餌巻き作戦。〜その10 宰相3〜
お風呂からあがったら、ごはんが用意されていた。
「あれ?」
「シャルル様、本日は城の料理長から、是非にと晩餐を用意されました」
「わぁ!豪華ね!リリアお使いありがとう」
「いいえ、食材もご用意出来ましたので、食材庫に保管してございます」
「じゃあ、朝ごはんは作るね!」
「まぁ!ありがとうございます。しかし、ごゆっくりお休みをお願いしたいので、昼餐からでは如何ですか?」
「メイドは朝の仕事もあるから、朝メシは任せたら?」
「そうなの?うん、それじゃお願いしますね」
「はい!お任せ下さいませ」
にこっ
折角の晩餐なので、お城滞在初日は給仕を任せての食事になった。
まぁまだ一緒にごはんを食べるチャンスはあるもんね!
食事が終わり、茶話室でお茶を飲んでいた時に、ふとジークが天井に向かって、ピュィ!っと指笛を吹いた。
”コンコン”
おや?
「あぁ、やっぱり居るんだな。そのまま継続しろ」
”コンコン”
「ん?影さん?」
ははっ
「そう。フランシアの影は優秀でね、俺の気配探知でも、もしかして居る?って位しか反応が出ないんだ。だから確認してみた」
ほぇー……。
そう言われたら気配探知やってみたくなるじゃない?
”気配探知”
あ、うん、わたしには分かっちゃうな、これ。
3人居るわ。
あははははは!
「シャルルがやったら全部丸見えだよ」
バレた!
「因みに何人だった?」
「……言っていいの?」
「うん」
「3人」
ガタッ!
ぶははははははは!
「焦ってる焦ってる!!」
「そんなイジワルしなくても!」
「違うよ?今のままで安心するなって注意喚起だよ」
くすくすっ
むーーん……。
「シャルルは特別だからね」
なでなで
はっ!待って!影さん居るなら見られてるって事じゃん!
「あぁ、寝室や着替えとかは見ないよ?結界も張るし」
にっこり
いやそれでも!居るの分かったら落ち着かない!
言えないけど!何か悪いし!
「おいで」
「えっ!?いや、無理無理無理!」
「ふぅん?」
にやり
あ、何か悪い顔。
しゅたっ!
「ひょぇ!」
いきなり抱っこかい!!
「さぁお姫様、寝室行くよー」
「「おやすみなさいませ」」
「おおおおやすみぃぃ!」
◇◇◇
【影・念話モード】
『ちょ!!マジか!!丸見えってホントなの!?』
『いやいやいやいや……俺ら、かなり洗練された隠遁使ってる筈だぞ!?流石に当てずっぽうじゃねぇの!?』
『でも、ジークフリード様がシャルル様は特別って……』
『そのジークフリード様もいい加減オカシイからな、通常居る事すら分からんはずなのに……』
『そのジークフリード様よりもレベルが高いって事か?』
『『『シャルル様って何者なんだ?』』』
◇◇◇
【宰相】
今夜のうちに随所に張り紙はしたし、王に面会依頼も出したし、よし、今夜は寝るぞ!
いつもより随分早いけど、仕事なんてしてられっか!
明日からはきっと、怒涛のように忙しくなるに違いないからな!
ナイトキャップもキッチリと被ったし、よーしよーし……。
明日、医療班に育毛剤ないか聞きに行こう。
こっそりと……。
コンコン
む。
コンコン
「何用か」
「ホーエン様、王の使いが参りました。参じよとの事です」
っかーーー!!今から!?寝支度も済んだのに!?
あぁぁぁぁぁもぉぉぉぉぉぉ!!
「分かった。少し待て」
毟りとったナイトキャップに髪が!!!
はぁ……仕方ない、着替えるか……くすん。
◇◇◇
【王&宰相】
「おお、夜分に呼び出してすまないな」
「いえ、お呼びにより罷りこしました」
「堅苦しくならんでいいぞ、既に仕事は終わっておろう?早急の面会依頼があったので、早い方がいいと思ってなー」
「……では、早速。ジークフリード様ご夫妻が城に滞在している事はご承知と思いますが、その理由が判明致しました。ただ、ジークフリード様より口外法度を命じられました」
「ふむ?して、その理由とは?」
「はい、ジークフリード様の挙式での襲撃犯が城に居る、と」
ぴくっ
「何?」
「俄には信じられず、理由をお尋ねした所、シャルル様が先日のSランク授賞式で殺気を浴びられたと。お式での狙いもシャルル様と聞き及んでおります。尚且つ、メイドの不審死、これに関してもテイム調教され監視させていたので、捕まる前に殺したのではないかと」
「テイム調教だと?相手はメイド、人だぞ!?」
「はい。犯人の残虐性が浮き彫りに……」
「その犯人が城に居る?何と言う冗談だ!今まで不審者の報告はなかっただろう」
「はい。シャルル様だけに強い殺意を持っているようで」
「何故シャルルなんだ?シャルルが何かしたのか?」
「分かりません」
「ではジークは、その犯人を特定する為に城に?」
「はい。あわよくば捕縛すると」
「……ジークに会う」
「なりません。シャルル様と共にいる為に危険が及ぶ可能性がある間は、王に近づかせてはならないとジークフリード様からの命でございます」
「……これが城下なら忍んで行ったのに、城内だと目が多すぎる!」
「お忍びなんて止めてくださいよ!?これ以上の心配は掛けないで下さい!それでなくても、あ」
「ん?それでなくても?」
「いえ、なんでもありません」
「ふぅん?まぁいい。それじゃあジークが動きやすいように取り計らってやってくれ」
「御意」
「んじゃ寝るわー」
「はい、お休みなさいませ。御前失礼致します」




