餌巻き作戦。〜その12 何でそうなった!?〜
「ジーク、手合わせして行くかい?」
「うーん……いや、止めておこう。まだ午前中に魔術研究所も行きたいんだ」
「そっかー、残念だ。手合わせしたいヤツがソワソワしてたんだがな」
はははっ
「また時間見つけて来るよ。その時はシャルルもやりたいよな?」
「「えっ!?」わたしも?」
「近衛兵をぶちのめしてやれば、鍛錬にも身が入るだろ?」
「え、待って待って!?シャルルって……」
「俺と同等位には強いよー?魔法アリなら俺が負ける」
「マジかよ!!え!?」
「いやいや!そんな事ないって!」
ジークったら!!……でもちみーっと興味ある。
「見たい!!見たい見たい!!シャルルが戦ってる所!」
「えぇぇぇぇ!?いや!普通の剣は使った事ないし!」
ピンク髪さんとのバトル以外では!
「ん?ハンターの時は?どんな剣?」
「レイピアです、細身の」
あ、レイピアも両刃と言えば両刃か。
「うっわぁ……イメージぴったりだ。よし、刃を潰したレイピア用意しとく」
「服もないですし!」
インベントリには狩り服あるけどね!
「女性の近衛兵も居るから、騎士服女性用あるよ!」
『んもう!ジーク助けて!』
『いやぁ、さっき興味ありそうな顔してたからなーと思って静観してた!やる?兄さん引き下がらないよ?目立つには打って付け!』
えぇぇぇぇ!…………はぁぁぁ……
「分かりました」
「いやったあああああああ!!!いつ!?いつにする!?」
「特に予定組んで動いてる訳じゃないから、今日の午後か明日の午後だな」
「明日!明日にしよう!近衛兵に周知出来るし!」
ひゃっほーーーう!!
うへぇ……。何でこうなった!!もう!
最近動いてないからなぁ……午後、ちょっと動いとこ。
『……ジーク、午後は運動しないと明日動けないよ』
『了解。1回聖域行く?聖域なら走り回るのも出来るよね?』
『鐘ひとつ分位走り込みするー』
「んじゃそう言う訳で、魔術研究所行ってくるわ。父さんが毎日顔出せって言ってたからなー」
「おう!了解!護衛付ける?」
はははっ
「いらないよ、じゃー明日ね」
「団長、また明日」
「うん!楽しみにしてるな!んんっ!んっ! ジークフリード様、シャルル様、ご退出!」
「ではな」
「ごきげんよう」
にっこり
変わり身の速さよ!わたしは女優!
◇◇◇
お城の中を、しゃなりしゃなりと歩いていると、話し掛けたそうな人もチラホラ。
公示出ちゃったからね、宰相さん、ホントいい仕事するわ。
気配探知に反応はない。
昨日の今日だし、わたしが城に居る事を知らない可能性もある。
うん、確かに、手合わせは打って付け……だけど、本当は目立つの嫌なんだけどなああああ!!
……諦めるか。
とほほ。
魔術研究所は、近衛兵詰所の反対側にある。
通常は反対側までなんて用事がないし、用事があったら、ゴレ車で行くんだって。
歩いてもそんなに時間掛からないよ?
ゆっくり歩いて、ほんの30分位かなー。
貴族も動かないと鈍るのにね?
「見えてきた、あれが魔術研究所だよ」
「随分と頑丈そうね……」
「滅多にないけど、魔法を暴発させるヤツが居るみたいよ?」
まるで要塞だよ、これ。
「魔法剣士もこっちで鍛錬するからね」
「ジークタイプ?」
「うん。どっちも使う兵だね。所属としては、魔術師団になるみたい」
ほぇー。
5人組なら、エアハルトさんは魔法も使うから魔術師団、ギュンターさんとファビアンさんは生粋の近衛兵って感じか。
こちらの魔術士さん達は、わたし達を見かけると右手を胸にして会釈。
流石に敬礼じゃないわね。
「君、フランシア師団長の所に案内してくれるかい?」
「は、はい!こちらでございます!」
うむ、ヒョロリーナ。流石研究者。
いくつかの扉で名前を叫ばれ、いい加減びっくりだ。
防犯だから仕方ないんだって。
「ただいまお呼びしますので、中でお待ち下さい」
ここでも応接室に案内されて、お茶が出た。
お茶ばかり飲めないっての!
って、ここでもドアは開けっ放し。
何でだろ?
『ジーク、何でドアが開けっ放しなの?』
『ん?あぁ、詰所や研究所は、お客だけにする事はないんだ。国の守りの要だから悪さ防止だね。かと言って、見張りを置くのもあからさまだろ?』
『へー!王様が来ても同じなの?』
『うん。まぁ来る事はそうそう無いけどね』
なるほどー。
コンコンコン
「ジークフリード様、シャルル様、ユージーン・フランシア入ります!ようこそいらっしゃいました!歓迎致します!」
ドアがぱたり。
「シャルルー!いつも可愛いのに今日はキレイだ!」
ふふふっ
「お兄様、お疲れ様!ありがとうございます」
「入って開口一番がそれ!?」
「女性を褒めるのは最優先だろ?」
「まぁいいけどさ。父さんは?」
「もう来るよ」
「ユージーンお兄様、帰れない程忙しいみたいで。体調は大丈夫?」
「あぁっ!シャルルが心配してくれる!お兄様嬉しい!疲れすぎてテンションがヤバい事になる位には大丈夫だよ!」
ひぇ!!
「それ大丈夫じゃないですから!」
「それも後ちょっとだからね!今年は特別なんだ、だから頑張るよぉぉぉん!!」
「うわ、ホントにヤバそう」
コンコンコン
「エルバート・フランシア、入ります」
「パパ!お疲れ様!」
「やぁ、シャルル!美しいな、とても良く似合ってる。ジークもよく来た」
ふふふっ
「ありがとうございます」
「先に詰所に行ったら、明日手合わせする事になっちゃったんだよな。シャルルも」
「「えっ!?」明日のいつ!?」
「午後です」
「あー、ユージーンは抜けられないなぁ。ユージーンはな」
「え……まさか父さん行くつもり!?ズルいよ!」
「私は補佐だし」
ふふーん
「えぇぇぇぇ!ズルいズルい!……作りかけの魔道具完成させてやる!!」
ん?魔道具?




