目覚めたメイド。
城内では、まだ魔術師団で事件があった事は広まっていない。
そりゃ当然か。
全て、執務室での出来事だったし。
フェスタリオス目前で、みんな浮かれている。
あー、城下で過ごしたかったわー。
が、本音。
でもまだやる事がある。
宝珠の間に戻って、
「リリア、お疲れ様。まだこれからやる事があるけど、お願いね。カレラ、リリアに協力してね」
「「畏まりました」」
「わたくしは早速動きます」
と、カレラが部屋から出て行った。
迅速だな!
さっきから、リリアの顔が暗いぞ?
「シャルル様、お召し換え致しましょう」
「あ、はい。……ねぇリリア?何かあった?」
着替えをしてる最中に聞いてみた。
が、悲しそうに、ふるふると首を振るだけ。
むーーーん……。
着替えて、茶話室に行くと、既にジークが座っていた。
……こちらも浮かない顔。
えーとー……?わたし、何かしたかな?
「シャルル、お疲れ。おいで」
「ジークもお疲れ様。……何かあった?」
「シャルル、ああいうのは勘弁して欲しい」
ん?首を傾げる。こてん
「自分の手を、切っただろ?」
あ!忘れてた。
あ!リリアが!
しくしくしく……
「わたくしは後悔しました……何故短剣を渡してしまったのか、と!!」
しくしくしく……
「ごめんなさい!!頭に血が上ってて、それで……もうしません。ごめんなさい」
しょんもり
「シャルルは怒らせたらダメだって思ったよ」
ふぅ……
いやぁ、あれは、ねぇ?
実際、血が青かったらマーマンだよね!
「シャルル、反省してる?」
「はい!勿論です!二度とやりません!」
「俺がヤツを半ご、尋問しようと思ってたけど、シャルルに気圧されたよ」
はんご?はんご。
「半殺し!?」
「いやいや!尋問!尋問だってば!」
「リリアも、本当にごめんなさい。自分の短剣にしたらよかったのに、持ってなくて……」
「「はぁ!?」」
「そーゆー問題じゃありません!!」
「違うだろ!?」
あれ?
その後、ふたりから怒涛の如く責められ、間違いを正され、反省してないだろ!とまで言われ、してる!なんて反論しようもんなら、ステレオで責められ、まったくもって、しょぼんぬさんの出来上がりでございました。
言葉がおかしい?
大目に見てよ。
反省してるからさ。ぷしゅぅ。
◇◇◇
「シャルル様、メイドが起きました。しかし、混乱しているようで……」
「行くね」
ドアに近づくと、泣き声が聞こえる。
コンコンコン
「シャルル・エイプリルです。入りますね」
「いや!!入らないで!!すみません!ごめんなさい!」
うわあああああああああん!!
問答無用で入ると、ベッドに蹲り、泣き叫ぶメイドさん。
こりゃ困った。
コソコソ
「精神安定の香とかないの?」
「聞いた事がありません」
マジか。
ジャスミンとか白檀とか、バラでもいいか。
「ジャスミンって知ってる?」
「はい」
お!
「なら、ジャスミンとバラ、用意して」
「畏まりました」
しくしくと泣いてるメイドさんの傍に腰掛ける。
話しかけずに、静かに。
「……も、申し訳……っふ……」
「謝る必要はないのよ?あなたが生きてて良かった」
「捨ておいて、下されば……っ!ど、どうせ!殺されっ!!」
わあああああん!
「陣は消したわ。もう自由なのよ?辛かったわね」
「え……うそ……」ひっく
「本当よ。答えるのも辛いと思うけど、陣を刻んだのは、魔術師団の副師団長?」
びくっ!
「うん、分かった。ヤツも捕まえたから、安心なさい」
がばっ!
「ほ、ほんとに?」
「えぇ、その場にわたくしも居たもの。本当よ」
「あ……ありがとう!ありがとうございます!」
うぅっ……く……
「話してくれてありがとう。少し休みなさい。後で暖かいお茶を持って来るわね」
「ありがとう……ありがとう……ございまっ」
◇◇◇
「シャルル様、ジャスミンて、これですよね?」
「あぁそうそう!」
「これをどうするんですか?」
「お茶にするの」
「は?これを?お茶に?」
ふふふっ!
「味見させてあげるから!」
あ、紅茶しかないや。
まぁいいか。
ジャスミンの花だけを摘み取り、苞の部分はぽいっと。
真っ白で綺麗ねぇ。
”ドライ”で、瞬間的に乾かして、茶葉と合わせてふりふり。
はて?紅茶と同じように沸かしたての高温でいいのかなぁ?
まぁいいか!
3分蒸らして、さてどうだ?
「あ、美味しい。リリアもどうぞ」
「!!! これは素晴らしい香り!美味しいです!」
「リラックス効果があるの。あの子に飲ませてあげよう」
「わたくしが行きます」
「少し話してくれたから、ちょっとは落ち着いていると思うけど」
「はい。同じメイドですから、大丈夫です」
「うん。じゃあお願いね」
「はい。お任せ下さい」
◇◇◇
「どうだった?」
「混乱してたけど、少し話せたの。やっぱりライランズだよ」
「奴はもう極刑免れないな。人をテイム調教するなんて……」
「あの子の苦痛を10倍で返したいよ……」
「そうだよな……」
コンコンコン
「失礼致します。ジークフリード様、シャルル様、大変申し訳ない事でございますが、少しお力をお貸し頂けないでしょうか……」
「なんだ?」
「実は、テイム調教された者を見つけました。3名」
えっ!?3人も!?
「その内、ひとりは男性でございます」
ぎょ!?力技で勝ったの!?あのヒョロリーナが!?
「分かった。何処にいる?」
「ありがとうございます。今は監視を付けて寮の一室に匿ってる状態ではありますが、いつまでもそこに入れておく訳にはいかず……ここに連れて来る許可を頂きたく」
「どうやって連れて来る?」
「メイド専用通路を使います」
「分かった、いいよ。メイドの部屋は余ってるし。フランシアから少し応援呼ぼうか」
「ありがとうございます!お願い致します」
メイド専用通路!へぇー!




