Sランク試験講師。
フルーレフェスも終わり、穏やかな日常が戻ってきた。
ジークは午前中ハンターギルドに顔を出し、Sランク試験の講師のような事をやっている。
その間わたしは作り置きを作ったり、花の月から若葉の月に変わったので、裁縫室の生地が夏仕様になったから夏の服を作ったり、とにかく思いつく何かを色々と作りまくった。
西のガラディアに行く計画も忘れてはいない。
春のうちに行こうと思ったけど、ジークのSランク試験講師が入っちゃったし、ガラディアも海の街だから、夏もいいね!って事になったからね。
今頃ジークは先生頑張ってるんだろうなぁ。
先生かぁ、疲れるよねぇ……。
覗いてみたいけど邪魔したら悪いから、大人しくしてますよ。はい。
そうだ!ジークが帰ったら、すぐお昼ごはんが出来るように準備しよう!
場所はー……
◇◇◇
「ジーク先生よぉ、この場合「やり直し」」
「へっ?」
「言い方!マナー研修も兼ねてると言っただろう?」
「あぁっ!くそっ!そうだった!……ジーク先生、この場合の薬草は毒消し草でよろしいですか?」
「うむ。と言うか、まだそこなのか!?試験は半月後だぞ!?」
「薬草学が苦手なんです!どれもこれもみんな草じゃねぇか!……あぁもうダメだ……」
「さては、低ランクの時、真面目に薬草採取しなかったな?自業自得だぞ」
「やぶ蛇ぃぃ!」
これでよくAランクになれたなぁ……。
今年は俺がSランクを抜けたので、試験を受けられる範囲が少し広がっている。
Sランクふたりでは心許ないからなんだけど、それにしてもこれでは……。
「ま、来年もある。……と思う」
ギルドに勉強しに来る奴は、本気で受かりたいと思ってる、はずなんだけど、圧倒的に追いついていない。
ギリギリになって、ヤバい!、と思った奴しか来ない。
講師を受けたのはいいけど、これじゃーなー。
……受からなくて逆恨みとか勘弁な。
Sランクになれば依頼料も上がるし、生活も楽にはなる。
しかし、国のアチコチに行かなければならないし、面倒くさい依頼でもSランク指定だと断れない。
結構大変なんだよ?分かってる?
まぁ、ちゃんとそれを分かった上での受験なんだろうが、狭き門なのですよ。
「まぁ、薬草学と魔獣特性は詰め込みでも何とかなるかも知れんが、マナーは日々気をつけないと身につかないぞ」
「分かりました。ありがとうございました!」
よし、これで終わり!
後は報告して帰るだけ〜!
シャルル待っててね!すぐ帰るからね!
コンコンコン
「ジークです」
「入れ、あ、どうぞ」
ぶはっ!
「今まで通り”入れ”でいいすよ」
「いや、そうは言ってもなぁ」
「流石に公式の場ではメンツもあるのでアレですけど、普段は気にしなくていいですって。ムズムズするし」
はははっ
「なら、遠慮なく。講師ありがとうなー。今になって慌ててる奴が多くて辟易してたんだよ。なんで枠なんか増やしたかなぁもう」
「Sランクがふたりじゃ心許なかったんでしょうけど、ちょっと……程度が低すぎますね。今日の講義は薬草学だったけど、毒消し草からですよ?何でアレでAランクなんすか」
「まぁ試験の雰囲気だけでも味わわせておけば、次回に繋がるからって事なんだと。これでSランクを目指して勤勉になってくれりゃーいいんだけどなー」
「あと2人はSランクが欲しいんでしたっけ?」
「ジークが受かってから、後が続かなくて負担が多かったろ?一応各領地に1人は欲しいと思ってるんだが、試験突破する奴が居ねぇからな。講師なんて初めての試みだが、受けるヤツがアレじゃ期待は出来ねぇな」
「とは言え、俺も居るし何とかなるんじゃないすか?」
「え?ジークには依頼を頼むなってお達し来てたぞ」
「は?何で?」
「最下層攻略でSSランクの仕事は完了してるから、後はジークの好きなようにさせてやれって。え?何も聞いてない?」
「初耳っすねー。あぁだから調査も討伐も依頼がなかったのか。なるほど納得」
「突っ込んだ話になるけど、国から給金貰ってるよな?」
「多分」
「え!?多分て!確認してねぇの!?」
「そんな事言われたのは覚えてるけど、まだ口座確認はしてないんすよね。一応、王に準ずる給金がなんたらかんたらって言ってましたけど」
「呑気なもんだなぁ。まぁ何だ、暫くのんびりでも良いんじゃねぇか?」
「新婚ですしね!って事で報告終わり!一応口座確認して帰りますよ」
「おぉ、お疲れさん!またシャルルちゃん連れて遊びに来いよ」
「ここ仕事場っすよね?」
「気にすんな!」
あはははははは!
◇◇◇
「シャルルーただいまー!あれ?シャルルー?」
キッチンにも居ない。おや?メモ?
”聖域のお家に来てね”?何だろ?
扉から聖域に行って
「シャルルー?ただいまー」
「ジーク、おかえりなさーーい!バルコニーだよー!」
トントンと階段を上がり、バルコニーへ行くと
「うわ!凄いね!」
「お疲れ様!簡易ピクニックにしたの!」
「あぁここは景色がいいなぁ。風も涼やかだ」
眼下に王都、背後に世界樹。
聖域だからなのか、空気も新鮮な気がする。
「先生って気疲れするでしょ?ちょっとでも気晴らしになればいいなーと思って」
「ありがとう!気遣い嬉しいよ。おいで」
ふふっ
「ジークの好きな物を揃えたお昼ごはんだよー」
「うちの奥さん最高!俺しゃーわせ!」
ちゅう!
あははははは!




