フェスタリオス2年目。〜その4 魔法花前2〜
「シャルル様、ホールでは扇をお持ちください。内緒話をするのに便利でございます」
「内緒話?」
「はい。ジークフリード様やキャロル様と。もちろんわたくし共にも」
ふぅん?
「分かりました」
使った事ないけど……。
口元で開いてコソコソ話す感じかな?
◇◇◇
ジークにエスコートされて向かうのは、お城の最上階。
ホールの外側には魔法花鑑賞用のバルコニーの小部屋がある。
フェスタリオスの時にしか使わないホールなんだって。
階段登ったりしないから、どれだけ高所なのか分からんが。
「シャルル様、わたくし共はブースにてお待ちしております」
あ、メイドさんは入れないのか。
「はい、また後でね」
「さぁ、シャルル、魑魅魍魎の部屋に入るよ。ま、全部喋るパピだから大丈夫」
ぶふっ!
「えぇ、わたくし、やれば出来る子!」
笑顔笑顔笑顔!そして女優!
はははっ!
「行くよ」
「ジークフリード・エイプリル様!シャルル・エイプリル様!ご入室されます!」
扉が開いて、まず目に入ったのは煌びやかな人達の挨拶。
ひぇ!!
とんとん、と、わたしの腕をあやすジーク。
うん、大丈夫。を込めて笑う。
中に入ると、通り過ぎた後ろの人から頭を上げていく。
なるほど、何がなんでも1番奥まで進まないとダメなのね。
そして歓談が続く。
うーん、視線がすごぉい!
キョロキョロしないように気をつけていても、見られてるのは感じる。
居心地悪いわー。たははー
「シャルル、何か飲む?」
「そうね」
「ピルリアの果汁と白ワインを」
「畏まりました」
「流石ジーク」
「当然だろ?」
くすくすっ
”ジュース?お酒は嗜まれないのかしら”
”まだプレ成人だって噂よ”
”まぁ!”
あー、はい。聞こえて来ますね、コソコソ話。
ジークがちょっと心配そうに見る。
ふふっ!大丈夫よ?
耳元で、
「ヤバい。今すぐキスしたい」
なっ!?ちょっ!!はっ!扇!
ばっ!と開いて、
「何言ってんの!」
コソコソヒソヒソ
なるほど!顔も隠せるし、声も通りにくくなるね!
はははっ!
「その調子!」
「国王陛下!王妃殿下!ご入室されます!」
あ!?どうするんだっけ!?いつカーテシー!?
ジーク、あれ?まだ?王様が近づいて来てから胸に手を当てる。
わたしもカーテシー。
「ジークフリード、シャルル、息災か」
「お久しぶりでございます。はい、日々恙無く。王妃殿下も、お久しぶりでございます」
「ジークフリード様、随分とご成長なされましたね。見違えました」
この方が王妃殿下。
うむ、美しいですなー。
「こちら、我が妻のシャルルです」
「陛下、お久しぶりでございます。王妃殿下、初めてお目に掛かります。シャルル・エイプリルでございます」
「……噂に違わず、お美しい」
「とんでもない事でございます」
合ってる!?これで合ってる!?
「では魔法花を楽しむが良い。今年は特別企画と聞いておるぞ」
「ありがたきお言葉」
と、王妃を伴ってブースに行った。
ぬぁぁ!ほっとしたー!
何も言われなかった!良かったぁぁ!
「シャルル、完璧!」
「緊張して吐くかと思った」
ぶはっ!
「大丈夫だよ。あ、ほら見てご覧」
ん?あっ!
「キャロル、息災か」
ママぁぁぁぁ!!
「はい。ジークフリード様、シャルル様、ご挨拶申し上げます」
「マ、キャロル、会えて嬉しいわ!」
ふふっ
「わたくしも、会えた事嬉しく思います」
パッ!と扇を開いてママが話し掛けて来る。
わたしも扇を開いて話す。
「王妃殿下に何か言われなかった?」
「大丈夫でした!でも緊張しました。ちょっとアレコレ聞いたもので……」
「シャルルはジークと居るから大丈夫とは思うけど、ジークと離れる時は、必ずうちのメイドを付けるのよ。いいわね?」
「はい。リリアとカレラがブースで待機してくれてるので大丈夫!」
「あぁ、リリアとカレラなら安心ね。万が一理不尽な事を言われるようなら、無視でいいのよ?」
「分かりました!無視します!」
ご免状あるもんね!
コソコソ話を終えた時、
「それにしても、今日もお美しいですわ!ジークフリード様とおふたりで並んでいると、天に輝く二つ星のよう」
ぎょっ!?
チラチラと盗み見してた人達が一斉に振り向く。
はははっ
「母上、シャルルが美しいから私もそのお裾分けを頂いているのだよ」
「まぁ、ジークフリード様、ご謙遜ですわよ」
おほほ!あはは!
え、何これ!
「シャルル、お母様と呼んでやって」
コソコソ
がってんだ!
「お母様こそ、今日もお美しいですわ!わたくしのお手本ですもの」
「まぁ!本当に愛らしい子ね」
うふふ!おほほ!
……えーっと、形式上の挨拶を終えた所で、仲良し家族アピールかな?
心做しか見てる人の目も、微笑ましげになった気がする。
「では、我々も行こうか」
「はい。では、お母様ごきげんよう」
「はい。御前失礼致します」
他の話し掛けたそうな貴族はスルーしてブースに向かう。
チラッと振り返ると、ママは囲まれてた。
にこやかなので想定内なんだろう。
それにしても、貴族めんどくせぇ!!
平民バンザイ!!
◇◇◇
ブースに入ると、リリアとカレラが軽食の準備をしてくれていた。
「お疲れ様でございます。お飲み物や軽食を取り揃えておりますので、お申し付け下さいませ」
防音結界をジークが張って、
「いやホント疲れた。久しぶりのこの雰囲気は性に合わないよ」
「ハンター長いしねー」
くすくすっ
「魔法花始まるまで景色でも眺めるか」
と、バルコニーの方へ行くと、空も地上も満天の星!
空と大地が溶け合って、境目が滲む。
さぁ、魔法花まであと少し。
この後19:00より閑話が入ります。
読まなくても本編に影響ありません。




