お披露目式。〜その7 帰宅とマフィン型〜
とりあえず、お城での予行練習は終わった。
予行練習と言っても、タイムスケジュールとバルコニーまでの道順、前日の夜は、招待客の晩餐会と舞踏会。
この招待客には、各ギルドのギルマスサブマスやSランクの方々。
わたしのお願いで、ガルボデルタ兄弟と5人組。
アレクさんはSランクだから、呼ばれるし。
それと、貴族の選別は国にお任せした。
ジークとわたしが望むのは、選民意識が強すぎない貴族。
なんて言ったら、半数位排除されちゃうからね。
招待客は、全員前日から城に滞在する。
ガルボさんは元Sランカーでパーティーは出た事あるかもしれないが、デルタさんは大丈夫かな?
ジークに聞いたら、
「デルタさんも勲章授与されてるから大丈夫だろー」
「勲章!?凄いね!」
「ガラス屋やってるけど、芸術に秀でた人だからね。それでも芸術だけじゃなく実用品に力を入れてるんだ。実力に驕らずに居られるのは人柄もあるよな」
天狗にならずに居られるのは凄い。
天狗?ん?
「兄弟揃って凄い人達だね!」
はははっ
「そんな人達を呼ぶシャルルも凄いよ」
ちゅ
「本当に、たまたまなんだけどね。でも知り合えてラッキーだったな。ガラスの花開くクローシュとか素晴らしかったし!」
「あぁあれ貴族の中で話題みたいよ?」
何ですと!?
「あのクローシュはシャルル様が!?」
えっ!?
「違います違います!あれはデルタさんの作品です!」
「きっかけはシャルルだよね」
はははっ
「わたしはガラスのクローシュをお願いしただけだもん!花開くクローシュはデルタさんの発明!才能!」
「フランシア家でもガラスのクローシュに総取替したんですの!シャルル様が……」
「いやだから!わたしじゃなくて!」
ぬああああ!
あははははは!
「シャルルは凄いんだよ」
なでなで
「「「はい!!」」」
「ジーク!!」
もう!もう!もう!!
って!牛か!!って何度目!?
◇◇◇
そんなこんなで帰宅。
滞在日数4泊5日。
つ、疲れた……。
丈夫がとりえのこの身体でも疲れるとは、お城恐るべし。
ダンジョンの方が元気だったわ。
「やっぱり家が1番だなぁ……」
「ね、わたしもそれ思ってた」
くすくすっ
チリン
「ん?デンタツ、メッセージだ」
”ご注文の品が出来ました。ご都合の良い時にお立ち寄りください。ガルボ・ロッシュ”
「あ、頼んでた型が出来たんだって!急いでレシピ書かないと!」
”ありがとうございます!明日伺います。シャルル・エイプリル”
「お!また新メニュー?」
「これは香油のお礼にママにね。でもレシピ登録はするよ」
「うんうん、功績は残しておかないとね」
さて、レシピ!
と言ってもマフィンは簡単だ。
型を使ったレシピも付けてママにあげよう。
ミニキッシュに、イングリッシュマフィン。
あ、コーンミールってあったかな……探してみよう。
ジェノワーズでふわふわなミニケーキなんかもいいしね!
お茶会にもってこいの可愛いお菓子が作れるし、料理長さんに伝えておこう。
さささっと書いて、インベントリへ。
「ジーク、明日ガルボさんの所と市場に行くけど、ジークの予定は?」
「明日はないから付き合うよ。明後日はフランシアに行くだろ?」
「あ、式服だね!その時に渡せるなんて、タイミングバッチリ!」
◇◇◇
「こんにちは!あの……街に出るなら……警邏に連絡はされてますか?」
と、門兵さん。
「大丈夫」
にっこり
「はっ!お気をつけてお出掛け下さい!」
ビシっ!
街に行ったら、号外が出た後なので”おめでとうございます”の嵐だ。
流石に囲まれる事はなかったが、人だかりは凄かった。
警邏の人に、
「出るなら連絡して欲しいですぅ!」
と言われたが、ジークが、
「すまんすまん!」
はははっ
で、終わらせた。
門兵さん、怒られないかな……なんかすんません。
「こんにちはー!」
「らっしぇい!おぉシャルルとジーク!街に出て大丈夫だったか?持って行けば良かったかなーと思ってた所だったよ」
「ありがとうございます!大丈夫です!わぁ……型が増えましたね」
がはははははは!
「おうよ!売れて売れて嬉しい悲鳴だよ!」
「突然忙しくなったでしょ?気になってたんです」
「俺ゃーシャルルの型の発祥地だからな!近々ブランド化する予定なんだよ!いやぁシャルル様々だ!」
がはははははは!
おぉ商魂たくましい……。
「負担がないなら良かったです!」
「おう!で、今回のはこれな!全部で20枚。これはどう使うんだ?」
「これもお菓子の型ですね。フランシア家にお茶会用でレシピ持って行こうと思って」
「うぉ!お貴族様に使ってもらうのか……」
「え、今迄のもフランシアに持って行ってますよ?」
「マジか!!こりゃもっと気合い入れんとな!」
ふんす!
ふふっ
「また思いついたらお願いしますね!」
「おう!いつでもシャルルのは1番に作るからな!どんと持って来い!」
「順番でいいですからね!では、ありがとうございました!」
チャリ……
「ジーク急いで!!」
「えっ!?」
ジークを引っ張ってお店を出る。
「あっ!!シャルル?コラァァァァ!!」
お金は置き逃げだ!!!
スタコラサッサー!!!
◇◇◇
「毎回ああやってお金払うの?」
「受け取ってくれないからね!」
ご丁寧に、わたしからの送金は入らないようにされてた!
はははっ
「シャルルとガルボさんの攻防だな」
「今の所負け無し!」
置き逃げだからね!
「世話になってるし、受け取ればいいのになー」
「でしょ!?ジークからも言ってよ」
「次回な」
はははっ
そして市場へ!




