言われる。
「へぇ、確かに群れで居ました。連携も凄かったですよ!」
「……いや、うん、そうだな。シャルルはケガしなかったか?」
「はい!大丈夫でした!」
「そうか……うん、余り無茶すんなよ?」
「はーい!」
「で、ボス、これか?毛皮が欲しいんだな?」
「はい、キレイな色だから、何かに使えるかなーと思って」
「まぁ、うん、キレイだな……。で、さっきのドラゴンな、ソロで倒したヤツなんて、そうそう居ないんだ。
しかも傷は首と、コメカミに刺傷だけ。これな、ハンターギルドでも、どえらい噂になるぞ。
しかもリェスウルフの群れはSSランクもソロじゃ厳しい、それをお前さんが倒しちまった。どうする?出来るだけ隠すようにはするが……」
がーん!そんな事になるなら持ってこなかったのに!
「じゃ売りません」
「ええええええ!!いやいやいやいや!!それは勘弁してよ!!もう見ちゃったし!!」
えーーーめんどーーー!!
「待って!待って待って!幸いこれ見たのは、俺とさっきの、お前!カルロス!!ちょっと来い!!」
「ぅぅぅぅ……あぅぅぅ……ふぐっふぐっ」
号泣してるし。
「こいつだけだから!絶対他言しないから!約束するから!なっ!?売って!?」
「うっでぐだざいいいい。うわぁぁぁん!」
ちょ、ドン引きなんだけど……。
「あのな?こんなキレイなドラゴン、生きてるうちに見ることないのよ!普通見たら死ぬの!ドラゴンに殺されるの!だから見ることないの!いや見れるけど死ぬの!でもここにあるの!それがどんだけ貴重な体験か!知って!?分かって!?」
「じゃあ隠し通して下さい、それなら売ります」
「分かった!約束する!カルロス!お前も約束しろ!」
「やぐぞぐじまずぅぅ!」
「よ、よし、ならリェスウルフのボスの毛皮な、これ出来たらデンタツするな?あと、ドラゴンはやっぱりオークションになるから、金の支払いは、ちょっと先になる。もしかすると、ウルフの方もオークションになるかもしれないから、決まったら連絡する。それでいいか?」
「はい、それでいいです。あ、もしかしたらデンタツ切ってることもあるんで、メッセージ残してくれたら、こちらから連絡します」
「よし、分かった。それでお願いするな」
「はい、ではまたー」
「あ!書類!」
預けた数と、魔獣の討伐証明、口外しない契約書、もろもろ書いて、夏の嵐のあと、1回連絡する事でお開きにした。
あーあ、またやっちゃったなー。
あんなの討伐しないのが常識とは教えてくれないしね!?
考えても仕方ない!
そろそろ来る嵐に備えよう!
神様:あら、そう言えば、あの子に入れた常識、もしかして足りなかった?何か忘れてる気がするのよねー?ま、知識庫が何とかするでしょ!
素材の名前が歯抜けなのは女神様が忘れたから:( ;´꒳`;):
識庫さんに意思はないはずなのに……。




