お披露目式。〜その10 街の様子〜
前回、街に出てから暫く。
クレープシュゼットとマフィンの登録とポーション納品の為商業ギルドに行くよ!
ヘルベスさん用の試食もマジックバッグに入れておいた。
また食いっぱぐれちゃうからね。
それと、クレープの巻き方を提案してみるつもり。
巾着型だと、片手では食べられないじゃない?
街で食べるなら片手がマストでしょ?
なので、普通の巻き巻きクレープも入れといた。
「おはようございます!ゴレ車推奨です!憲兵に連絡しておきます!」
おっとぉ……
前回、大丈夫ーって言っちゃって怒られたっけね!
「すまんな、ありがとう」
「いえ!お気をつけて行ってらっしゃいませ!」
「行ってきます!」
◇◇◇
えっ!?何これ!!
「うわ!どんな祭りより凄いな……」
店の軒先に、ベランダに、建物と建物の間に、街灯に……旗と花!!!
しかも旗のシルエットイラストが、どう見てもジークとわたし……。
「これ、いつ用意したんだろ……」
「つーか、俺らが当事者とか……」
「うわ!そうじゃん!」
「門兵がゴレ車推奨ってこれか!シャルル、ゴレ車出すから少し下がって」
という事で、ゴレ車で商業ギルドまで。
◇◇◇
ゴレ車を降りたら、
”あっ!英雄様ー!お披露目式おめでとうございまーす!”
”おめでとうございますー!”
にっこり笑って手を振ってみた。
”きゃぁぁぁ!”
おや、女子でもわたしの手振りでいいのか。
女子には睨まれるのがデフォだったから、ちょっと感動。
商業ギルドに入って、
「こんにちは。いらっしゃいませ」
ぎょ!?ヘルベスさんがお出迎え!?
「え、あの、どうされました?」
にっこり
「こちらでございます」
ジークとふたりで頭にハテナ?が飛ぶ。
執務室に入って、
「えーと、何かありました?」
「いや?気分?」
ドテッ
「気分て!」
はははっ
「たまにはいいだろ」
「いやぁ変に勘ぐるから止めてくださいよ」
「……んじゃここからいつも通りで。で、今日は?」
「ポーション納品と、レシピ、付随する型と、既存スィーツの新たな提案、です」
「ほぅ?」
「まずはポーションですね、ご存知の通りバタバタするので2回分置いていきます。レシピはこのバッグに入れてるのでサラナさんに、って、サラナさん来ませんね?お休みですか?」
「いや、ちょっと出てるだけだからそのう「ギルマスっ!!」ほら来た。ノック位しろ!」
「あっ!!すみませんっ!!ぬぉ!ジークフリード様、ご機嫌麗しゅう……」
ぶはっ!
「だからいいって」
「そうでした。シャルルちゃんが来ると聞いて、すっ飛んで帰って来ました!で!?」
「新しいレシピと既存の、何だっけ?」
「あ、はい!えっと、クレープの提供の仕方で、こういうのはどうかなと……」
マジックバッグから、くるくる巻いたクレープを出す。
「「ほほぅ」巻くのね?あら!持ちやすい!」
ぱくっ!
えっ!?
「ほえひたへやふい!ほいひい!!」
(それにたべやすい!おいしい!)
もぐもぐもぐ
「おまっ!!咄嗟に食いつくな!食いながら喋るな!」
一瞬の出来事だった。
あの食らいつきは凄い。
ジークもわたしもぽかーんだ。
「はい!採用!それで!?新しいレシピは!?」
「あ、あぁ、はい、クレープシュゼットとマフィンと言います。マフィンは型を使うので、型も持って来ました」
「「ほほぅ」」
しゅばっ!!
「あっ!ギルマス隠さないで!」
「目の前に置いてたらまた食うだろが!!」
「朝から何も食べてないんですぅ!!」
「あの、試食はこちらに……」
「ありがとう!!登録して来ます!!」
バンッ!バタバタバタバタ……
残るは一陣の風……
「あー、すまんな。街の様子見ただろ?出店も多くてな、サラナも食品部門で大忙しで……」
「なるほど。忙しい時にすみません」
「いや、気にするな。ジークもシャルルも当事者だから、これから忙しくなるだろうし、商業ギルドが忙しいのは街が潤う証拠だからな。ヒマになるよりいい事だ。それより、お披露目式の招待状届いたよ。ありがとう。必ず出席するな」
「「えっ!?」」
「えっ?なに?間違い?」
「いえ、招待はするつもりだったんですけど、まだ出してなかったんですよ。一体誰から……」
「えっ!?もう10日以上前に届いたぞ?ちょっと待ってな、確かここに……ほら!」
”お披露目式 招待状 この度、SSランク ジークフリード・エイプリル様、奥方 シャルル様のお披露目式にご招待させて頂きます。前日より、王城にてご宿泊して頂く事、御了承ください。云々…………”
「「ホントだ」差出人……「ホーエン・カルバン宰相!」」
えぇぇ!!!
「え、これ何かの罠?嘘の招待状?」
「あ、いえ本物です、ね。俺ら送るの聞いてなかったんす」
「は?そんな事あるの?」
「いやー……多分、身元確認とかして問題なかったから送ったんだと思うんですけど。うん、とりあえず本物ですんで、是非来て下さい」
にこっ
「あ、あぁ分かった。各方面のギルマスサブマスも届いてるみたいだから、違うんだったら大問題だったよなー。本物で良かった!」
マジかーーー!!
はっ!!
「と、とりあえず、新レシピの試食、ヘルベスさん用のはここに入れましたので、どうぞ!」
「おっ!いつも悪いなー。ありがとう」
「いえ、さっきのサラナさん見たら職員さん達も争奪戦してそうで……」
「分かる!?そうなんだよ!シャルルが来る日は、みんな目が血走って……」
ふるり
怖っ!
「次回から試食品、少し増やしますね……」
「いや、その、すまない……」
ほっぺをポリポリするヘルベスさん。
美味しく食べてくれるのは嬉しいけど、争奪戦現場は目撃したくないなーと思いましたとさ。




