逃げ場がない!その3
コンコンコン
「ハンターギルドマスター、サブマスターお越しです」
おや?今日はドカドカ入ってこなかったね。
ちゃんと案内されて来るとは!
「よぉ、やっとシャルル捕まったな!」
「ラシードさん、酷いです」
それじゃ犯罪者みたいじゃない!
「初めまして、あなたがシャルルさん?」
わぁぉ、イケメンゴツイのに女装……?
「オネエだ」
「「えっ!?」」
あっ!しまった!つい口をついて出ちゃった!
「あらぁ!ちゃんとお姉さん扱いしてくれるのね!嬉しいわぁ!ハンターギルドサブマスターのゴードン・バックラーよ!よろしくねぇ!ゴードンでも、お姉さんでもいいわよぉ!あらほんと妖精さんねっ!可愛らしいっ!」
ぱぁっ!と笑顔になるけど、迫力すんごい!!
「は、初めまして、シャルル・エイプリルです」
わたしの隣にヘルベスさん、向かいにラシードさん、わたしの向かいにゴードンさん。
こそこそっ
「意外と順応早かったな……」
「な、びっくりだ……」
「なによ」
じろり
「「な、何でもねぇよ」」
何やらこそこそと……
それより目の前ラシードさんがよかった。
目ヂカラ怖ぇよ……。
「さて、ハンターギルドも来たことだし……先にどっちにする?」
にこにこ
目が笑ってませんよ。
「アタシとしてはゴブリンから聞きたいわね、これも繋がりで聞けるでしょう?」
そう言って取り出したマナポ。
あーね!見たことあるよそれ!
わたしが作ったやつだしね!
「えっとー?」
「あら、とぼけるつもり?何から何まで白状しなさいな」
ギロリ
やだ怖い!!
「まぁまぁ、そんなに責め立てるなよ、話しづらくなるだろ?で?何があった?」
そう言われて、毒消し草を取りに行った事、ゴブリンに襲われてる人が居たから助けた事、ポーション使い果たしたって言うからサンプルとしてヒット、マナを人数分あげた事を話していった。
「売る前のポーション、あげたのマズかったですか?」
しょんもり
「いや、それは大丈夫。寧ろ助けてくれた事、礼を言う」
と、ラシードさん。
「ゴブリン30体程を短時間で討伐した方がびっくりよ」
え、弱っちかったけど!?って言わない方がいいよね。
「まぁきっとうまく魔法が嵌ったんだと思います」
って事にしといてよね!
「「「……」」」
「で?アナタはハンターにならないの?」
「え?なりませんよ?」
「何故!?それだけの腕があるなら高ランク間違いないじゃない!!」
「これでも忙しいんです。誰かの依頼を受けてる場合じゃないんです」
「はぁ!?」
自分勝手?いいじゃない!好きに生きるんだもの!
「いつかそのうちやりたくなったらやるかもしれないし、やらないかもしれないし、その時になったら決めます」
「まぁ、それが当然だな。自由がハンターのいい所だし、やるもやらないも本人次第だ」
と、ヘルベスさん。
「マイクは商業の方にシャルルを引っ張り込みたいからそう言うんだろ?」
ぶつぶつ
「マリアーナも狙ってるしな」
ニヤリ
「はぁ、そうだった……でもポーションはお願いしていいんだよな?」
「はい、とりあえずはポーションにかかりきりになりますね」
「じゃ納品について話しとくか」
売るのは夏になってから。
月にそれぞれ50本ずつ。
毒消しと状態異常は折を見て。
金額は、現在のポーションの1.8倍。
「え!?そんな高くて売れます!?」
「今のポーションが売れなくなると薬師ギルドがうるさいからな。区別しないとダメだ」
なるほど。
それと、とりあえず本部だけの取り扱いにすると。
低ランクが買えるほど安くないからね。
「でだな、シャルル。デンタツ持て。今回の収入で買えるだろ?連絡つかなくて困ってたからな。強制的に持ってもらう」
うぐぅ……。
逃げ場がなくなるから言いたくなかったのにぃ。
でも仕事となると仕方ないのか……とほほ。
”デンタツ”
フォン!と鳴ってホログラムが出る。
「「「持ってんじゃねぇか!!!!」」」
隠してただけですよ。
ゴードンさん、訝しげにしてたのに「オネエ」(さん)と言われ手のひら返し。




