逃げ場がない!その1
「結局ゴブリンキングまで居たようよ。外に被害がなくて良かったわ。ただ、グラスディアが散り散りになったらしく、あちこちで目撃されてるけど、大人しいからそのうち戻るでしょう」
「とりあえず一安心か。夏の嵐までに間に合って良かったわ。まぁ暫く警戒してくれ」
「分かったわ。で?妖精ちゃんはいつ来るのよ」
「知らん。次来たら絶対デンタツ持たせるから、少し待て」
「はぁ、わーかーりーまーしーたー!」
アタシだって忙しいのよ……ぶつぶつぶつ……
そう言って執務室を出るサブマス。
最後に会ってから、既に10日は経っている。
そろそろ夏の嵐が来そうなんだがなー。
マイクに聞いても、連絡取れないんじゃ無駄だし。
待つしかないよな。はぁ。
◇◇◇
そろそろ夏の嵐に備えて、市場に行こうと思う!
聖域に何でも揃ってるから、要らないっちゃ要らないんだけど。
この世界のフルーツで、ドライフルーツ作ってみたいの。
パウンドケーキ用に!せっかく型も作ってもらったしね!
もちろん聖域のフルーツも使えるけど、ほら、またクリームチーズみたいになったら厄介じゃない。
わたしだって学習するのよ!えっへん!
商業ギルドにも顔出さないと、そろそろマズイよね。
でも先に市場だ!
問題は先送り……じゃなくて!
時間掛かりそうな気がするから、後回しにするだけだって!
う、嘘じゃないもん!ほんとだもん!
バッグもお洋服も新調したからねー!
今日のコーディネートは、”下町のお姉さん、お買い物ですか?”スタイル!
シンプルなシャツワンピに籠バッグ。
もちろんマジックバッグだけど。
さて!たくさん買うぞ!出陣じゃー!
◇◇◇
むむむ?
さすがに植生が似てるだけあって、見た事あるようなフルーツがたくさんある。
てか、季節関係ないの?いちごの横に桃があるけど……。
鑑定すると、いちごは”ベリアン”桃は”ピルリア”りんごは”アプリ”。
いちご、赤ちゃんの握りこぶし位ありそう。でかい。
桃、赤ちゃんの頭くらいありそう。でかい。
りんご、姫りんごより少し大きい位。ちっちゃい。
種類の違いかしら……。
まぁいいか。
「すみません、これ下さいな」
「らっしぇい!おやまぁキレイなお嬢さん!おまけしちゃうよー!」
「ありがとうございます!」
ふふっ、おまけ嬉しい!!
「毎度ありぃ!」
他に何があるかな〜?
ふふんふーん♪
「あっ!ああああああ!!!お嬢!!こらぁぁぁ!!」
えっ!?あっ!!ガルボさん!?
何か怒ってるぅぅぅぅ!?
何で何で!?とりあえず脱兎の如く!逃げるに限る!
しゅたた!!
「逃げるなゴルァァァァァァ!!」
走って追いかけてくる!!!
「いやぁ!何もしてなぃぃぃ!!」
”えっ!?ガルボさんが走ってる!!!???”
”なんだなんだ!?”
混み合う市場を駆け抜け、大通りに出たら
「シャルル!?」
「ヘルベスさんっ!!助けて!!」
「えっ!?何事だ!?」
「ヘルベスゥ!!そいつ捕まえとけ!!」
「は?ガルボが走ってる!?」
「やっと捕まえたぞ!こんにゃろう!」
「シャルルお前さん何かやったのか!?」
「何もしてないですぅぅ!!」
「つーか!ガルボ!足!」
「おうよ!だからお礼言いたかったのに逃げやがって!!」
「お礼?」
「ガルボさん顔が怖かったんだもの!逃げるよ!」
「全然店に来ねぇからだろが!名前も連絡先も知らねぇし!お礼出来なかったじゃねぇか!!」
「あれ?名前言ってませんでした?注文したのに?」
「うっ……そ、その、その見た目で聞くの忘れたんだよ」
ぷぃっ
「店主あるまじき!」
「うるせぇ!ちゃんと取引出来たんだから良いじゃねぇか!」
「では、改めまして、シャルル・エイプリルです。どうぞよしなに。ではこれで……」
「逃がすか」
「ひぃ!大丈夫です!お礼の言葉は受け取りました!ありがとうございます!お気になさらず!」
だから解放してっ!!




